前回は、月間致知6月号の、井村屋グループ会長CEO中島伸子氏への特集取材記事「希望は失望に終わらず 人生のハンドルを握り扉を開けられるのは自分だけ」をテーマにしました。壮絶な体験という苦難を糧に変えていくことについて考えました。
個人的に印象に残った部分から、その他にも2点考えてみたいと思います。
・方針や目標の実現には、それを可能にするための十分な仕組み・取り組み必要である
同記事から一部抜粋してみます。
同社のHPを見てみると、以下の「ミッション」「ビジョン」「パッション」が掲げられています。さらには、「期待する人財像」や「10(Ten)action」も含まれた「クレド」も掲げられています。
朝礼で理念やクレドを読み上げるという仕組みはあっても、お題目のように読み上げるだけではあまり効果がありません。同記事のように、朝礼に参加する各人が自分の頭で理念やクレドと照らし合わせて考え、発表するなどの取り組みがあって、初めて生きた仕組みになると言えます。
同記事からは、理念やクレドが飾り物ではなく、社員一人ひとりに浸透し各人のものとして日々の実務に活かされるようになるための、仕組みと取り組みが充実していることがうかがえます。
同社では、女性管理職比率の目標達成(もちろんこれだけが目的ではないわけですが)を目指して人事制度のルールを変える、全メンバーの保有資格をあぶりだして技能を可視化しさらに磨きをかけるようにする、風土づくりのためのルールを作って力を入れて運用する、などが見受けられます。
女性管理職比率の目標を掲げている企業も時々見かけますが、掲げているだけでは施策として不十分です。同社の例のように、実際にそれを実現させることにつながる仕組みと取り組みが伴ってこそ施策と言えます。
それにしても、900人で2,500種類の資格があるということは、2500÷900=2.78となります。同じ資格を複数人が持っているということもあるはずですので、1人当たり平均で4つや5つといった数、あるいはそれ以上の資格を持っているのだろうと想像します。学習する文化がなしには実現できない状態だと思います。
メンター制度、研修制度、資格取得支援制度といった仕組みだけでも不十分。そうした仕組みなしにみんなで学んでいくという声かけや行動といった取り組みだけでも、十分な推進力を発揮するには不足感あり。仕組みと取り組みが同時に充実することで、学習する文化は実現できるのだと考えます。
ところで、普段の仕事の中で企業関係者から時々、「組織全体で学ぶという文化を高めていきたい。いろいろな方法があると思うが、何が一番重要と考えるか?」という質問を受けることがあります。その際には、「最も重要なポイントは、職位の高い人が率先して学んでいることではないか」と答えています。
「学ぼう」と言っている経営陣や上位管理職者が勉強していなければ、メンバーにとってはまったく説得力がありません。職位の高い人ほど多くの時間を勉強に投入しているという取り組みは、学習する文化づくりにおいて欠かせないと思います。
続きは、また次回取り上げてみます。
<まとめ>
目的に適った「仕組み」と「取り組み」の双方を充実させる。