日経平均株価 過去最高値更新を考える(2)
前回は、終値で39,098円となった日経平均株価の過去最高値をテーマにしました。バブル当時よりも実態を反映した数値になっているのではないか、バブル当時とは違って今後の急激な値崩れは想定しにくいのではないか、という2点について考えました。
3つ目は、大企業を中心に、コスト削減などの合理化もさることながら、付加価値を拡大するためのさらなる投資で社会に貢献するべきではないか、ということです。
2月22日の日経新聞の記事「ホンダが5%満額回答 早期妥結、賃上げに弾み 春季労使交渉 実質賃金プラスへ中小への波及必要」を取り上げてみます。(一部抜粋)
上記にある「組合員300人未満では賃上げ率3.23%」というのは、連合の調査で集計対象になる企業においてのはずです。中小零細企業では、その対象にはなっていない企業も多数あるはずですので、全国の中小零細企業の賃上げ率はもっと低いことが想定されます。そのことも含め、物価変動の影響を上回る賃上げを実現するには、昨年まで取り組まれてきた賃上げを一層底上げしていくことが求められます。
大企業が賃上げの継続的な実現を目指して、利益をねん出するためのコスト削減に走ると、下請けになっている取引先は賃上げの余力が細っていきます。全企業数の99%、全従業員数の約7割を占めると言われる中小企業による賃上げ、それを通じた消費の循環は、まわりまわって大企業の景気・業績にも波及していきます。
バブル崩壊後の長い経済低迷の一因がここにもあったはずだという観点に立ち、コスト削減もさることながら新たな付加価値の創出による売上拡大のほうが、業績好調の大企業を中心とする企業に求められる方向性ではないかと考えます。
日本の労働生産性が低いという話を時々聞きますが、今に始まったことではないようです。日本生産性本部のデータによると、G7の就業者1人当たりの労働生産性で、日本は2022年にOECD加盟国中31位だそうです。ただ、バブル経済崩壊前の90年でも13位でした。
つまりは、現実離れした物価や株価で表面的な生産性がかさ上げされていたであろう環境下で、世界第2位の経済大国と言われたバブル期であっても、1人当たりの労働生産性はG7他国より既に見劣りしていたということです。
当時は製造業を中心に、米国が産業・企業活動のモデルとして存在していました。日本企業の多くが、当時の米国のビジネスモデルに乗っかり、より良いものをより安く作る活動で成果を上げる図式が通用した、と振り返ることもできます。
1人当たり労働生産性は、生産によって生み出された付加価値を、労働者数と労働時間数の掛け合わせで割ることになります。当時は「24時間戦えますか?」も流行語となっていました。「残業代のほうが本給より多い。だから、自ら望んで来る日も来る日も残業して稼いだ」と当時を振り返っているシニア層の方もいます。
これらを重ね合わせると、「既に存在するモデルに競争で勝つための明確化された戦術に対して、サービス残業を含め時間を無限投入して頑張っていた」と言うことができるかもしれません。バブル期の人材のほうが今の人材より優秀だった、などというような種類の問題ではないように思います。
そうした、目指すべきモデルのような所与の戦術や時間の無限投入への許容が、今では存在しないのは明らかです。この観点からも、その企業ならではの強みを活かした付加価値拡大につながる投資・事業活動で、生産性の高い状態を目指していくことが求められるのだろうと考えます。
もちろん、コスト削減などの合理化も大切です。企業の置かれた環境下によっては、至上命題となることもあります。そのうえで、一定の安定した業績が見込める企業においては、合理化よりも新たな付加価値創出のための投資に注力するほうがより重要、ということが言えるのではないでしょうか。
<まとめ>
さらなる賃上げ実現のためには、付加価値拡大・生産性向上につながる投資活動が大切。
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