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日経平均株価 過去最高値更新を考える

22日、日経平均株価が終値で39,098円となり、1989年末の38,915円を超えました。当日及び翌23日の経済関連のニュースは、この話題で持ち切りとなりました。

バブル経済期につけた38,915円は、市場の心理的な天井のようにもなり、二度と越えられない壁などとも言われました。私も学生時代にこの数値を聞いて以来、ずっと日経平均株価の低空飛行を見てきましたので、過去最高値更新は感慨深いものがあります。

しかしながら、当時と比べると「高揚感がない」「実感がない」などとも言われています。確かに、ディスコのお立ち台で踊り出す感じではありませんし、深夜のタクシーが個人客で行列をつくる感じでもありません。

識者の見解も、「経済の実力を反映していない」「このまま4万円越えに向かう」「新NISAはまだ早い」など様々です。果たして、この流れは続いていくのでしょうか。正解はだれにも分かりませんし、このテーマに対して様々な切り口があると思いますが、ここでは3つ考えてみたいと思います。

ひとつは、バブル当時に比べて、はるかに実態を反映した数値になっているのではないか、ということです。

1月16日の投稿では、PBR(=株価純資産倍率)の観点から、史上最高値の更新はリアリティがあるということを取り上げました。

企業活動を行う以上、PBRは最低でも1倍以上となることが基本で、他国ではPBR1倍以上が一般的な状態です。PBR1倍=株価を帳簿上の価値に戻すだけで日経平均は3万6154円と試算できる状態(1月16日当時)だったことからも、PBRが5倍以上もあった89年バブル期のような過熱感はない水準だという観点からでした。

当日の日経平均株価の終値が35,619円でしたが、わずか1か月ちょっとで3,000円以上も上昇し、実現したことになります。

バブル当時は、「山手線内側の土地価格で、米国全土が買える」などというデータが出たこともありました。今となってはとんでもない話です。日本国外の価格と比較しても、89年当時は株価や不動産など日本国内のあらゆるものが、明らかに不自然なレベルまで上がっていたものと思われます。つまりは、当時の日経平均株価やお立ち台のほうが現実離れしていたのであって、高揚感のない今の値がむしろ現実感があると考えるほうが、妥当な可能性が高いのではないかと思う次第です。

2つ目は、ひとつめと関連しますが、89年当時とは違って今後の急激な値崩れは想定しにくいのではないかということです。

2月23日の日経新聞記事を参照すると、株主の構成が変わっています。東証統計によると、85年は事業会社、銀行、保険の3主体で日本株の66%を保有していました。バブル崩壊と株価下落で保有株に損失が発生し、それらが財務再建のために売却を迫られました。

また、金融機関や事業会社が互いに株式を持ち合う「持ち合い」の解消も社会的に求められ、売却を迫られていった経緯もあります。今では、これらの安定株主は全体の30%程度にまで減っています。

代わりに増えたのが、外国人株主です。7%から30%に増えました。

生成AI(Copilot)に、「日経平均株価過去最高値更新の背景について、どのような理解をすればよいか。ポイントを3つ挙げて説明してほしい」と試しに聞いてみたところ、次のような回答内容でした。やはり、海外マネーの動きを大きな要因に挙げています。

日経平均株価が、1989年の大納会でつけた史上最高値の3万8915円を更新し、3万9098円となりました。この記録的な上昇にはいくつかの要因が影響しています。

・経済回復と成長意欲の変化:日本経済は「失われた30年」からの回復を示しており、企業の成長意欲が高まっています。上場企業の純利益は34年で7倍に増加し、海外投資家も日本株を支えています。

・中国からの資金シフト:中国経済の低迷により、日本株の見直し買いが入りました。また、日本の金融緩和政策の継続観測も円安に寄与しています。

・新NISA制度と海外マネーの評価:新NISA制度の導入により、株式市場に資本が流入しています。海外メディアも日経平均株価の最高値更新に注目しており、市場の評価が高まっています。

これらの要因が組み合わさり、日経平均株価は過去最高値を更新しています。しかし、市場は常に変動するため、今後の動向にも注意が必要です。

主な株主が、事業会社、銀行、保険から外国人投資家に変わっていると言って、安心という保証はもちろんありません。中国に資金が戻ったり、日本株に未来がないと評価し直したりすれば、海外マネーも資金逃避していく可能性はあるはずです。

しかしながら、上記のように、日本国内の現実離れした感覚の人が買い増しを続けていってつくられた結果と、国際会計基準も整備され客観的な評価が進んだ外国人投資家が買いを入れた結果の現在は、まるで状況が異なるのではないかと想定できそうです。

また、外国人投資家は、日本経済や日本企業の動向を懸念する局面がくれば、一時的に日本市場から引き上げる可能性もあるものの、日本株が割安だと判断されればまた投資機会を見出して戻ってきます。世界中で情報と資金が行き来しやすい環境になっている点も、そのことを後押しすると想定されます。

そして、新NISAです。証券会社の知人に聞いてみましたが、やはり新NISA開始は大きな反響・影響があり、今後さらに個人マネーが流れてくるだろうということでした。特に新NISAのつみたて投資枠のほうは、生命保険を彷彿させるような長期的な資産形成の印象を与える機能をもっています。

仮に国民12人に1人の1,000万人が1人当たり年間10万円のつみたて投資に取り組むとすると、年間1兆円の投資額となります。1人当たり年間100万円(これは過剰な見積りだと思いますが)なら年間10兆円です。これが今後一定の長期間にわたって、毎年新たに流入し蓄積し続けることになります。日本で上場する全株式の時価総額合計は1月末で約930兆円です。今後時間がたつにつれて、市場全体で結構な割合を構成していくことになると想像されます。

2月24日の日経新聞によると、新NISA開始初月の1月で、ネット証券大手5社合計で6000億円以上の株式買い付けがあったということです。年間7.2兆円に相当します。このうち日本国内向けの商品がどれだけかは不明ですが、上記も今後十分現実味がある数字ではないかと思います。

また、私たちには、「損失回避バイアス」という、「損したときの苦痛は得したときの快感より大きいため、損失を確定させる行動をとりたくない」という心理が働きます。これらのことからも、新NISAに流入した個人マネーが、生命保険を解約するかのようなイメージで市場から一斉に退避するかというと、想像しにくいものがあります。

上記で挙げたようなことを踏まえると、バブルのイメージを持ち出して「上がり過ぎなのでは」「また下がるはず」といった感覚でとらえることは妥当ではなく、上昇基調を所与のものと捉えて、自社の事業活動や個人の資産運用を考えるべきなのかもしれないと思います。

続きは、次回考えてみます。

<まとめ>
過熱した高揚感がないのは、むしろ現実を妥当に表しているからかもしれない。

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