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海外就労の金銭的魅力が高まる

5月29日の日経新聞で「Zワーカーズ(中)海外就職、決めて良かった 駐在より永住、円安も誘因」というタイトルの記事が掲載されました。Z世代の中で、海外就職志向が高まっているのではないかということをテーマにした内容です。

同記事の一部を抜粋してみます。

東美宇さん(24)は今春、マレーシア滞在3年目を迎えた。2022年春に関西の大学を卒業後、フランスのビジネス・プロセス・アウトソーシング企業のマレーシア法人に就職した。学生時代にカナダと中国への留学を通じて身につけた英語と中国語を職場や日常生活で生かせるのが決め手だった。

多言語・多民族国家であるマレーシアでは「より自分の強みを生かせる。海外での就職を決めて良かった」と話す。今後はオーストラリアなど別の国での就労も視野に入れている。

Z世代は子供の頃からネットで海外の情報に接してきた。キャリア展望も明確で、日本企業に就職して経験を積んでから海外駐在の機会を待つよりも、自分の能力を最短で生かすために自ら道を切り開こうとする傾向が強い。

円安の進行で外貨建ての給与は円換算で膨らむため海外就労の魅力は増している。外務省によると、23年時点での海外永住者は57万4727人と過去最多を更新した。海外就労を目指す人のサポート事業を手掛けるGJJ(東京・新宿)によると、ここ3年程度で同社のセミナー参加者の6割は女性が占めている。

同じくマレーシアで働く中島知香さん(30)は、就職活動のなかで「海外駐在の機会を待ち続けるより、海外就職が早いと思った」と話す。新卒から働く米国企業で人事の仕事に携わっている。当初は新卒でもすぐに成果を求められる環境に苦戦したというが、いまは「後輩」の日本人の採用活動に力を入れている。

円安は海外就労には追い風でも、留学費用は割高となる。留学支援を手掛ける留学ジャーナル(同)の担当者によると「大学生では留学費用への懸念から期間を短縮する事例が多い」という。滞在先をより安い場所に移したり、大学寮からホームステイに変更したりして費用を抑える例も目立つ。代替手段としてオンライン授業を選ぶ学生もいる。

海外就労は社会保険などでの課題はある。代表的な例が、海外で就労する日本の会社員らが現地でも年金保険料を納める二重払いの問題だ。いずれかの国の支払い義務を免除できる協定を、日本はこれまでに米国や英国など23カ国と結んだ。タイやトルコなどとも交渉を進める。

同記事からは、2つのことを考えました。ひとつは、憶測で物事を仮説づける、結論づけるのは危ない、ということです。

「最近の若い世代は、海外志向が弱くなった。海外にチャレンジしたがらない。海外赴任や留学などにも消極的だ」といった物言いを時々聞くことがあります。転勤などに消極的で、地元志向をはっきりと主張する若手人材もいるために、なんとなくそのような全体感があると感じられるのかもしれません。

同記事の事例だけで全体をとらえようとするのも短絡的ですが、少なくとも、同記事も参考にすると上記のような物言いも偏った印象によるもので、的を外している可能性がありそうに思います。

同記事の図表を参照すると、海外永住者は男女とも過去最多を更新し続けています。長期滞在者はコロナ禍の20年から減少が続いているようですが、10年単位のトレンドで追うとやはり増え続けています。特に女性は、これまで長期滞在者数>永住者数で推移してきたのが、2023年に逆転しそうな勢いで永住者数が増えています。

細かい年齢の内訳までは出ていませんので、もしかしたらシニア層が数字を押し上げているのかもしれませんが、同記事からはZ世代も例外ではないことを彷彿させます。

もうひとつは、他国との比較における日本の経済力低下です。他国と比べた場合の、所得の伸び、物価の伸びの違いに加え、為替の影響によるものです。

海外渡航・滞在は、私たちにとって経済的な負担が大きくなっています。特に、長期滞在し、その間ほぼ支出のみで収入の予定がない海外留学は、費用の捻出が難しくなってきています。「もっと留学にもチャレンジし、視野を広げよう」といっても、物理的に難しくなっているわけです。

一方で、海外で就業し現地通貨での収入を得ることの魅力が増しているため、そのことを実行に移す人も増えているわけです。

日本人の人材獲得競争には競争相手に日本国内企業だけでなく他国も含まれている、という認識を明確にもつ必要がありそうです。巡航速度に沿った物価上昇、それも受けての賃上げによる所得増加を実現させていくことは、やはり大切だと感じます。加えて、同記事の事例のイメージで、自分の能力発揮やキャリアの展望が描けると求職者が思える環境を追求することも、やはり大切になります。

<まとめ>
Z世代は、海外で就労して稼ぐことに意欲的かも?

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