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大規模な人員削減について考える(2)

前回は、米グーグルの事例をもとに巨大テック企業による解雇を取り上げている記事についてテーマにしました。同記事からポイントと考えられそうなこととして、「表面的な情報だけでなく多面的、本質的に捉える必要があること」「評価の基準をはっきりさせるべきであること」について考えました。

3つ目は、言行一致の大切さです。

組織マネジメントにおいては、「自組織はこのような考え方である」「自社の方針としてこの施策を進める」と宣言している内容と、実際の経営判断、あるいは経営者を中心とするマネジメント層の言動や行動とが、一致している必要があります。それらが不一致になってしまうと、メンバーは何を自身の判断や行動のよりどころにしてよいか、分からなくなります。

同記事からは、米グーグル内にて、組織やメンバーが前提としてきたことと、最近の人員削減という判断・実行の内容とが、一致していないように見受けられます。もしそうではなくて記事内容が誇張や誤認を含んでいるとしても、少なくとも、従業員の中には一致していると捉えておらず、信頼を失っている人が相応にいることが確かそうに見受けられます。

仕事に没入できる最高の職場環境を提供するなどに力を入れてきた分、そうした局面では逆に反動が大きいとも言えます。改めて、言行一致の必要性を認識します。

4つ目は、隠れたコストにも注目することです。

人員削減に伴う退職金の積み増しや手続き、退職に伴う業務の引き継ぎという工数が新たに発生するなど、目に見える金銭や工数のコストが発生します。加えて、直接は見えないコストも発生します。

同記事では、「レイオフに踏み切った企業の大半で2年間は業績が向上しないという分析もある」として、残留する社員の仕事への意欲低下による生産性低下の可能性を指摘しています。メンバーの納得感やモラルが低下すると、それらを取り戻すのは相応の理解と時間を必要とします。このような、隠れたコストに注目する必要性を改めて認識します。

例えば、一度中断していた新規学卒採用を、最近再開し始めた会社があります。しかし、一度中断したことでノウハウが更新されておらず、担当する人がいなくなったことで当時のノウハウもそのまま再現できない状態となっていて、うまくいってないと聞きます。「経営判断としてはやむを得なかったが、ここまでやりにくくなるとは思わなかった」と言います。

1年でも中断すると、学生の意識や価値観への理解がアップデートされなくなりますし、媒体の使い方やトレンドなどにも疎くなります。加えて、応募する側にとっても、「年によって採ったり採らなかったりする企業」だと映ると、求人に対するイメージが下がってしまうかもしれません。

組織をあるべき姿に導くには、時には冷静で痛みを伴う判断が不可欠です。そのうえで、当該決定に伴ういろいろな影響を想定すること、何を自組織の判断基準にするのかを普段から明確にして周知しておくことが必要だと思います。

<まとめ>
施策の意志決定にあたっては、直接の当事者以外への影響も想定する。

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