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頭痛の相手に見たプロフェッショナルな姿勢

先日、ある方(Aさん)とお話しました。Aさんは新しい商品を開発する工程に関わる仕事をされている方です。ちょっと意見交換してみたい件があり、オフィスに訪問したい旨を打診したのですが、体調不良を理由に断られていました。その後Aさんのほうからご連絡があり、「体調も回復したので会えないか」と打診いただいたため、先日訪問してきたという経緯です。

訪問して意見交換するにあたって、こちらからの初回の打診に体調不良で応じられなかったことについてお詫びがありました。

私は特に気にしてなかったのですが、「体調がすぐれないため、また今度でお願いします」のような返信内容だったため、Aさんの側はあまり乗り気ではなく体のいい断りだったのかなと思っていました。それが、後日Aさんのほうからご連絡が来たわけです。意見交換自体には乗り気で本当に体調不良で会えない状況だったのかなと、私のほうで思いなおしたということがありました。

体調不良の理由について、次のようなことをお話されました。

「ある商品の商品名を考えようとしていたのだが、その特徴から商品名をつけるのがたいへん難しいものだった。そのことでずっと悩んで考え続けた結果、頭痛がとまらなくなった。商品名を決める期限も近づく中、緊急性の低い仕事はストップさせてもらった。在宅勤務とし、その商品の開発と他2、3の仕事だけに絞り、何とか乗り切れた。無事に商品名も自分なりの答えにたどり着いた。そういうわけで先日は対応できなかった」

そのお話を聞いて、ただただ感銘を受けた次第です。

頭痛は2週間程度続いたそうです。頭痛がとまらなくなって体調不良になってしまうほど、何日もひとつのことをずっと考え抜くなど、なかなかないことだと思うのです。

コピーライター専業の人ならそういうこともあるのかもしれませんが、Aさんはそういうわけではありません。Aさんの仕事にはいろいろな要素があり、そのひとつが今回の商品の商品名を考えることでした。しかも、意志決定者は別の人で、Aさんはその人をフォローするような役回りの人です。いくつか妥当そうな案を出して意思決定者に委ねれば、おそらくもっと効率よく仕事が手離れしたと思います。

しかし、「この商品にとって核となる名称は、難しいがゆえに安易に決められない」と、効率よく済ませようとはしないわけです。

そこまでやるのがよいかどうかはケースバイケース、必ずしもやりすぎがよいとは思わないなど、いろいろな意見もあると思います。Aさんの対応が正解とも限りません。しかし、仕事に真摯に向き合うその姿勢から、私には尊敬の念以外うかびませんでした。

(上記のお話を聞いたから、なおさらそう感じるのかもしれませんが)できあがったその商品名は、とても重く、存在感のあるものに感じられます。「これ以外にないだろう」という感じを受けます。

そのネーミングが最適だったのか、他のネーミングだった場合に比べて売り上げが何割かプラスになったのか、あるいは他のネーミングだったほうが実は受けがよかったのか、結果は分かりません。そのうえで、Aさんのようなプロセスを繰り返していれば、取り組む領域での目利き・思考力は必ず磨かれていくはず。そのように感じさせられるエピソードでした。

そして、私を含め、体調不良でダウンしていた間に不本意な対応をしてしまった人たちに対し、自ら連絡を入れて埋め合わせをしています。これも特別なことではないですが、なかなかできないことだと思います。

特に私の場合、連絡した内容から急ぐ必要はまったくなさそうな用件であることは、想像ついたと思います。それでも、(お話の内容から想像すると)体調不良から明けた直後ぐらいのタイミングで、アポ調整のご連絡をいただいています。

目の前のことに、ひたすら向き合う。

Aさんの行動レベルまでできるかどうかわかりませんが、私も少しでも近づきたいと思った次第です。

そして、自分が思ったような反応が相手から返ってこない時でも、自分の勝手な見立てで相手の状況を推測しないこと。今回のケースのように、本当にたいへんな状況に置かれている可能性もあるのだということを、改めて感じました。

<まとめ>
目の前のことに集中する。

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