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景気の先行指標PMI

9月1日の日経新聞で、「中国景況感、コロナ感染再拡大で大幅悪化」という記事が掲載されました。
同記事の一部を抜粋してみます。

~~中国国家統計局が31日発表した8月の購買担当者景気指数(PMI)によると、製造業と非製造業を合わせた総合産出指数は前月より3.5ポイント低い48.9となった。好不調の境目である50を下回るのは、新型コロナウイルスが直撃した2020年2月以来だ。感染再拡大に伴う移動制限で旅行業などが打撃を受けた。

8月はサービス業の景況感が大幅に悪化した。非製造業のビジネス活動指数は47.5と、6ポイント近く低下した。「不調」を示すのは20年2月以来だ。8月の製造業PMIは7月より0.3ポイント低い50.1だった。節目の50はわずかに上回ったが、5カ月連続で悪化した。

中国では7月下旬から国内感染が再び広がった。感染力が強いインド型(デルタ型)も確認され、当局は省をまたぐ移動を事実上制限した。感染者がいない地域でも映画館の入場者数を規制した。業種別に見ると、運輸や宿泊、外食、娯楽といった業種の需要が大きくしぼんだ。非製造業の販売価格を示す指数は、20年10月以来の50割れとなった。コスト高と需要縮小の板挟みは価格転嫁を難しくし、収益を圧迫している。

中国国家衛生健康委員会は27日の記者会見で、「今回のウイルスまん延はうまく抑え込んだ」との認識を示した。外食や宿泊業の景況感は9月に大きく回復するとの見方も多いが、ウイルス次第で企業心理が振れやすい状況は、雇用の回復などに影響を及ぼす。

気がかりなのは新規受注の動向だ。20年2月以来の50割れとなった。原材料高による収益悪化が企業の設備投資などの重荷となっている。輸出に限った新規受注は46.7となり、4カ月連続で節目を下回った。3~6カ月後の輸出動向を示唆しているとされ、21年後半の輸出は伸び悩む可能性がある。~~

購買担当者景気指数は、企業からみた景況感を示す経済指標です。「Purchasing Managers' Index」の頭文字をとって「PMI」と呼ばれています。購買担当者に生産や受注、価格動向などを聞き取り、その結果を指数化したもので、50を上回れば前月より拡大、下回れば縮小を示します。つまりは、50が好不況を判断する分かれ目とされています。

先行指標か遅行指標かでいうと、景気の先行指標となります。購買担当者は取引先の動きや製品の需要、自社の生産計画などを見極めたうえで原材料を仕入れるため、これから先の景況感を映すものとなるからです。

ちなみに、各国の状況をいくつか紹介すると、以下の通りです。軒並み指標の低下が続いている感じです。どの地域も中国同様、製造業よりサービス部門のほうが値が低いことも共通していて、コロナ禍の一定した傾向を感じさせます。

米国製造業PMI 7月63.4 8月61.2
米国サービス部門PMI 7月59.9 8月55.2
ユーロ製造業PMI 7月62.8 8月61.5
ユーロサービス部門PMI 7月59.8 8月59.7
日本製造業PMI 7月52.4 8月52.7
日本サービス部門PMI 7月47.4 8月42.9

以前の投稿でも時々景気の現状について取り上げていますが、7月月初頃までは、「変異株の今後の動向など如何によっては見通しも変わってくる可能性があるが、現時点では景気拡大に向けた動きを示していると読み取れそうだ」とした内容が多かったです。しかし、ここにきて「変異株の影響」が現実化し、軒並み悪化に転じているようです。

景気関連の指標によっては強めに出ているものも見受けられて、現在は強弱入り乱れている感じです。しかしながら、景気の上流工程にある先行指標のひとつであるPMIが、どの地域も8月に悪化の傾向があることは、注視したほうがよいと言えるでしょう。特に、これまでコロナ禍封じ込めが比較的順調と言われ、世界景気をけん引してきた中国需要に急ブレーキがかかっているように見える動きには、注意が必要でしょう。9月以降持ち直せばよいですが、引き続き悪化し続けるようだと、重大局面を迎える可能性もあります。

先週お会いしたある経営者様は、「おかげさまで年度後半まで製造が追いつかないぐらい忙しい。しかし、ある種の違和感を覚える。部品供給が世界的に滞っている関係で、発注元さんがリスクヘッジの観点からうちも含めたサプライヤーに2重3重に注文しているのではないかと勘繰っている。」と話していました。仮にそれらに実態がなく、在庫として積みあがったら一気に反動が来るのではないかと、身構えているわけです。

実際にそうなるかどうかはまだわかりません。そのうえで、注文殺到を手放しで喜ぶのではなく、上記のような指標の観点も含めて冷静な見方をしておくことは、経営上必要な感覚だろうと感じた次第です。

<まとめ>
景気の先行指標の今後に注目する。


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