中古不動産の今後を考える
8月13日の日経新聞で、「億ション続々、高騰でも… 日本の住宅「割安」 収入比、OECD平均未満 都心・新築偏重」というタイトルの記事が掲載されました。高騰する日本の不動産価格について、国際比較の観点も含めて考察した内容です。
同記事の一部を抜粋してみます。
日本の住宅は、生活者にとっては高いと感じる価格ながらも外国の不動産の金額と比べると安い、と言われています。簡単に買えない価格帯まで上がっているのは、主に外国人を含む投資家による購入意欲が価格を押し上げる結果だろうと思っていましたが、同記事を参考にすると、別の切り口からも捉えることができそうです。
住宅価格が可処分所得をどれだけ上回っているかの割合の指数は、OECDの平均に対して、日本は下回っているというわけです。
同記事中で紹介されているグラフによると、(グラフからの目算のため正確ではないですが)2015年を100とした場合の住宅価格収入比率は、OECD平均が日本を上回り続けていて、2023年時点でも4ポイント程度の差があります。つまりは、OECD他国に比べると、日本はまだ居住する住民にとっても住宅が買いやすいほうだということになります。
このことから、「その都市で不動産がいくらで買えるのか」という絶対額の観点で、他国より安いから日本の不動産が買われやすい、というだけでもなさそうだと想定できます。そのことに加えて、生活者目線から見ても日本の不動産は全体的には他国よりまだ割安であり、投資の観点以前に利用の実需としても全体的には割安だということも、買い要因として想定できるのかもしれません。
そのうえで、上記は「日本の住宅全体」を平らにして見ていることを前提にする必要があります。例えば、住宅の中でも「都内・新築・マンション」は高騰しているものの、「都市以外・中古・戸建て」などはそうとは限らないということです。立地や物件による価格差は大きそうです。
日本では、以前から新築志向が強いと言われます。新品を好む傾向があり、「お古」は買いたがらない、敬遠しやすいというわけです。中古マンションは、賃貸としては利用されるものの、売買ではあまり評価されませんでした。
しかし、このことも変わりつつあるのかもしれません。8月16日の日経新聞記事「〈経済財政白書から〉マンション、薄れる新築志向 資産価値下がりにくく」から一部抜粋してみます。
全所得層において、中古マンションを購入する層が増え、それに伴って中古と新築の価格差が小さくなっているというわけです。
これまで中古が選ばれにくかった要因としては、大きく2点挙げられるのではないかと考えます。ひとつは消費者が新しいもの好きであること、もうひとつは中古に関する情報が不透明なことです。
しかし、これらの傾向も変わっていくかもしれません。
Z世代を中心とする若手世代は、環境問題などにも敏感で、一様なブランド志向などより是々非々で買うものを選ぶ傾向が強くなっていると言われます。
メルカリが13日に発表した決算では、上場後初めて2期連続で最終黒字を確保し、国内のフリマアプリなどマーケットプレイス事業の流通総額も初めて1兆円を超えるなど国内事業の好調さを示す内容でした。「中古品も正当に評価できるものは購入に抵抗がない」という、かつての新品志向とは異なる傾向を予感させます。
中古マンションに関する情報の透明性は今後の課題ですが、国も中古物件の流通や管理強化を促しているところです。今後改善されてくれば、中古不動産の活況がさらに期待できるかもしれません。社会全体の既存資産を有効活用する観点からも、望ましい動きだと思います。
以上、新築と中古の住宅をテーマに考えてみましたが、
・データでは、全体の傾向と個別の傾向と、両方をおさえて俯瞰して見る必要がある
・今後の変動要因となりそうなことを想定してみる
・中古品の市場にさらなるビジネス機会を見いだせるかもしれない
これらは、不動産以外のあらゆる事業にも当てはまることではないかと思います。
<まとめ>
中古品に対する志向、評価は、変わりつつある。
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