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シンプルで本質的なことを伝えていく

月刊「致知」1月号で、高千穂神社宮司の後藤俊彦氏と参議院議員山谷えり子氏の対談記事がありました。
同記事に、次の内容があります(一部抜粋)。

~~天孫降臨の物語や三大神勅もそうですが、瓊瓊杵尊の曾孫で初代天皇になられた神武天皇の「橿原奠都の詔」、これも学校教育の場で全然教えられていません。

例えば、リンカーン演説にある「人民の人民による人民のための政治」、これがアメリカの民主主義だとか、フランス革命の「自由・平等・博愛」だとか、そういうことは習っても、統一国家として世界で最も長い歴史を持つ日本の建国のビジョンは何ですかって言った時に、おそらくいまの日本の若い人たちは、「えっ、そんなのあるんですか」って。

「橿原奠都の詔」に書いてあることは要するに、一人ひとりが大事にされる国をつくりたい、徳を持つ道義国家をつくりたい、一つ屋根の下で皆が仲良く暮らす家族のような国をつくりたい、ということですよね。いまでも日本人の心の奥底に、そういうものを大事にしながら生きてきたよねっていう感覚があると思うんです。

私の友人に宮司で学校の先生をやっている方がいらして、生徒に神話を繙きながら「あなたたちは皆神々の子孫なんだよ」って教えたら、目を輝かせて喜んだといいます。いま世間では、暗いニュースばかりが報道されていますけれども、そういうシンプルで本質的なことを伝えていくのが教育の第一歩ではないでしょうか。~~

私も「橿原奠都の詔」について、この記事を通して初めてきちんと認識しました。

「ビジョン」は組織によっていろいろな意味合いで使われることのある言葉です。「建国のビジョン」とありますが、上記内容は具体的な長期目標というより、永遠に求め続ける使命や理念という意味合いに近いように思います。日本がこういう国を目指しているとしたら、本当に素晴らしい、共感できる想いです。

バーナードによる組織の定義は、「共通の目的」「情報の伝達・共有」「協働の意思」の3要件が、メンバー間で同時に満たされていることです。洗練された目的を、その集団に属するメンバーが理解し共有してはじめて、その集団が本来の意味での組織になる条件がひとつクリア、というわけです。

このことは、勤務先の会社をはじめとする、私たちが普段所属している組織にも当てはまることだと思います。特に、2代目3代目に受け継がれて相応の年数の歴史がある会社は、上記日本建国のビジョンのような質の高い企業目的(創業の想い)をもっているはずです(そうでなければ、その会社は現在まで残っていません)。それが、2代目3代目・・・と受け継がれていき、創業当時の様子を直接知る人材がいなくなることで、当初の目的の共有が薄れていきます。その結果、組織としての力が弱まってしまうわけです。

しかしながら、上記記事の例に見るように、過去の資料や記録を手がかりにしながら、今いる人材が語り部となることで、想いの伝承は可能なのだと言えるでしょう。

生徒(子供)の反応は大変分かりやすいと同時に、人の本質を表しています。子供が本能的に好き/嫌いと感じることは、大人も好き/嫌いだからです。そのことや上記の事例を手がかりにすると、「組織に属しているメンバーは、自分たちが認識している以上に、組織の想いの共有に飢えている」ということではないでしょうか。

「職場満足度」「エンゲージメント」などと聞くと、それを高める上で有効とされるツールやテクニカルな方法論を思い浮かべがちです。それらもいいのですが、上記記事を参照にすると「シンプルで本質的なことを伝えていく」ことにまず注力すべきではないでしょうか。

それにしても、「橿原奠都の詔」に見られる日本建国のビジョン。すべての理念の土台にしたいと思える、とても優れた内容だと感じます。

<まとめ>
シンプルで本質的な組織の想いを伝えていく


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