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結果としてのエンゲージメント

先日ある企業様で、「自社でもエンゲージメントをテーマにした取り組みを行うべきだということが、担当役員から提議されている」というお話がありました。

同社様の検討資料では、冒頭で「エンゲージメントの導入を検討したい」のように書かれていました。これはたいへんな違和感があると、申し上げた次第です。「エンゲージメント」は、仕組みやシステムではないからです。「導入する」「導入しない」などは、当てはまらない概念のはずです。

「エンゲージメント」とは、結果的に湧き出てくるものであって、人工的にあるいは意図的につくりだせるものではないと思います。

もう少し踏み込んで考えてみます。

以前から「ワークエンゲージメント」という言葉は存在していました。そのうえで、最近盛んに言われるようになった「エンゲージメントの重要性」で想定されているのは、「従業員エンゲージメント」の視点ではないでしょうか。各種サイトも参照し、以下のようにまとめてみます。

・ワークエンゲージメント:仕事に関連するポジティブで充実した心理状態であり、活力・熱意・没頭によって特徴づけられるもの
→視点は「仕事」

・従業員エンゲージメント:従業員が企業全体、上司、仕事の中身など、働く場面でかかわる諸対象に、どれだけ強い関与や思い入れをもっているかの度合い
→視点は「仕事+かかわる相手」

経営として「ワークエンゲージメント」の認識だけでは不十分な理由は、労働者が今後ますます様々な働き方を選べるようになるからです。仕事への活力・熱意・没頭が満たされている状態が得られる環境は、必ずしも自社でなくてもよいかもしれません。労働者に「自社ならでは」の働く理由を見出してもらおうとすると、「従業員エンゲージメント」の概念になるのではないかと考えます。

そして、従業員エンゲージメントを高めるには、仕事そのものの面白さに加えて、「組織の目的への共鳴」「お客さまへの貢献実感」「自らの意思による選択の実感」の3つの要素がポイントになるのではないかと考えます。この3つが揃って成立している時に、ワークエンゲージメントから、その組織に所属することならではの従業員エンゲージメントにまで高まるということです。

<組織の目的への共鳴>
・所属する組織が掲げる使命や目標に心底共感できること
⇒社会性や社会貢献に敏感な若手世代にとって、これまで以上に重要

<お客さまへの貢献実感>
・自分の取り組んでいることや担当していることが、お客さまの役に立てていると実感できていること
⇒そのような実感が得にくい、最終顧客に遠い工程や間接部門を担う人にとって、特に重要

<自らの意思による選択の実感>
・自分で取り組んでいることや担当していることが、自分で決めて選んだ結果だと思えていること
⇒ジョブ型雇用(=担当する仕事が自らの意思に適っていることが前提になっている)以外の雇用の人、人事異動や担当業務を変更する人にとって特に重要

すなわち、エンゲージメントとはこれらが満たされたときに必然的についてくる結果であって、エンゲージメント向上自体は直接の目的にすべきものではないのでは、ということです。

突き詰めると、組織として追求すべきは、所属するメンバーが本質的でよい仕事ができる環境を整えること、そして仕事の結果に対して最大限の還元(報酬その他)をすること、に行き着くのではないかと考えます。

<まとめ>
エンゲージメントは、よい仕事の結果である。

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