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ポイントサービスに見る外部環境の変化

2022年10月3日の日経新聞で、「Tポイント・Vポイント統合へ CCCと三井住友が協議」というタイトルの記事が掲載されました。Tポイントは、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が2003年に業界に先駆けて導入したポイントサービスです。先駆者のサービスが他と統合するということで注目されています。

同記事の一部を抜粋してみます。

CCCと三井住友フィナンシャルグループ(FG)が、共通ポイントの「Tポイント」と三井住友カードなどの「Vポイント」を統合する方向で協議に入った。実現すれば、会員数は単純合算で延べ約1億2000万人と最大規模になる。Tポイントはポイント経済圏で楽天グループなどに後れを取ってきた。決済に強い三井住友と組んで巻き返しを図る。三井住友グループはTポイントの運営会社に出資することも検討する。

CCCが運営するTポイントの会員数は約7000万人。一方、国内カード最大手の三井住友カードは会員が約5200万人いる。統合すれば三井住友カードでためたポイントをTポイントの加盟店などで使えるようになりそうだ。

ポイント経済圏は決済との融合が普及のカギになっている。「楽天ポイント」やNTTドコモの「dポイント」はQRコードなどの決済と結びつくことで利便性を高めてきた。会員数は9000万~1億人程度とTポイントを規模で上回る。

CCCは三井住友と組み、QRコードよりも市場規模の大きいカード利用者の取り込みを狙う。三井住友もTポイントとの接続で、カード会員のさらなる獲得などにつなげる。ポイントサービスでは「auペイ」が2020年に共通ポイントの「Ponta(ポンタ)ポイント」と統合した事例がある。

Tポイントはここ数年、苦境が鮮明になっていた。ドトール・日レスHDがTポイントを19年に離脱し、dポイントにくら替えするなど加盟店の離脱が進んだ。ソフトバンクとZホールディングス(HD)は22年3月、Tポイントの運営会社との資本関係を解消し、サービス面での連携も終了した。

それでも三井住友にとって、約7000万人の会員数を持つTポイントのネットワークは魅力だ。三井住友では提携するSBI証券で22年5月からVポイントを投資に使えるようになった。ポイント還元を充実させた上位カードを20年に発行するなど、近年ポイント事業を強化してきた。グループや提携先での浸透を通じて勢力圏の拡大を図っているが、金融以外の領域では広がりに欠け、知名度の向上が大きな課題になっていた。

消費者として共通ポイントカードの魅力は、行く先々の店でポイントを貯めていき、貯まったポイントをまとめて使えることにあります。導入する店側も、同じポイントのシステムを導入する他店と、ポイント目当てで同じお客さまが行き来する集客効果が望めます。

店側の他のメリットとしては、自社独自のポイントサービスを導入するのに比べて管理コストが安く済むこと、カード利用による顧客データの分析を受けられることなどが挙げられます。これらのメリットを捉えていち早く訴求し、他社に先んじて流通させて先行者利益をとってきたのがCCCだと言えます。

しかし、他社が台頭してきました。今回の統合によるTポイント+Vポイントを含めて、共通ポイントサービスは5大勢力になると言われていますが、他の4大勢力に共通するのはスマホを中心とした強力な決済手段と結びついていることです。Tポイントは決済との融合では後れを取ってきましたので、決済機能のパートナーとして三井住友を選んだのは自然な流れだったのかもしれません。

・NTTドコモ:dポイント
・KDDI:Pontaポイント
・ソフトバンク・Zホールディングス:PayPayポイント
・楽天:楽天ポイント

今回の件で改めて認識したいのは、「外部環境の変化に敏感になることの大切さ」です。

先日、ある企業様でも、今後の自社を取り巻く外部環境の変化の想定をなさっていました。同社様の事業では自動車業界とのつながりがあるのですが、EV化が自社に与える影響を今のタイミングで改めて幹部陣で分析してみたところ、想定される影響の大きさをこれまで以上に改めて実感したそうです。新規事業拡大の取り組みを加速させていく方針だというお話でした。

Tポイントを取り巻く環境も、この数年で大きく変わってきたのではないかと思われます。スマホに紐づいた決済手段の発展・流通に、他社のポイントサービスも紐づいて流通し始めました。店側としては、新たな決済手段に対応しようとすると、必然的に紐づくポイントサービスも導入することになります。

すると、その決済手段を使おうとするお客さまの来店も見込めるため、ひとつのポイントサービスに依存するよりも、複数の決済手段を持ち複数のポイントサービスが使えるほうが、集客も望めるはずです。よって、店側にとっての管理コストの肩代わり、集客というメリットが、Tポイントならではものでもなくなったということがありそうだと推察します。

今後、Tポイントが巻き返せるかどうかは、Vポイントと統合することで、価値のあるデータを提供できるかどうかにかかっているのかもしれません。また、今なら三井住友にとってのメリットもありますが、加盟店離脱がさらに進んだタイミングだとメリットが減り、統合も難しくなったかもしれません。これも、環境変化を察知し、統合に向けた動きを始めていたから成り立つことだと言えると思います。

10月4日の日経新聞によると、政府・日銀による9月22日の24年ぶりの円買い・ドル売り為替介入は、1年前から米国の理解を得るために次官級で水面下協議をしていたとあります。急に介入を実施しようとすると米国の懸念や反対を受ける可能性があるためです。1年前の当時のレートは1ドル114円でした。円安というわけでもない水準でしたが、エコノミストらの間で米国の利上げの必要性が指摘され始めていた動きなどから、円安の懸念があったと記事で説明されています。

この介入の効果・是非についてはいろいろ言われていますが、環境変化を見越したアクションを始めていたということは確かだと言えそうです。

好調な時、有事が始まる前からその先の環境変化を想定する。難しいことではありますが、その大切さを感じた次第です。

<まとめ>
自社や自身を取り巻く外部環境の、この先の動向を想定する。

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