取引先の便益を高める
3月20日の日経新聞で「ホンダ、金型を一括購入に 中小の資金繰り支援 金利負担を抑制」というタイトルの記事が掲載されました。支払い条件を取引先が有利になるように変更するという内容です。
同記事を抜粋してみます。
日本銀行は19日、マイナス金利政策の解除を決定しました。17年ぶりの「利上げ」となります。今後どのぐらいのペースで利上げが進んでいくのかはわかりませんが、これまでより高くなっていくことは確かです。借り手にとって金利負担が増えていくことは、間違いないはずです。
借り入れへの依存度が大きい会社としては、自社の借入規模なら金利上昇の影響をどの程度受けそうなのかの想定と、それに応じた規模の見直しなども求められそうです。
同記事から、2つのことを考えました。ひとつは、資金繰りに関する見直しは余裕がある時に行うのが有効ということです。
同記事のような見直しは、買い手側に余裕のある時だからこそできる提案だと思います。自社にも余裕がなくなってくれば、自社の財務マネジメントが優先になります。企業収益の好調な時にこそ、財務マネジメントの見直しをしておくべきなのだと思います。
もうひとつは、取引先の相手にとって有利な環境づくりに協力することの大切さです。
同記事の例で言えば、車メーカーにとって部品メーカーから安定して部品の供給を受けることは自社の死活問題です。
3月6の日経新聞「サプライチェーンのリスク管理(4) グローバル化と集中化の課題」では、グローバル化と集中化によって、自社やサプライチェーン内のリスクを増幅させていると指摘しています。一部抜粋してみます。
部品サプライヤーが減ることは、上記の例でレギュラー選手・控え選手が減っていくということです。自社が取引できる部品サプライヤーの数には限界があり、多すぎてもうまくいかなくなりますが、少なくなると供給危機を招きます。よって、自社にとって有力なサプライヤーを、控え選手を含めて一定数維持することは、自社の危機管理を行ううえでも有益です。
冒頭の記事内容について、買い手側のほうに一括払いするに足る十分な資金力があれば、買い手にとって財務上のデメリットはほとんどありません。その間、先に一括支払うことによって手元から現金が早く出ていき、わずかな預金金利収入が得られなくなるなどのデメリットもあるのかもしれませんが、それで供給網が維持できる可能性が高まるなら安い投資です。
一方の部品サブライヤー側にとっては、とてもありがたいことです。金策に走る場面や不安を緩和でき、製品づくりにより集中できることにもつながります。
自社に大きな負担なくできることで、相手側にそれ以上のメリットがある。それによって自社の危機管理能力も高まる。余裕のある時にこそWin-Winを目指した取り組みが進めやすいということを、改めて感じた次第です。
<まとめ>
余裕のある時に、相手の便益を高める提案をしWin-Winを目指すことを進める。