家事代行サービス利用の広がりを考える(2)
5月14日の日経新聞で「家事代行ベアーズ、外国人「プロ」5割増 狙う出社回帰」というタイトルの記事が掲載されました。以前の投稿「家事代行サービス利用の広がりを考える」でも家事代行についてテーマにしましたが、市場が拡大しそうであることを改めて感じます。
同記事の一部を抜粋してみます。
同記事から、3点考えてみました。ひとつは、社会・経済を取り巻く環境変化に伴って、いろいろなところに新たな市場、あるいは市場拡大の機会があるということです。
家事代行について、市場規模が21年度までの5年間で2倍以上に成長し、これからの2年間でさらに現在の2倍以上に拡大する見込みとあります。家事代行サービスの認知率が80%近くありながら利用率はまだ1.8%とありますし、この1.8%という利用率も、利用頻度でいうとまだ低調であることも予想されます。
フランスやドイツでは利用率10%以上とあります。文化的な要因も絡みますので、日本での家事代行が簡単にフランスやドイツ並みに普及するとは思えませんが、上記の市場拡大は十分に見込めそうだと想定されます。
かつて家事代行というサービスは、一般的な生活者にとっては遠い存在のものでした。しかし今では、核家族化や単身世帯の増加、夫婦共働きの増加、タイパ重視の価値観の広がりなどもあり、身近なものになりつつあります。人口減少の影響もあって沈む市場もあれば、成長する市場もあるということです。
事業を「お客さまのために困りごとを解決するお手伝いをすること」と認識すれば、需要はいろいろなところにあり、有望な市場を見出せば事業機会になるということを改めて感じます。
ただし、有望な市場は参入者が多いということでもあります。自社ならではの強みでどんな解決のしかたをするのかを研ぎ澄ませる必要もあります。
2つ目は、私たちは一度味わった便益を手放そうとはしない、ということです。
コロナ禍で一気に普及したテレワークという働き方から全面的な出社に戻そうとして、従業員側の反対にあうという記事を、時々見かけます。このことは、日本に限らず他国も含めて共通しています。
以前は、いつ何時でも現地・現物で対応する出社勤務が当然で、ほぼ唯一の働き方の選択肢でしたが、コロナ禍で多くの人が強制的に在宅勤務する必要があったことで、この概念が大きく変わりました。そして、すべてではないものの、テレワークでも仕事ができる、そのほうが快適だ、ということを一度味わうと、簡単に元に戻そうとはならないというわけです。
それでも出社に戻すとなると、同記事の例のように、以前は負担に感じていなかった家事に充てる時間に対して、今度は新たに負担に感じてしまうというわけです。このこともあって、家事代行市場が成長するのだろうと思います。
家事代行が便利で快適、割に合う、ということを味わうと、「すべての家事を家族内で」という元の状態には戻らないかもしれません。そうなると、さらに家事代行市場が広まりそうです。
多くの人が「一度味わった便益」として挙げられるものが何かを見出せば、拡大する需要が見えてくるかもしれません。
3つ目は、強みを持つ人材の活用です。
家事代行という仕事は、プロとしての知識と技能を習得し、慣れてしまえば、多くの人にとって可能な仕事かもしれません。そのうえで、(私はフィリピン事情を詳しく存じませんので、同記事からの想像ですが)既に家事代行大国であり、家事代行という概念やサービス、大家族の中で相互扶助の生活が一般的なフィリピンからの来日者は、家事代行という仕事に対して一日の長があるのではないかと思います。このことは、介護士という領域で来日し活躍する人が多いことからも想像できます。
比較優位の考え方で、お互いの強み領域を融通し合いWin-Winの関係をつくるのが、お互いが発展、満足するための基本原則です。そのことに適した人材が就業を希望するのであれば歓迎し、売り手買い手の双方がそれに適応することは望ましい動きだと言えると思います。
<まとめ>
お客さまの新たな困りごとを発見する。