労働組合の今後の役割を考える
3月8日の日経新聞で「三井物産、労組が人材戦略 キャリア開発の要に 120職場のニーズ分析、副業など実現」というタイトルの記事が掲載されました。三井物産の労働組合を例に、賃上げ交渉ではない別のことを活動の主体にしようとしている組合について取り上げた内容です。
同記事の一部を抜粋してみます。
上記からは、3つのことを考えました。ひとつは、データ分析と結果を活用するデータマネジメントの重要性です。
AIを含め、データを収集、分析するツールはしばらく前から勢いをもって発展し続けていますが、それを使いこなせている個人や組織はまだ限られた範囲です。データを適切に活用すれば、商品・サービスの開発・見直しや、業務プロセスの見直し・再設計につながります。
一部の大きな声や表面的な事象に左右されずに、事実ベースで自組織の問題発見や課題形成を行ううえで、適切なデータマネジメントが有効であることを、同記事の例からは改めて感じます。
2つ目は、組織の目的を更新することの大切さです。
同記事の言うように、労働組合と言えば、労使双方の代表が賃金交渉を行うのが活動内容の主戦場、組合の最大の目的は賃金合意にある、というイメージが強くあります。ウィキペディアでは、労働組合の目的について次のように説明されていて、やはり賃金合意を主軸とした雇用条件の維持改善を主目的としていることが見てとれます。(一部抜粋)
しかしながら、昨今「交渉前に賃上げの満額回答」「従業員の想定を上回る賃上げの発表」の会社も増えています。同日付の別記事では、「2023年の日本の労組組織率は過去最低の16.3%。国内約5千人に実施した調査では、労組について「参加・利用したことがある」は全体の10%で、「労組の役割が分からない」が47%に達した」とあり、労働組合による上記目的の必要性が薄れている環境も指摘できます。
事例の労働組合は、人材開発やキャリア開発、働きがいを生みやすい職場環境づくりといった、上記とは異なることに目的・存在意義を見出し始めていると言えそうです。
どのような組織や会議体でも、環境変化に伴い、初期の設立・設置目的が適切ではなくなってくる可能性があります。目的・存在意義を見直して別の付加価値を発揮するか、あるいは組織を解体するか、状況によりさまざまだと思いますが、環境変化も踏まえながら自組織にふさわしい主目的は何であるべきかを問いかけてみる視点は大切です。
3つ目は、労使の協調関係の重要性です。
日本企業は、労使の一体化・協調関係が強みだとされてきました。このこと自体は依然として有効ですし、今後の社会環境を考えるとますます重要性が高まることだと言えます。そのうえで、何をもって協調関係を高めていくのか、そのやり方や主要テーマも変わりうるのだと思います。
同記事は、自社を取り巻く環境も踏まえた課題テーマを設定し、それを基軸にしての協調関係をつくっていく事例のひとつのように感じます。
これらの視点は、あらゆる企業で同様に当てはまるのではないでしょうか。
労働組合という枠にとどまらず、労使関係やメンバー間の関係、組織体や会議体の今後のあり方について考えるうえで、参考になる視点だと思います。
<まとめ>
組織の目的を更新し、使える手段を有効活用して目的達成を目指す。
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