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面談で「アンコンフォートゾーン」まで踏み込む

先日、ある企業様で人事評価面談に立ち会う機会がありました。同社様ではこれまでも評価者・被評価者間での人事評価面談を行ってきましたが、人事評価制度の改修に合わせて、面談のあり方も見直しました。見直しにあたり、第三者として私が面談をオブザーブし、目的に沿った面談が行われているかの確認や、今後に向けての改善点など、気が付くことがあれば教えてほしいという意図で、その場に立ち会ったわけです。

(前提として、私が同社様に以前から入り込んでプロジェクトの取り組みをしており、立ち会った評価者・被評価者全員と十分な面識があったということが挙げられます。よって、本来第三者が入ると違和感のある面談の場でも違和感がなく、立会いの目的も十分に理解され、かつ秘密保持の誓約もなされているということを前置きしておきます。)

全体的な傾向としては、人事評価制度改修の趣旨に合った、内容の濃い充実したやり取りがなされていました。評価者による、被評価者に対する評価結果とその理由のフィードバックも的確で、被評価者からは言われたことに対して納得感の高そうな反応が見られました。

また、被評価者が仕事や職場について思っていること、会社に要望したいことなども意見交換されました。(実現性は別として)それらを話題にできたことで、被評価者が満足した様子も見られました。全体的にはよい面談だった印象です。

そのうえで、改善するとよいであろう最大の要素と感じたことは、「被評価者の課題形成とその解決策・行動計画をより明確にしてもらうとよい」ということです。終了後の面談に対する私からのフィードバックも、その点を中心にした次第です。

というのも、被評価者がよくできていること、会社からの期待値に至っていないこと、評価者から見て本人の物足りないところなどはよく取り上げられたものの、何を被評価者のこれからの課題とするのか=次の評価期間で何を重点テーマとして取り組むのかの課題形成が明確になりきらずに面談が終了したからです。

どんな強みを生かしてどんなことに取り組んでより期待に応えるのか、あるいはどんな問題を改善することで周囲にかけている負担を軽減するのか、などの課題形成です。そして、それらをどのような方法で実現するのかの解決策、いつどんな取り組み行うことで解決策を実行するのかの行動計画を決めるには、至っていませんでした。

コーチングなどでも、「コンフォートゾーン」(居心地のいい場所)に浸ったままコーチングセッションを終了する、ということがあります。これは、相手の話をしっかり受け止めて聞く「傾聴」や、相手の存在や取り組み、達成できたことを聴き手がその言動で表して認める「承認」に終始することで、話し手が心地よい状態になるものの、それだけでセッションが終わってしまうものです。

もちろん、傾聴や承認はとても大切なことです。また、その面談が例えば、とにかく相手の話を聴くことに集中するという目的で行われるのであれば、適切であって、悪いものではありません。しかし、これからどのように行動変容するか、具体的に何に取り組んでいくのかを明確にすることも目的に含まれるのであれば、「コンフォートゾーンに浸って終わり」の面談は道半ばでの終了ということになります。

すべてのタイミングで行う人事評価面談が、課題形成や行動計画までを取り上げる前提ではないかもしれませんが、多くの人事評価面談ではそれらまでが目的に含まれると思います。同社様の面談もその前提でしたので、今回の面談内容では不足感があったというわけです。

具体的には、評価者による次のような展開が面談の中でなされれば、さらに良かったと言えるでしょう。

・「これまでの内容を踏まえて、自分としては何が課題と考えるか」などと問いかけて、明確な課題を設定させる。

・「その課題を実現させるために、何にどのように取り組んでいくか」などと問いかけて、課題の解決策や行動計画を明確にさせる。

・これらに関して、設定がずれていると感じたら、必要に応じてアドバイスも行う。

・面談終了時に確認の質問をして、課題形成・解決策・行動計画を認識しているか確認をする。「わかりましたか?」の質問は、認識がずれていても「はい」と答えることがあるためあまり有効でない。「この面談で決まった、明日から行うことは何ですか?」のように、相手の口から今後のアクションを話させて認識度合いを把握できる質問をする。

これらのやり取りをする中で、居心地の悪さを伴う「アンコンフォートゾーン」にも相手の思考が入っていくことを意味します。アンコンフォートゾーンは、入るのがたいへんなため、避けたくなるものです。逆に言うと、一人では入りにくいからこそ、他の人の力を借りてそこに入り、次の成長につながりやすくなると言えます。人事評価面談は、まさにそのひとつと言えます。

「コンフォートゾーン」に終始するのが必ずしも良い対話とは限らないのを、認識しておく必要があると思います。

<まとめ>
面談では必要に応じて、相手にとってのアンコーフォートゾーンまで踏み込む。

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