自身や自社を取り巻く外部環境変化
5月22日の日経新聞で、「外食、4年ぶり出店増 店舗数コロナ前超え」という記事が掲載されました。企業を取り巻く環境変化について示唆している内容になります。
同記事を一部抜粋してみます。
出店数から閉店数を差し引いた店舗増加数がコロナ禍前を上回ったとのことですが、注目すべきは、年度末の店舗数が19年度末を上回りそうだということです。(これが全外食店の動きとなるかはわかりませんが、少なくとも主要各社の)店舗総数がコロナ禍前を上回るということは、外食ビジネスの総供給量がコロナ禍前以上になるかもしれないということです。日本が諸外国よりコロナ禍からの回復に後れをとっていると言われてきましたが、ここにきて遅れを取り戻しつつあるサインと見ることもできるかもしれません。
そのうえで、内容が以前とは異なると言えます。都心から郊外へ、店内飲食から店外飲食へという、トレンドをとらえてそれに適応した上でのコロナ禍前回復だと言えます。このトレンドをつくったきっかけはコロナ禍です。コロナ禍の社会制約と企業等の判断を受けて居住地選択の多様化が進み、さらに出社頻度が減ったため自宅やその周辺で飲食する機会が増えたことです。このトレンドは今後中長期的にも逆流しないと言われています。飲食店各社としては、この流れにさらに適応できるよう、戦略・計画をまとめて実行する必要があり、記事中の事例はその動きと見受けられます。
他方で、以前からこのトレンドがはまる業態を実現していた企業にとっては、脅威と捉える必要があるかもしれません。例えば、「ゆったりと落ち着いた空間」などをウリにしてきた郊外型カフェの代表格のコメダ珈琲店は、営業利益率が20%を超える高収益企業です。業界では注目されてきた企業です。
上記記事の動きは、「郊外型は、有望な市場ながら自社ではなかなか本格展開できない状態だった。しかし、コロナ禍の環境変化で参入障壁も下がり、いよいよ打って出ることになった」という流れだと表現できます。郊外出店や新たな業態の開発意欲の高まりは、例えば以前から郊外出店で成功していた企業にもとるべきアクションを迫ることにつながります。既存事業で自社の強みを研ぎ澄ませて不動の地位を守る、新たな事業機会を模索する、などです。
「Business Journal」のサイトを参照すると、次のような紹介があります。コロナ禍の最中に上記のような環境変化も想定したうえで、新たな事業開発に打って出ていたと言えるのかもしれません。他業界にとっても、参考になる視点だと思います。
同日の新聞紙面では、「東南ア、影薄まる日本 貿易額は中国の3分の1 投資蓄積なお優位」という記事も掲載されました。こちらも、一部抜粋してみます。
上記からは、以前圧倒的な地位にあった日本のアジアへの経済的影響力は、私たちが想像している以上に地盤沈下している現状が伺えます。そして、「ASEANにとって別格」という認識をリセットすべきという現実がある一方で、即興ではつくることのできない「信頼」というブランドの強みを今のうちに活用すべきだということを示唆しています。この例も、企業を取り巻く環境変化を察知して、とるべきアクションを考えるべきだと認識する例だと思います。
以上から、次のようにまとめてみます。
・地政学的な影響など景気に関する懸念要因はあるが、一方で、他国に遅れていた日本経済がウィズコロナに向けて回復基調に乗ってきた動きも見られる。自社を取り巻く市場環境を把握したうえで、商品・サービスの供給体制のあり方を検討する必要がある。
・しかし、お客様のニーズの変化が、求める業態を大きく変えている可能性もある。新たなニーズを取り込む業態を持ち得ていない場合は業態変化も考える必要がある。既に持ち得ている場合は、競合増加の可能性も自社戦略に反映させる必要がある。
・私たちが常識だと思っていたことは、環境が変わって想像以上の早さで非常識になっている可能性がある。認識のずれを起こさないよう、環境変化は継続的に観察する必要がある。
<まとめ>
自身や自社が気づいていないかもしれない前提で、自身・自社を取り巻く環境変化をよく観察する。
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