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キャリアの転機を考える

8月12日の日経新聞で、「駐在同行、キャリアも両立 業務委託で越境リモート」というタイトルの記事が掲載されました。海外駐在員となった配偶者に同行しながら、キャリア開拓をしている事例について取り上げた内容です。

同記事の一部を抜粋してみます。

共働き家庭で配偶者の海外赴任が決まると、同行するため勤務先を退職する人は少なくない。それでも、リモートワークの浸透が新たな働き方を可能とするなど、キャリアの選択肢は少しずつ広がりつつある。

米オハイオ州に住む片出麻依子さん(40)は、間もなく1歳になる長女を寝かしつけた後の午後9時ごろ、パソコンを開きチャットに打ち込んだ。日本は午前10時ごろ。日本国内の企業の事務や経理をオンラインで請け負う。フルリモート勤務で、通常は1日3時間ほど。

元々は日本で正社員として働いていた。印刷大手に新卒で就職し、福岡支社の企画部門に配属された。顧客と話し合いながら、マーケティング戦略を立てる仕事にやりがいを感じていた。10年目にはメンバー約10人をまとめるグループリーダーに昇進した。

その翌年の2019年、別の会社に勤務し、米国から帰国し東京で働いていた夫と結婚。会社と相談し、東京の部署に転勤させてもらった。新天地に慣れてきたと思い始めていた同年秋ごろ、夫に再び米国赴任の辞令が出た。当面東京で暮らすと考えていた夫婦にとって、想定外の辞令だった。

海外旅行が好きで移住に抵抗はない。夫と一緒に過ごし、できれば子どももほしい。一方で「今まで積み上げてきた自分のキャリアを途切れさせたくない」とも感じた。同行するなら退職しかない。転勤などで配慮してくれた勤務先には心苦しかったが、決意を固め仕事を探し始めた。

米国で就職先がすぐに見つかる保証はなく、自身の語学力がビジネスで使えるかどうかもわからない。日本にいる間に仕事を見つけようと、検索サイトで「海外」「仕事」「駐在」などの言葉を打ち込んだ。日本の会社に勤務し、海外で仕事をする方法はないか模索したが、思い描く仕事は見つからなかった。

ただ、探していく中で個人で業務委託契約を結んで働く、という方法があることを知った。オンラインで経理や事務を受注する会社があり、その会社の委託先として選ばれれば仕事が割り振られる。

「会社員としての経験を生かした仕事ができそう」

海外で働くイメージが鮮明になっていった。夫も賛成してくれた。履歴書や志望動機を準備して選考に臨み、20年4月に業務委託先に選ばれた。

現在、片出さんは企業7社から仕事を請け負い、日本人スタッフ数十人に仕事を配分したり納品前のチェックをしたりする「ディレクター」として働く。海外にいる日本人も含めてチームを組むことも多い。

「色々な業界のことを知ることができるのは楽しい」

メンバーをまとめた前職の経験も生かすことができ、仕事は充実している。米国で生活する中で、日本人と日本語でビジネスについての話ができる環境も良い息抜きだ。

海外勤務に同行している知り合いの女性の中には、夫の勤務先や、ビザの都合などで仕事を諦めた人もいる。働くことができる自分は幸運だったと思いつつ「駐在員の配偶者は経歴もスキルも高い人がいる。人材を活用できる仕組みがさらに整ってほしい」と願う。

夫がいつまで米国で働くのか、見通しがはっきりしているわけではない。だが、どのようなかたちでもキャリアを続けたいと考えている。「帰国や他国への駐在など選択肢は様々あるが、子育てと両立しながら柔軟に仕事を続けることが当面の目標」と話す。

リモートワークによって場所を問わない働き方も浸透してきました。また、正社員/パート・アルバイトといった区分だけではなく、その中間のような雇用形態や、業務委託のような形態も広がっています。

同事例のように、場所や勤務形態を問わない働き方は、今後さらに増えていくのではないかと想定されます。

同記事からは、2つのことを感じました。ひとつは、改めて、キャリアのあり方は一様ではなく人それぞれだということです。

配偶者への同行という他律的な要因によって他国にわたり、その先で新たなキャリアを開拓していくのは、なかなかできないことだと思います(私などでは、できるイメージがまったくわかないです)。素晴らしいキャリア形成だと思います。

他方で、日本に残って現職を当面続けるのも、他国で家業に専念するのもキャリアの選択です。どれがよい悪いではなく、自分にとって何を選択し実行するのが適していると考えるかがテーマだと思います。

同事例の場合は、配偶者の海外赴任が、キャリアの大きな転機になったようです。キャリアの転機は、ひとそれぞれに、それぞれの形で起こり得ます。キャリアの転機にあたって、何を優先させて何をとるのか、自身のキャリア観を固めておくことの必要性が感じられます。

なお、キャリアの多様性という意味では、同事例と逆の事例もあってよいと思います。すなわち、妻の海外駐在に夫が同行するという構図です。

「配偶者の海外赴任が決まると、同行するため勤務先を退職」という事象は、そのほとんどが夫の駐在に妻が同行する構図です。キャリアの多様性の観点からは、その逆パターンもありです。

もうひとつは、元の勤務先での勤続という選択肢はあったのだろうかという点です。

会社側にも事情があります。個人の都合を受け入れて東京赴任とした後で、すぐにまた新しい人事発令をするなどは難しく、限界もあることと想像します。そのうえで、大手であり東京の部署への転勤の相談に応じるなど理解もあり、従業員の多様性を受け入れる基盤もある程度ありそうな会社でもありそうだと想像します。

同記事の様子からは、成果も上げていて、元の勤務先に合っている印象です。おそらくは、会社側としてもできればそのまま残ってほしかったのではないかと想像します。リモートワークや業務委託など、働き方の何かを変えることで勤続するという選択肢も、人によってはありかもしれないと思います(そうした可能性も模索したうえでの、退職という選択だったかもしれませんが)。

いずれにしても、労働力人口がさらに減っていく今後の環境下では、個人としても自身のキャリアを最大限活用できる方法を模索する、組織としても多様な人材を最大限活用できる方向を模索する。双方の取り組みがさらに必要になっていくと考えます。

<まとめ>
キャリアの転機にあたって、何を優先させて何をとるのか、自身のキャリア観を固めておく。


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