8月21日の日経新聞で、「ドイツ中小は隠れたチャンピオン、「外弁慶」で日本と差」というタイトルの記事が掲載されました。「家族経営」「非上場」「地域密着」と、日本の中小企業と共通点が多いながら、グローバル展開でドイツには有力な中小企業が多いということを紹介した内容です。
同記事の一部を抜粋してみます。
日本では、創業者の家族や親族が株を握ったり、経営を担ったりする企業は「同族企業」と言われて、ネガティブに見られる場面も散見されます。しかし、世界的に「ファミリービジネス」と呼ばれるこの形態は、決してネガティブに見られているわけではありません。
世界の企業の80~90%、つまりは圧倒的多数が同族経営で、各国の経済で重要な役割を果たしているとも言われています。例えば、世界的企業のBMW、ウォルマート、フォルクスワーゲンなどは、長く続くファミリービジネスです。
同族企業のメリットはいつくか挙げられますが、同記事の内容も参考にしながら、ここでは下記の3つを取り上げてみます。
1.長期的な視点で経営できる
同族企業は、上場企業にありがちな「これまでの実績から、経営者の任期はだいたい3年程度」のようなことがなく、長期政権が前提です。よって、短期的な利益の追求とは一線を画して、20年や30年先を見据えた長期的な投資がしやすくなります。
2.迅速な意思決定ができる
経営陣でのコミュニケーションがスムーズなため、意思決定が迅速に行われやすくなり、市場の変化への柔軟な対応が可能になります。同記事中の企業は、このことによる長所を生かした企業戦略を実践した例だと言えそうです。
3.文化や価値観の共有がしやすい
経営理念や会社の価値観が経営陣で共有されやすく、一貫した企業文化が形成されやすくなります。このことによって、従業員全体が同じ目標に向かってまとまりやすくなります。
また、経営者の親族が後を継ぐ場合は、いわゆる帝王学による育成が可能になります。自営業者の子供は自営業者、芸能人の子供は芸能人としての資質を幼少時代から学ぶがごとく、幼少時代から経営者の背中を見て学んだ人材は、その企業を率いる資質を磨く上でやはり優位です。
そして、一族が育ててきた事業を将来にわたり継続させたいというモチベーションは、雇われ経営者に比べると比較にならないほど強力になり得る潜在力を秘めています。
一方で、諸刃の剣でもあります。内向き文化を育ててしまったならば、ガバナンスがきかないまま浅い経営判断がそのまま最後まで実践貫徹され、経営を傾かせてしまうリスクも大きいと言えます。
同記事の例のように、「売れる商品を開発し、売れるところで(=ニーズのある相手に対して)売る」というマーケティングの原理原則に徹することができたときに、上記3つが強みとなって爆発的な潜在力を発揮できるのではないかと思います。
中小企業・同族企業はその可能性にもっと気づくべきだという、ドイツ企業の示唆は、参考にするべきものが多いのではないかと思います。
<まとめ>
売れる商品を開発し、売れるところで売る。