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会社清算から1年で、新たに3社起業できた理由

株式会社ATOUNの特別清算を臨時株主総会で決議した日(4月30日)から、1年が経ちました。

ATOUNは、私が19年間経営していたロボットメーカーです。大手電機メーカーの子会社として2003年に創業して以来、“あうんの呼吸で動くロボットを着よう “というビジョンのもとで着用型のロボットを独自に開発し、新たな市場の創造に取り組んできました。

2021年での業界のシェアは売り上げベースで60%とトップシェアに達し、創業以来最高の売り上げを記録。従業員も30人を超えていました。しかし、世界中を飲み込んだコロナ禍の影響をどうしても避けることができず、2022年の初頭に事業撤退の判断をすることになったのです。

会社清算のニュースがさまざまなメディアで報じられたこともあり、当時は多くの方から心配の声をいただきました。「ゆっくりしたほうがいいということだよ」「休んだほうがいい」「無理をしないほうがいい」といったアドバイスもたくさんいただきましたし、私自身も「そういうものかもしれないな」と感じてもいました。

でも、そう思いつつも、実際には立ち止まることはほとんどなく、廃業してまもなくの2022年5月には、新しい会社「株式会社SHIN-JIGEN」を立ち上げました。

別に意地になったわけでもなければ、無理をしたつもりもありません。
私にとってはそれがごく自然な成り行きだったのです。

そして、気がつけば、この1年で(SHIN-JIGENを含めて)新たに3社の企業を立ち上げていました。その3社は、つぎのものです。

株式会社SHIN-JIGEN(2022年5月創業)
ロボティクスにもとづく人間拡張・人間扶助のテクノロジーを駆使して、日々の暮らしやビジネスシーン、福祉生活にイノベーションを起こし、「新次元」へと押しあげていくためのサポートや技術支援、事業プロデュースなどを行う企業。自動車に使われるスチールチエインで世界一の業績を誇る株式会社椿本チエインとの「ヒューマンアシスト事業」の協業をはじめ、大学の研究成果の社会実装支援や、スタートアップの経営支援などにも取り組んでいます。

SHIN-JIGEN | 行こう、 未来が呼んでいる。

株式会社Thinker(2022年8月創業)
大阪大学大学院基礎工学研究科の小山佳祐助教が10年に渡って取り組んできた「近接覚センサー」の社会実装を担うスタートアップ。「近接覚センサー」は、「触らずにモノの位置や形状をセンシング」できる画期的な技術です。これがあれば、ロボットハンドはみずから対象を感じ取って思考し、判断するようになり、さまざまな領域に革新が起こって、ロボットのあり方が変わると私は考えています。2022年9月には、大阪大学ベンチャーキャピタルから1億円の資金調達を実施し、現在は、2023年夏の量産化に向けて開発および実証試験に取り組んでいます。

株式会社Thinker (thinker-robotics.co.jp)

株式会社MOMOCI(2023年2月創業)
「ロボティクスの力で健康な100歳を増やす」をビジョンに掲げ、テクノロジー目線で認知症の予防や健康寿命の延伸に取り組むスタートアップ。認知症の前段階といわれる「軽度認知障害(MCI)」に注目し、高齢者に寄り添いながら、研究者や専門家と連携しつつ、科学に基づいたライフスタイルプログラムやロボットエクササイズ機器を提供することで、健康状態の維持や改善を支援します。

MOMOCI - 株式会社MOMOCI

「企業や事業の支援」「ロボットハンドの革新」「認知症の予防」──。

3社の事業領域は、この3つです。ベースにテクノロジーがあるとはいえ、用いる技術自体は同じではなく、一見すると必ずしも関係する領域の事業ではなさそうにも思えます。実際に私自身、事業間のシナジーを起点にして、事業を構想したわけではありませんでした。

しかし、あるとき、この3社の立ち上げには、共通しているものがあることに気がつきました。それは自分の「妄想」がベースになっていることです。

もちろん「妄想」といってもいろいろありますが、私の場合は「こういう社会になったらもっとみんな幸せになるのに」「こういう未来が来ると人間はもっと自由に生きれるようになるのに」という「未来の妄想」です。

子供の頃からSF好きだったせいもあるのかもしれませんが、私はいつもどこかで未来を妄想しています。それは会社の清算が決まったときも、清算手続きが済んでからも同じでした。

そして、その妄想が進んで、自分の中で未来像がどんどん具体的になってくると、どうしてもそれを現実に見てみたくなります。そのためには、いまの社会にどんなことが必要だろうか。なにから始めれば、その未来像に到達できるだろうか──いわば「バックキャスト思考」ですが、そんなふうに考えるうちに、自然な流れとして、事業を立ち上げるしかないなと思ってしまうのです。

ですから、先ほども書いたように、たしかに1年前は逆境に置かれていたとは思いますが、別にそこで無理をして次の一歩を踏み出したわけではありません。

実現したい未来の社会像が明確に自分の中にあると、やるべきことがおのずとはっきりします。そのせいで立ち止まる理由がなかったのです。

つまり、再挑戦の原動力は未来像の妄想にあったということ。

もはや、私の性分のようなものですから、このスタンスはきっと変わらないでしょう。
これからも思う存分、未来を妄想して、新たな挑戦を続けていきたいと思っています。

「行こう、未来が呼んでいる。」

これからも応援のほど、よろしくお願いいたします。


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