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余談の雑談「うどん妻」

脱線します

脚本家が普段、書きながらなにを考えているか、
そんなことを綴る『脚本家の余談』ですが
今回は脱線させてください。
ほんとにどうしようもない雑談です。
ですのでタメにはなりません。

タイトルだけがある小説

藤咲「タイトルだけがあって、中身がまったくできてない小説があるんだ」

僕の知り合いならだいたい聞いている話がこの『うどん妻』なる
謎の小説作品である。

タイトルはある。
もちろん中身はまだない。
だがタイトルがタイトルなだけに皆こう想像する。

善通寺市にあるちいさなうどん屋。
そこには近所で評判のおかみがいた。
みな彼女に会いにそこにうどんを食べに来るのだ。
だが彼女の正体は実は――。

みたいな感じである。

若干、官能小説の匂いがしなくもない。

うどんづまの肌はまるでコシのあるさぬきうどんのようである。
つるっとした肌触りで押せばぷるんと戻ってくるような弾力がある。
そして歯で噛むと、押し返すような抵抗をしたかと思うと、すーっと歯が入っていく。

――みたいなイメージもあるだろう。

正直な話、タイトルだけがあるので中身はまったくない。
ほんとの話である。

作家ならこうした思いつきで書きはじめて物語のひとつやふたつ作れなくてはならない。

そしてこのタイトルだけがあった『うどん妻』。

実は一度だけ日の目を見る機会が訪れようとしたことがあった。
ある低予算実写映画の企画の中で、劇中劇として使われるというものだ。

簡単にいってしまうとこの『うどん妻』なる映画を作るスタッフたちの物語である。
当然『うどん妻』のシナリオは存在する前提で描かれる。

このときの劇中劇『うどん妻』、実はハードボイルドな内容であり、
現実と虚構が入り混じり、劇中劇がいつしか現実との境界を失っていく
そんな物語だ。

そのプロットが残っていた。
2015年作成となっています。

プロット

(過去の話)海辺で倒れているシオリ(濡れたドレス姿)、目を覚まして。腹が減っている。
(過去の話)目の前にあるうどん屋の暖簾をくぐったところで時間が飛んで――。
その饂飩屋。店主からサミット爆破の指示とバッグに入った爆弾を渡される。
定期連絡を入れるようにと指示される。無視したら逃亡。殺し屋が向かういつものルール。
動いている爆弾。カウントダウンがはじまっていて。現れる白い帽子の少女。シオリが見ると消えてしまう。
爆破の準備に高松市内に向かうシオリ。それを追う謎の男の登場。
饂飩が食べたいという欲求も疼いていた。『最後の晩餐』。それがシオリのルールなのだろうか。
(交差)店Aでうどんを食べようと入るシオリ。もううどんが出てきて。?となるシオリ。罠かと警戒。
(交差)ふと現れた白い帽子の女(顔見えず)、「あなたの秘密を知ってる」とつぶやいて走りだす。
(交差)追うシオリ。白い帽子の女は消えて。店Aに戻るとバッグが消えていて。
爆弾の行方を探すシオリ。だが見つからず。任務に失敗したら死――。代わりの爆弾を探しに。
自分にノウハウを教えてくれた師匠(初めての男)の元へ。そこもうどん屋。
お前ははめられたんだと告げられるシオリ。融通の利かない爆弾魔は不要。時代は代わったと。
組織は俺達を捨てた。最後の晩餐といこう。あの夜のように――とラブロマンス風。
ふたりで粉まみれになりながら饂飩を打つ。最後の麺が完成したところで気配。
殺し屋たちの激しい銃撃、うどん屋の外から浴びせられて。シオリを逃がす師匠。「生きろ!」と言われて。
シオリ、復讐を誓う。誰のしわざでこうなったのか? すべてはあのバッグが消えたところから始まった。
(交差)バッグを見かけるシオリ。別の女が持っていた。女は車で移動。わずかな手がかりを探すシオリ。
(交差)女優・C織であることを知る。あいつから全てを、人生を奪ってやると復讐に燃えるシオリ。
男を使ってC織のスキャンダル。降板。なにもかも失ったC織を見て微笑むシオリ。
橋の上での対決。もみ合い。そしてふたりとも海へと落ちて――。
残された爆弾の入ったバッグ。それを拾い上げる白い帽子の女。顔をあげるとそれは三人目のShiori。
(過去の話)海辺で倒れているシオリ(濡れたドレス姿)、目を覚まして。腹が減っている。
(過去の話)目の前にあるうどん屋の暖簾をくぐったところで時間が飛んで――。
END

――という話を撮っている映画スタッフがただひたすら温泉宿で
てめえの映画なんか撮れるか!
と監督のせいだ、とかプロデューサーのせいだとかなるメタ構造の物語である。

どこかで聞いたことのある手つきの物語ではありますが、
当時この企画が立ち上がろうとしていたときの合宿で同席していたある映画監督の影響が大きいことは言うまでもない。
この劇中劇だけは真剣に書いてもいいかなと思ったりもした。

企画書のキャッチコピーには

「夢」なれど「現」

と書いてあった。
書いたのは自分だが。

更に映画のタイトルは『喰えない女』だったりする。

もうボツネタなので晒してもいいかなと思い晒している。

もしこの企画というか『うどん妻』が読んでみたいと思う方がいれば
ご相談ください。

まじめに書いてみます。

たぶん香川県でしか売れないと思いますが、
場合によったらロケーションを武蔵村山市に変えて
村山うどんを軸にしても構いません。

なんでしたら稲庭でも、水沢でも――。
小豆島の素麺でも構いません。
そう言えば小豆島には釜揚げ素麺なる食べ方があり
一口ごとに味が変わっていく様を楽しんでいくのだとか――、
話がそれました。

書き下ろし小説で出してもいいです。
香川県のうどん屋さんに置いてもらえれば、通算200部くらいいけるんじゃないでしょうか。

以上、余談の雑談でした。


サポートしていただけることで自信に繋がります。自分の経験を通じて皆様のお力になれればと思います。