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余談「Story Cubesで創作してみる」

Story Cubes

以前、このnoteでStory Cubesについて触れたことがあった。

9つのダイス、それぞれの面に簡単な絵が描かれており、
それを繋いで物語を創作していくというものだ。
瞬発力で物語を紡いでいくトレーニングになるので頭のストレッチのような感覚で普段は使っている。

今回はここから物語をもう少し考えて作っていく、
つまり、アイデアを発展させていく形で活用してみたい。
以前に書いた「コンセプト」と「テーマ」、そこから生まれる「設定」を形にしてみるシミュレーションである。

今回、Story Cubesのベーシックダイスを振ってみた結果、以下の絵が出た。

Story Cubes イメージ

・炎
・流れ星
・懐中電灯
・電気
・鍵穴
・蜂
・矢印
・虫眼鏡
・虹

――と捉えていいかもしれない。

だいたいStory Cubesをやると、旅人を主人公に仕立てて出会ったダイスの物事を題材にイベントをこなし、ラストはぼんやりした結末になるのがいつものことなのだけれど、今回はある程度、構成を考える。

コンセプト、テーマ、設定の考え方


まずは物語のコンセプトを決める。
なにかを探す物語、例えば探偵ものとして考えてみる。
ただの探偵ものではなく、命を狙われているというサスペンス風の物語に仕立ててみよう。

次にテーマは、家族愛のようなもの。

そして設定として、
主人公は中年の探偵でバツイチ。中学生の娘がいるとしたいので40代前半。
探偵といっても危険なことはせず、盗聴器の洗い出しや、浮気調査の張り込みのようなものをする割とよくある探偵とする。
探偵になる前は警察官としておく。そのために刑事たちに知り合いがいる。
危ない橋は渡らない。
娘からは心配されている。娘はしっかりものがいいかもしれない。
きっと家事選択全般をしてくれるよくできた娘で、父親の下着もあまり嫌がらず洗う。きっとよれよれになった下着に文句を言っていると思う。
父親は父親で娘に頭が上がらない。
奥さんは娘が小さなころ、病気で亡くなった。
一応、アパート暮らしでそこの大家がなにかと面倒見てくれている。
酒もタバコもやらない。酒は弱いほうだ。
背だけがひょろりと高く、目立つために探偵にはたぶん向いてない。
それで探偵にしがみついているのは、亡くなった奥さんが探偵小説などが好きだったからだろう。

探偵にしたことでなにかを探すという主人公になったが本当に探すべきは事件ではなく家族との繋がりになればいい。
娘はしっかりもので父親を見ているが、探偵からすればとてもすまなく思っていて、これでいいのかと考えてもいる。
この先、進学だなんだとお金のかかるところに来て、依頼された事件に成功すればかなりの高額報酬が約束されることになる。
これが事件のトリガーとなる……。

――みたいなところまで設定はできた。

設定というのは履歴書ではない。
こうした具体的な物語の方向性を見ながら決めるものであると思ってもらえれば。


ではここからは具体的な物語の展開について考えてみる。

提示されているダイスの条件をどう捉えるか。
大金の転がり込むような事件。
かなり危ない橋を渡ることになると思う。
「蜂」というダイスはかなりメッセージ性が強く、これを中心に据えておきたい。
「虹」についてはラストシーンに使えたらいいなと思う。
「虫眼鏡」は探偵の象徴。
「鍵穴」も同じく、ピッキングなどして侵入しないといけない場面が想定される。
「懐中電灯」も同じく暗い夜の倉庫への潜入などがイメージできる。
「流れ星」もキーワードとして使えるかもしれない。
「電球」は重要なガジェットであり、「矢印」は記号ではなく「弓矢」、例えば「ボーガンの矢」であり、探偵の命が狙われるときに使ってみようか?

思いついた物語のイメージ


女王蜂の描かれたカードが添えられた依頼状が探偵の元に舞い込む。
差出人は不明。
ただ準備金として100万ほどが同封されていた。
不当な理由で奪われた荷物を取り戻してほしいという依頼だった。
泥棒まがいの仕事である。
探偵は悩む。
本来なら受けるべき仕事ではない。
ただ今は金が欲しかった――。

自宅のアパートに帰ると中学三年になる娘が制服姿にエプロンをつけて夕食の準備をしていた。片手に教科書を見ながらカレーを煮込んでいる。
今年受験生であり、父親の稼ぎを考えて公立校狙いだと言っている。
探偵には出来すぎの娘である。
探偵は亡き妻の墓前に手を合わせようと部屋に入ると電球が切れていた。
「買ってきてって頼んだでしょう?」
「ごめん、忘れてた」
と娘に謝る探偵。
そして亡き妻の墓前に手を合わせて決意表明。
「危ない橋を渡るなって遺言だったけど、……すまん」
更に娘には、
「お前の行きたいところにいっていいんだ」
「だったら探偵やめてよ」
「……それは無理だ。母さんが好きだった仕事だし」
「今よりお金なくてもいいから。高校出たら私もバイト始めるし、自分のことは自分でやるって」
――と言われてしまい、娘には頭が上がらない。

探偵は女王蜂の描かれたカードにあった連絡先:メールアドレスにメールを入れる。

依頼を引き受けます。

するとすぐに返信があった。
回収してほしい荷物のある場所と、そこまでの侵入経路だ。
かなり具体的であり、道具なども現地に隠されているという。

危ない橋を渡ることに変わりはないが、依頼者も仕事を確実にしたいのだろうと探偵は考える。

そして数日後の深夜、指定された倉庫へ潜入を開始する。
娘には内緒ででかけてきた。
ハリガネとドライバーで鍵穴をピッキング。
中は暗く似たような荷物が置かれている。
どうやら出荷される電球が詰まった荷物らしい。
マグライト(懐中電灯)の明かりを頼りに中を探る。
その荷物に番号が書かれており、指定された番号を探す。
それは程なく見つかった。
やはり電球の入った箱だった。
「こんなものを回収?」
疑問に思いながらも、その電球の箱を開けると中には3つだけ電球の小箱が入っていた。それをコートのポケットにしまい回収する。
(ここで探偵の癖としてなんでもポケットにいれてしまうというアイデアを思いつく)

回収した荷物は明日、届ければいい。

探偵はほっとし、コンビニでアパートの電球をひとつ買い、家へと向かう。
既に外は明るくなっていた。

いつの間にか家に帰ってきて寝ている探偵をよそに、娘が学校に向かう準備をしている。
その中で探偵が脱いだ服から洗濯物を抜き取っていく。
コートのポケットにはいった電球をいくつかみつけて
「ひとつでいいのに」と言いながら、そのうちのひとつを取り出し、部屋の電球と取り替えて、電球の空箱に切れた電球をいれて、分けておく。
「学校いってくるから」と学校に出かける。
探偵は生返事のまま。

スマホの呼び出し音で目を覚ました探偵。
依頼主からのメール。
回収した荷物を指定された場所に持ってくるように依頼される。
駅のコインロッカーでダイヤル式の鍵がついているものだ。
探偵は指定されたコインロッカーに電球を3つ入れ、指定された番号を登録して鍵をかける。
これで依頼は完了だ。
あとは残りの金が振り込まれるのを待つだけで良かった。

多少、法を犯したこともあり、胸はいたんだが大騒ぎするようなものを盗ったわけではない。
すぐに忘れようと探偵は思うだった。

その夜、探偵は酒を飲んだ。
仕事のことを忘れるために。
刑事時代の仲間と再会しての呑みとなった。
昔話とか出たり。
これから警備に駆り出されて飲めなくなるからなとボヤく旧友の刑事。
選挙が近くそのテロ対策らしい。噂じゃ襲撃が予想されてるそうだとか。
探偵の俺は関係ないよと探偵。

酔っ払って家に帰ると、部屋の中が荒らされていた。
一気に酔いが覚める探偵。
そして机の上に置かれた書き置き。

「残りの荷物を今夜◯◯にもってこい。娘は預かった。 流れ星

「なんだよ、それ!」となる探偵。
そして流れ星というワードを見て刑事時代の事件が頭をよぎる。
凶悪犯の殺し屋として流れ星という人物がいたことを。
ボウガンを使って人を殺すという話だった。
まさかそんな刑事ドラマみたいなやつがいるわけない――とそのときは思っていたが、そいつはいた。

残りの荷物ってなんだ?
刑事は混乱した。
すべての荷物=電球は3つ持っていってコインロッカーにいれた。
残りなんてない。
どこに?

娘を助けたいが、荷物はなにかがわからない。
電球を盗んだだけなのに……。

考える探偵。
祈るような気持ちで亡き妻の墓前に手を合わせようと部屋に入り、無意識に電気をつけると部屋が明るくなって。
「!」
見ると真新しい電球が探偵を照らしていた。
そして床に投影される文字のようなもの。
それは恐ろしいテロ計画のことが書かれた文書の一部のようであった。
(電球だからかなりボケてしまうので気づく程度)

娘が交換していたのだ。
急いで電球を外し、文字を見るとガラス面にそれが彫られている。

娘を取り戻せば、ここに書かれていることが現実に起こるかもしれない。
それは許していいのか。

世界の平和か、娘の命か。
選択を迫られる探偵。
電球を手に指定された場所に急ぐ探偵。
探偵は娘の命を優先した。

シーズンオフのキャンプ場。
止められたキャンピングカーが一台。
探偵が運転する車がやってきて。
声だけが聞こえる。

そして決着のとき。
探偵は声に従い、電球をキャンピングカーの中へと置く。
その中に娘はいた。
ぐったりとしているが傷はない。眠らされているだけだろう。
もう探偵なんてやめて普通に働こう。
娘とふたり、幸せにいきていけたらそれでいいみたいなことを思う探偵。
娘に声をかけるが眠ったまま。

流れ星の声がする。
「お前、見たんだろう?」
「見たくはなかったがな」
探偵、声のほうにマグライトを向ける。
そこにはボウガンを構えた流れ星がいた。
探偵の危機。
ボウガンの矢が探偵に向けられようとしたそのとき、強い明かりが流れ星を照らす。
「動くな、警察だ!」という声。

ここに来る前に探偵が旧友に連絡を取っていたのだった。
無事、娘を助けることができた探偵。
その後、不法侵入に問われてかなり絞られることとなる。
電球は3つ合わせてひとつのテロ計画が浮かび上がるもので、それが実現していたら相当やばいことになっていたらしい。
そうしたこともあって、事件はとりあえずなかったことにされる。

警察署を出てくると、娘が待っていて。
探偵をやめるという父親に
「元気でいてくれたらなんだっていいよ。お父さんはお父さんだし」
見ると空にはがあって。
新しい人生、仕切り直すのを亡き妻が歓迎していてくれるのかもなと思う探偵……、元探偵であった。

――という物語がなんとなく思い浮かんだ。

まとめ

今回、ダイスを振ったのが22時15分。
物語をまとめ終わったのが23時30分なのでだいたい一時間とちょっとは物語を考えていたことになる。
割と安易な物語なのでもう少しひねったり、電球のギミックなどもう少し考える余地はある。
ストレッチなのでこんな感じでもいいかとは思うけれど、ちゃんと考えるなら危機的状況に追い込まれる部分や、ラストの逆転要素を揉み込みたいところ。

物語を考えるには「コンセプト」「テーマ」「設定」をどう考え繋いでいくかをとりあえず実践してみました。

ということで本日の余談はここまで。
次回の余談をお楽しみに――!

追記:
後から見返して「」忘れてることに気づきました。
失礼。
















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