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令和のマイホームの建て方 no2

~プロが教える土地の購入から注文住宅を建てるまで~


前回は、プロを活用するべき理由「住宅ローンの複雑性」についてお話しをしました。今回は見えないコストについてお話しをしていきたいと思います。

「土地購入時の見えないコスト」


土地を買って注文住宅を建てる場合、なぜプロの助けが必要か?

先に述べた住宅ローンの複雑さに加えて、土地を購入する時に「見えないコスト」が発生する場合があるからです。

住宅ローンを組む時には、当然ですがまず予算を決めなければなりません。

土地を買って注文住宅を立てる場合には、「土地の値段+建築費」が総予算のほとんどを占めます。
そのうち、土地の値段については一見すると分かりやすいように思えます。

何しろ売りに出されている土地には、値段がついているのですから。

ところが家を建てる場合には、この表に出ている値段だけでは収まらないケースがままあるのです。

例えば、地盤が悪い場合。

家を建てる場合にはまず、「直接基礎」を打ちます。しかし土地が軟弱で直接基礎を据えられない場合には、地盤改良工事が必要となります。

地盤改良工事には「表層改良工法」、「柱状改良工法」、「鋼管杭工法」の3種類があり、それぞれ費用が異なります。

土地の値段にはこの地盤改良工事費用は含まれていませんので、家を建てる買い手側が負担しなければなりません。

また購入予定の土地に古屋が残されている場合には、解体費用が発生します。

売りに出されている土地には「整地済み」のものだけではなく、「古屋あり」の物件もあるからです。
この古屋を解体・整地するための必要は、おおよそ坪単価3~4万円ほど。一般的な木造住宅なら200万~250万円ほどのコストがかかります。

そしてさらに、もしこの古屋にアスベストが含まれている場合、解体費用がさらにかさんでしまいます。
アスベスト解体費用の目安は、一般的な住宅の場合は一平方メートルあたり2万円~8.5万円。これは解体の難易度によって異なり、通常の解体費用に上乗せして請求されます。

古屋ありの土地は一般的な相場よりも値段が安く設定されていることがほとんどですが、こうした解体費用を見越した上で購入しなければなりません。

問題なのは、地盤改良工事やアスベストの有無は調べてみないと分からないということです。
そのため土地の購入契約前に、正確な費用を割り出すことは難しい。

しかし、ある程度の予測は可能です。

地盤については敷地の高低差や、お隣さんとの高さを確認することで、地盤工事が必要かどうかを見極めることが可能です。
古屋が残されている場合は業者に見積もりを出してもらうこともできますし、アスベストの有無は1975年に規制が始まって2006年には全面禁止となっていますから、これもある程度の予測は可能です。

ただそれらはあくまでもプロであれば、という条件付きであることは言うまでもないでしょう。
初めて土地を買う人が、こうした見えないコストについて事前に把握するのはかなり難しいのではないでしょうか。

さらにややこしいのは、境界線と境界ブロックにまつわる問題です。

土地と土地の境目を示す境界線。その境界線上に据えられるのが境界ブロックですが、この境界ブロックは設置が義務付けられているわけではありません。

そのため、この境界ブロックが後々、問題となることがあるのです。

「①はじめに:なぜプロの助けが必要か?」で取り上げたご夫婦の案件が、まさにそういったケースでした。

まず、こちらの図をご覧ください。

このご夫婦が購入された土地は、三方が境界ブロックで囲まれていました。少し前は境界線の中心に入っていることもあるのですが、これらの境界ブロックは境界線の中心ではなく、それぞれの土地の内側に入っている状態でした。

さらに詳しく見てみると、境界ブロックだけではなくお隣さんの雨樋もこちらにはみ出しています(図K6)。

もちろん土地購入の前にこうしたことは判明できるのですが、ただだからといってすぐに境界ブロックや雨樋のはみ出しを解消できるわけではありません。せいぜい覚書で、これから建て替えるときには越境しないでください、というお願いをするくらいでしょうか。

そして実際にこのくらいの越境であれば、普段の生活で大きな問題が生じるわけではありません。

ただ新築の確認申請を出す際には、雨樋の越境分を差し引いた敷地面積で計算しないと審査が通らないため、ちょっとモヤモヤしてしまうかもしれません。

このご夫婦の場合は敷地に余裕があったので問題ありませんでしたが、建ぺい率がギリギリだとシビアな話になるでしょう。

また、ブロック塀の高さも気にしなくてはなりません。

建築基準法では、1.2mを超えるブロック塀には風や地震で倒れないようにするための控え壁を塀の長さ3.4mごとに設置しなければなりません。

先の図の写真では、ブロック塀の手前部分は道路から入る駐車場のスペースで少し坂になっています。そのためその部分だけ1.2mをわずかに超えてしまっていました。

とはいえ、そこは隣地のブロックなので基本的には問題ないのですが、写真奥のブロックの部分はこちら側に少しだけ入り込んでいるのです(図K1)。

越境して入り込んでいる部分は控え壁をつけないといけないのか?と思いきや、そこは手前とは逆に勾配で土地が上がっているため、1.2m以下でセーフという…。

最終的には境界ブロックも問題なく、結果オーライではあったのですが、もしこれが1.2mを超えていたら?

土地を購入後、境界ブロックが1.2mを超えていて、しかもそれが自分の土地に入り込んでしまっているのが判明した場合でも、お隣さんのブロックをこちらが勝手にいじるわけにはいきません。自分の敷地内に改めてブロック塀を設置しなければならなくなります。当然、その分のコストが余分にかかってしまうわけです。

実は土地購入にまつわるこういった話は、珍しくないのです。

不動産屋は不動産屋、建築家は建築家という具合に、お互いがそれぞれの領域を踏み越えないようにしているために起こりがちな問題とも言えます。

不動産屋さんならこうした問題も、重要事項説明にしっかり記載します。そして建築屋さんはその重要事項説明から工事費用を見積もります。

でも、プロではない一般の人がそうした事情を先読みして、土地の見えないコストを見積もるのはかなり難しいのではないでしょうか。

事前に地盤改良工事や境界ブロック用に追加のコストがかかることが分かるならば、その土地を買わないという判断も下すことができます。

もしどうしてもその土地に家を建てたいなら、追加分の予算を住宅ローンに含めることも可能ですが、それも絶対確実というわけでもありません。

前項でも説明しましたが、土地を購入する前に住宅ローンの審査が入ります。



土地購入の契約をした後に建物分の審査をする場合(前項、『土地購入+注文住宅の流れと住宅ローンの組み方チャート図』のK銀行を参照)、返済比率に問題がなければ「住宅ローン確認追加本審査」で土地購入で追加で必要になった分の資金も加えることができます。

ところが、同チャート図の「ネット銀行S」のケースのように、最初の審査に住宅分の契約(建物請負契約)も含まれる場合は、追加費用分の借り入れはできなくなってしまうのです。

I工務店さんでも担当者によっては、最初に土地をしっかり確認して必要な予算を予測してくれますが、新人の担当では「見えないコスト」が予測できないことも大いにありえます。

もしそうなったとしても、建築会社が責任を負うなんてことはしません

土地の「見えないコスト」のために、泣く泣く住宅のオプションやこだわりたかった部分を諦めなくてはならない、ということも十分に有り得るわけです。

予算を組むときには土地と建物は常にセットで考えることがマストですが、「見えないコスト」まで予測することは決して簡単なことではないのです。

自分の予算内でしっかりと家を建てるためには、土地の購入ひとつとっても、やはりプロの助けを借りるべきなのです。

次回は様々な問題が起こる原因である「業界側と消費者側の情報ギャップ」についてお話ししたいと思います。よろしければ❤️お願いいたします。



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