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令和のマイホームの建て方no8(契約時に確認すること)

~プロが教える土地の購入から注文住宅を建てるまで~
夢のマイホームまでのステップ5:契約時に確認すべきこと

自分にピッタリの土地を見つけ、家の工法・スペックとともに建築会社も決まり、住宅ローンにも目処がついたら、いよいよ契約へと進みます。

ここまでの道のりが長かったので、契約までたどりつけると、どうしてもホッとして気も緩んでしまうもの。
しかし、契約時に担当者の話を右から左に聞き流して判子を押してはいけません。

不動産に限らず、契約は全て条件に基づいています。

売り手は商品やサービスの具体的な内容、価格、納期などの条件を提示します。
買い手がその条件に納得したなら合意に至るわけですが、支払いなどの条件に従う義務も負います。条件の変更と解除についても明示する必要がありますし、違反への対処も考えなければなりません。

マイホームは言うまでもなく非常に高価な商品ですから、契約についてもより慎重にならなければならないのです。

そこでこの「夢のマイホームまでのステップ5」では、土地の購入と住宅の契約(建物請負契約)のそれぞれで注意しておきたいポイントを解説していきます。

土地購入時のチェックポイント

自分の気に入った土地が見つかって、購入意思を示す買付を提出し、お互いに条件が整ったら契約へと進みます。

土地購入の契約時には、土地売買契約書が用いられますが、必ずこうでなくてはいけないという書式はなく、大抵は雛形を元に作成されます。
最近では不動産会社が作成したドラフト(下書き)で事前に内容を確認し、それから契約というケースも増えていますが、契約当日に内容を確認することもありえます。

どちらにしても契約書に署名し手付金を支払うと契約が成立するため、この契約書の中身をしっかりと理解しておくことが大切です。

事前に手渡されたドラフトや、契約当日でも契約内容に不備や相違があれば、もちろん契約しないという選択も可能です。

土地売買契約書のチェックポイント

土地売買契約書には、主に以下の内容が記されています。

● 不動産の表示:土地の所在や面積などが記されている。
● 売買代金および支払い方法等:土地代金や手付金の額、支払い期限などについて。
● 引渡日:土地の引き渡しが代金の全額受領日なのか、別の条件なのかが記される。
● 手付解除期日:いつまでに手付解除が可能かが明示される。
● 契約手不適合責任:土地が契約内容に適合しない場合の取り扱いについて。
● 費用負担:印紙税などの公的費用を誰が負担するのか。
● 契約違反による解除:契約が解除される場合の条件や内容について。
● 融資特約:住宅ローンが通らなかった場合の契約解除などの取り決め。

これらの内容についてしっかりと理解し、同意した上で契約することが大切です。
とはいえ、一般の人がこれまでほとんどしたことのない土地購入の契約内容を熟知することは難しいですよね。
そのため、不動産取引時には「重要事項説明」を行うことが法律によって定められています。
重要事項説明とは、契約に関する重要な事柄について『書面で』消費者に説明することです。
民法上、全ての契約に重要事項説明が必須というわけではありませんが、不動産売買時には宅地建物取引業者(宅建士)が行うことが義務付けられています。
これは主に、消費者を保護するため。
やはり不動産取引は金額が大きいため、契約に慣れていない消費者に対してその内容を噛み砕いて説明する必要があるのでしょう。


ちなみに大手の不動産会社では「営業マン=宅建士」ということが多いため、担当してきた営業マンが重要事項説明を読み上げることがほとんどです。
しかし全ての営業マンが宅建士の資格をとっているとは限らないため、いざ契約の時には別の人(宅建士)が同席するということもありえます。

もちろん宅建士の資格を取っている営業マンの方が安心感はあるのですが、経験は豊かだけど今さら資格を取るために勉強するのも…というベテランの営業マンの方もいらっしゃるので、その辺りはなかなか難しいところです。
とはいえ、やはり大切なのは消費者が重要事項説明の内容をしっかりと理解すること。契約内容の特に重要な事柄に関して分かりやすく説明することが重要事項説明の目的ですから、その内容さえ理解しておけば、契約に関する不安もなくなるでしょう。

重要事項説明書のチェックポイント

では重要事項説明の中でも、特に気をつけて確認していただきたいポイントについて解説していきます。



a. 対象となる宅地に直接関係する事項
土地購入時の重要事項説明ではまず始めに、対象となる宅地に直接関係する事柄が説明されます。
その中には住所や面積、都市計画、道路や設備の状況についての説明が含まれますが、その中で特にチェックしていただきたいのが環境に関する問題です。
今ではハザードマップについて契約時に説明することが義務付けられています。
地震や洪水の危険性については大まかなエリアで想定することもできますが、市内でも地区によっても危険度も変わってきますので、自分でも事前に確認しておきましょう(その点については、令和のマイホームの建て方no4でも説明しました)。

また意外と見落としがちなのが、道路計画についてです。
閑静な住宅地ということでその土地を購入することを決めたのに、もし大きな道路が家の目の前にできてしまうと困ってしまいますよね。
対象の土地、またはその隣接地で道路の新設や拡幅の計画がある場合は、重要事項説明の時に必ず説明することになっています。
しかし、その道路計画が売買される土地から少し離れている場合、どこまで説明するかの線引は難しい
重要事項説明の際に道路計画について初めて聞かされると契約自体の大きな障害になってしまいますので、買い付けを入れる前に確認しておきたいところです。

b. 都市計画法、建築基準法等の法令に基づく制限の概要

重要事項説明の「都市計画法、建築基準法等の法令に基づく制限の概要」の中には、都市計画に基づくその地域の建ぺい率と容積率が示されています。
建ぺい率と容積率でその土地内に建てられる家の大きさが決まってしまいますから、この点についてはすでに確認済みのはずです。
その上で確認していただきたいのが、「斜線制限」です。

購入する土地の北側・隣地・道路面には近隣の陽の光や風通しを確保するため、建物の高さに制限が設けられています。
容積率では3階建ての家を建てられるはずなのに、斜線制限によって2階建てしか建てられないということもあり得るわけです。
この斜線制限は建物の高さだけではなく、屋根のデザインにも影響を及ぼすことがあるため、凝ったデザインの家を建てたい場合にも要注意。

さらに全面道路の種類、公道、私道、給排水、ガスなどのライフラインの状況も建築費用に影響しますから、そうした点も事前に建築士と協議した上で必要な申し入れを行いましょう。

c. 契約の解除等に関する事項

この項目の中で特にチェックしておいきたいのが、住宅ローン特約(融資利用の特約による解除)です。
せっかく契約までたどり着いても、住宅ローンの審査が通らなかった場合は当然ですが、契約も白紙になってしまいます。
その際、支払った手付金や仲介手数料が全額返金される旨が記されています。
ただしこの特約で契約が白紙になるのは、契約書内に記載されている金融機関での本審査で否決になってしまった場合に限ります。
つまり他銀行でも住宅ローンの審査をお願いしていて、その銀行では審査が通ったのであれば、契約を白紙にする必要はないのです。
この住宅ローン特約はあくまでも、ローンの審査がおりなかった場合に『買主側』に契約の解除権が与えられるものですから、他所からお金を都合することができれば、それで問題ないということになります。
不動産会社としては契約が白紙になるとこれまでの労力が無駄になってしまいますので、住宅ローンの事前審査で通っても本審査では落ちそうな金融機関の場合、ローン特約で認めないことにしているところもあります。例えばフラット35などはたまに本審査で落とされることもありますので、嫌がる不動産会社も実際にありました。

d. 契約不適合による修正請求・解除

契約の解除等に関する事項内で住宅ローン特約とともにチェックしておきたのが、「契約不適合による修補請求・解除」の項目です。
ここでは、購入する土地に不具合があった場合の取り扱いについて説明されています。
主に考えられるのが、地中埋設物。大きなゴミやガラ、時には浄化槽などが工事の時に掘り起こされてしまう場合があるのです。
特に古い家屋がついている土地を購入するときなどには、注意が必要です。
持ち主も知らなかった浄化槽や貯水槽などが出てきてしまうと、その処分にも費用が発生します。
基本的には売り主の責任になるのですが、契約条件で免責にされている場合もあるので、しっかりと確認しておきましょう。

これは当社のエージェントが実際に体験した話ですが、古家付きの土地を引き渡されたお客様が、自分でネットで見つけた業者にその古屋の解体を手配されたんだそうです。
解体作業に入ったところ、地中からコンクリートのガラが出てきた。その撤去のために追加で30万円を請求されました。契約不適合による修補請求・解除に該当するので、そのお客様は売り主に確認されたそうです。ところが、売り主が現地の確認に来てみると、もうそのガラは見当たらない。解体業者の下請けがすでに撤去したと言っていますが、本当かどうかは誰にも分かりません。結局は証拠がないということで、解体業者が責任を取ったということです。

この事例ではお客様が直接の被害を被ることはありませんでしたが、要らぬトラブルは避けるに越したことはありません。
契約の不適合に相当するような事象が発見された場合、速やかに売り主に確認してもらうことが大切です。
そして気をつけたいのが、この条項では売り主が「修正」するというのが大原則ですので、買い手側が勝手に処分して費用を請求したりはできない、ということを覚えておいてください。

<プロからのアドバイス>
● 契約書の内容を説明するのが、重要事項説明書。そのため重要事項の説明時に不明な点があれば、その場でしっかりと確認をする。特にここで取り上げた内容については重点的にチェックしておこう。

建物請負契約時のチェックポイント

土地を購入した後は、家を建てる建築会社とも契約を結びます。これを「建物請負契約」と呼びます。
通常は「建築工事請負契約書」、「約款」、「設計図書」、「工事見積書」がセットになっており、発注者(建築主)と請負者(施工会社)が捺印してそれぞれ保管します。
建物請負契約書の内容は、土地売買契約書と大きく変わりありません。契約書も雛形になっていて、請負金額や工事の着工日、上棟、竣工の時期や支払い方法などが明示されています。
土地の契約で一度経験しているため、建物請負契約書で大きく戸惑うようなことはないでしょう。

そのため、ここでは建物請負契約書内で特に注意していただきたいポイントに絞って解説します。

a. 請負金額

請負金額には通常、〇〇万円で住宅建築工事を請け負うということが記されますが、工期が遅れた場合の違約金や建築費が上昇した場合の支払金額についても、特約や備考欄に明示されているか確認してください。
例えば、請負契約を結んだ時点で資材の発注がなされていない場合、物価高騰や円安の影響をうけて工事の着工時点で材料費の値段が上がってしまうかもしれません。
そうした場合に備えて、値上がりした分の資材費も支払金額に含まれるのかどうかをしっかり確認しておくのです。
「注文住宅だから、仕様はゆっくり考えていいですよ」なんて言う営業マンもいますが、後で「資材の値段が上がったので工事費も上がります」では困りますよね。
住宅ローンの本審査には、工事請負契約書が必要となる場合があります。
そのため、早く請負契約を済ませるために詳細が決まっていない状態で判子を押してしまうと、後で資材値上がり分を請求されてしまうかもしれません。
最初に説明した通り契約は全て条件に基づいており、判子を押したならその条件を全て受け入れる責任が生じます。
日本人はお金についてはあまり話したがらない性質ですが、後で泣きをみないようにしっかりと確認しておきましょう。

b. 住宅工事仕様書

私が建物請負契約時にお客様にも、そして建築会社にも口を酸っぱくして言うのが、「仕様書をちゃんと見て(記して)ください」ということです。

建物請負契約書には工事項目、形状寸法、数量、単価などが記された詳細見積書が添付されています。

しかし、この見積書を見ても一般の人はよく分かりません。
むしろ精読すべきなのは、仕様書の方なのです。

住宅工事仕様書には、設計図書に表せない内容が文章で記されています。そのため、設計図書や詳細見積書が読み込めない一般の人にとっても、分かりやすい。
そしてここが大切なポイントですが、仕様書に書かれていない事柄は家が完成しても手にいれることはできないのです。
例えば、電球やエアコン、カーテンレールなどは仕様書に含まれていますか?
もしなければ、完成後に自分で用意しなければなりません。
逆に仕様書に含まれているもので不要なものがあれば、取り除いても良いわけです。その分、コストカットができますよね。

もちろん家の性能や構造も大切ですが、建物請負契約時にはとにかく仕様書をしっかりと確認してください。
仕様書については契約書より先にいただけることも多いので、事前にしっかり読み込んでおきましょう。
もし仕様書を前もって用意していない建築会社には、事前に提出をお願いしています。

そのように事前にしっかりコミュニケーションを取っておくことが、安心できるマイホームづくりには欠かせないのです。

<プロからのアドバイス>
● 契約時には契約書、重要事項説明書、約款、仕様書などにも精通しておくべき。不明な点があれば、契約日を変更することも厭わない覚悟で臨もう。

契約を結んだ後は、(基本的には)後戻りすることはできません。

夢のマイホームづくりで後悔することにならないよう、契約時には大切なポイントをしっかりチェックなされてください。

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