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那覇空港到着。レンタカーをピックアップして【4月沖縄旅行物語】Vol.2

「ほら、もうすぐ着くよ、起きて、隆。」

飛行機の中、大半の時間を寝て過ごした隆は、寝起きに大きなあくびをひとつしながら窓の外を見る。
今がどの辺なのかはわからないが、すでにシートベルト着用サインは点灯しており、着陸が近いことを知らせている。

里央は多少は揺れる機内で器用に化粧をしていた。
隆は公共の場での化粧はあまり好ましくないと思いながらも、
今朝は始発の電車に乗るために全精力を注いだので、
(それも仕方ないか・・・)
と、小言を言うのを諦めた。

4月上旬に初めての沖縄旅行に出かけた里央と隆。
那覇国際空港到着まで、あと15分の空の上。

予定をしたのは1月。付き合って2年以上経った二人は、未だ本州から出たことがない。
その事実に気づいてしまった里央は、隆に有給休暇の取得をねだった。

「沖縄に行きたいの。」
行ったことがない沖縄、何がどこにあるのかもわからないのは不安だが、
それこそがこの二人の関係に刺激を与え続けてくれている。
「よし。いこう。」

隆は次の日には有給休暇の申請をして、二人分のフライトを確保した。
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飛行機から降りた瞬間、空気が熱を帯びているのを感じた。
東京からパーカーとジャケットを着て来た隆は
里央のキャリーケースと自分のキャリーケースを両手で引きながら、
朝9時20分の沖縄のむっとする気温に出迎えられた。

(なんだか台湾に来たみたいだ。)
隆は那覇空港に降り立った瞬間、台湾の台北松山空港に来たような感覚を覚えた。仕事で台湾には毎年のように行っている。
沖縄の香りはどことなく台湾の香りに近い。

隆は飛行機から降りた時に感じる、その国独特の空気の香りを感じるのが好きだった。
今日も飛行機から降りてすぐ、それを感じた。日本国内でそれを感じたのは初めてだった。

ハワイやグアムのそれではなく、台湾に近い香りがする。
沖縄と台北は距離としては確かに近い。
そんなことを考えながら初めて足を踏み入れた土地に感動と少しの興奮を覚える。

「あつい。ダメだな。これは。暑すぎる。」

到着してから大半の乗客はすぐさまバスターミナルやレンタカー乗り場に向かったが、隆はどうにも暑くてしかたないので、トレーナーを脱いで、下に着ていたTシャツはそのままに薄手のロングカーディガンを羽織った。

「私もサンダルにしよーっと。」

里央もスニーカーからサンダルへ履き替えることにした。
4月の沖縄は早朝とはいえ、すでに長袖でいることを許してはくれない気温だ。
着替えて快適になった。到着したからといって焦る必要はない。

この5分のゆとりが快適さを生む。
到着した乗客で混雑していた空港はそんなちょっとの着替えの時間でほとんど誰もいなくなっていた。
それぞれのキャリーバックを引いて、レンタカー業者の迎えのバスがやってくるレーンへと向かう。

里央と隆は出発前にレンタカーを吟味して予約していた。
那覇市内で完結するのであればレンタカーも不要だろうが、方々を回るのであれば必須だ。
ホテルも西側のリゾートエリアなので、車があると出入りが便利になる。
タクシーやバスという選択肢もあるのかもしれないが、レンタカーの方がはるかにコストパフォーマンスが良い。

那覇空港は出口から道路1本を隔ててレンタカー業者専用の出迎えレーンが設備されており、端からカラフルな看板を持ったおじさんやおばさんが、自分の事業所の予約客を待っている。

みんなアロハシャツのような柄のシャツを着ている。
「かりゆしウェア」と言うらしい。隆は後に、土産物屋で売っているシャツを見て名前を知ることになる。
この時は名前を知らなかったこともあり、ハワイも沖縄も似たような服装にたどり着くのだろうなぁ。と、感心した。

二人が予約していたレンタカー業者の看板をレーンの中ほどの場所で見つけた。
「お名前は?・・・はい、お待ちしてました。もうすぐバス来ますから、ちょっとそこで待っててくださいね〜」
少しなまったイントネーションで待つことを促された。

初めて触れた沖縄の言葉だ。隆はなんだか嬉しくなった。徐々に旅行に来た実感が湧いてくる。
「ねぇねぇ、到着した記念に写真撮ろうよ」
「おっけー」

自撮りで記念撮影。スマホを構えて二人で撮影する。
朝の光に照らされた二人は特に美肌フィルターを使うことなく、綺麗に撮影できた。短い動画まで撮影した。ノリノリである。
レンタカーの出迎えのバスを待つ時間ですら浮かれている。
これぞ観光客として正しい浮かれ方だろう。

「ねぇ、見てみて!すごく可愛く撮れた。あとね、ほら、ペアルックみたい!きゃー。」
もともと白い薄手の半袖ニットに紺のパーカーを着ていた里央と
先ほど着替えたことで白地に紺のカーディガンをまとった隆は
狙っていないにも関わらず、ペアルックになってしまった。

隆は普段なら絶対にペアルックなどしない。
しかし、どうであろうか。旅行の気分というのは恐ろしい。
(たまにはまぁ、良いか。)

普段しないことも大胆にできてしまうものか。旅の恥はかき捨てとも言う。
自分の中でいくつかの言い訳をしていたとき、ちょうどレンタカー業者のバスが到着した。

キャリーバックを預けて手荷物だけ持ってマイクロバスに乗り込む。
車内にはあと一組の家族がいるだけだ。外国からのお客さまのようだった。
マイクロバスの中は冷房が強い。うっかりしていると体調を崩してしまいそうだ。

「あ、そうだ。これ食べようー!」
里央が出して来たのは羽田で買った
「東京みやげ ベビースター全国いいとこ取り贅沢もんじゃ味」
なんとこのベビースター、10本くらいのベビースターの麺が横にくっついて並んでおり、あたかもせんべいのように板になっている。

しかも4種類の素材を使っている。
北海道産チーズ
駿河湾の桜えび
土佐のカツオ
博多明太子

各地方のおいしい素材を東京のもんじゃ風の味付けのベビースターに混ぜましたと言う、東京土産というか、日本みやげというか、それどこの土産だよ、と思わず考えてしまうスナック菓子だ。

レンタカーの営業所は空港から10分もかからないところにあった。
マイクロバスに乗っている間、二人はこのベビースター贅沢もんじゃ味をずっとつまんでいた。
ものすごく美味しかった。隆は手が止まらず、里央が1枚食べる間に、5枚くらい食べていた。
うまい。二人はずっともぐもぐしながら街並みを見ながら雑談していた。そうこうしてる間に事業所に到着。

フジレンタカー」の那覇営業所。
那覇空港から送迎ありで10分以内。好立地かつ良心的な価格設定で主な車種は軽自動車ではなく、コンパクトカーの普通車。
何より、”とある1つのプラン”が他のレンタカー業者よりも目を引いてここに決めた。

この日は平日だったからか、営業所についてからすぐに案内された。
「この書類に名前と住所、それから必要事項を記入してくださいね〜」
そして、会計を済ませた後、一通りの説明を受ける。

「それで返す時なんですけど、ガソリン満タン返し不要のプランなので、満タンにしなくていいですからね〜」
そう、沖縄のフジレンタカーにはガソリン満タン返し不要のプランがある!

料金は2泊3日で約1万円。ガソリン代込みと考えれば納得の価格である。
この時のガソリン代は1リッターあたり130円近くになっていたため、
40リットルも入れれば5000円をゆうに超える。

走行距離にもよるだろうが、今までレンタカーを借りた経験上、5000円前後は最後に給油するケースが多かったように思う。
となれば、実質的にはレンタカー代は5000円くらいになる。
コンパクトカーとはいえ普通車を3日間乗り放題である。
スポーツカーや外車などに乗りたがらないならばベストチョイスだ。

「はい、気をつけていってらっしゃいね〜。」
時間は10時前。乗り出しまでにかかった時間は20分くらいか。
ネットでは1時間かかることもあると言うから、やはり旅行は平日が良い。

フジレンタカーのお姉さま方に見送られて、二人は今回の相棒に乗り込んだ。
TOYOTAのVitz
隆は普段から車を運転するので、レンタカーにも動じない。

「それで、最初はどこに行くんだっけ?」
カーナビの設定を確認しながら隆は里央に訪ねた。
確か初日の午後は「美ら海水族館」に行くと言っていたので、
とりあえず美ら海水族館をカーナビで設定し、車を走らせ始める。

「えーっとね、とりあえず、美ら海水族館のチケットが安く買える道の駅があるの!
 美ら海水族館までの途中にあるはずだから、とりあえず向かってもらえればOK。
 まずはそこに向かって、きっとちょうどお腹が減る頃だから沖縄料理のお昼ご飯を食べようと思うの!」
助手席でスマホをいじりながら里央はそういった。

「そりゃ最高じゃないか!そんなチケットが安く買える場所なんてよく知ってるな。」
「うん!ネットで美ら海水族館調べてたら偶然出て来たの!そこでお得にチケットを買って、美ら海水族館にいくんだよ。」
依然としてスマホから目を離さない。何を見ているのやら。

「それでその道の駅の名前は?」
「それがさぁ、忘れちゃったんだよねぇ。」
里央がさっきから真剣にスマホで調べていたのはこれだった。

(そこを忘れるか。里央らしい。)
隆は苦笑しながらひとまずカーナビ通りに車を走らせた。
朝の那覇市内は通勤の車で混雑しており、微妙なストップアンドゴーが続く。

「ねぇ、隆・・・、わたし、きもちわるくなっちゃった・・・。
 この車、隆の車よりぐわんぐわんして酔う。あとちょっと臭い気がする。」

確かにそうだろう。隆の車はタイヤ径を大きくし、薄いタイヤにすることで走行性能を高めている。
サスペンションも少し硬めにセッティングしてある車種なのでそんなに揺れない。
それに、乗り慣れていない他人の車は匂いが気になるものだ。

「いや、里央、それもあるだろうけど、多分スマホ見てるからじゃないかな。」
「あー!そうかも〜。うー、気持ち悪い〜、スマホもう見ない〜」
男性諸君。ドライブデートあるあるだ。

女性を助手席に乗せた時にスマホを見はじめたら注意しよう。
そしてあなたは大いに面白いことを話さなければならない。
これは乗り越えなければならない試練だ。女性を酔わせないための。

隆は車を路肩に止めて自分のスマホで調べ始めた。
”美ら海水族館 割引 道の駅”で検索。
すると1番上に結果が出て来た。

「あったよ、里央、これじゃない?」
画面には「道の駅 許田」と書かれたサイトがあった。

「あ〜!そうそう、ここ〜!さすが隆。すぐみつけるわねぇ〜」
(いや、逆にお前・・・何てキーワードで調べてたんだよ・・・)
隆は思ったが、口に出さずに笑って場を濁した。

「よし、じゃあカーナビでここをセットしてと・・・それじゃあ、道の駅 許田に向かって・・・」
「レッツゴー!」
「おう〜!」

酔いを振りほどくようにテンションを上げて、西原インターチェンジから沖縄自動車道へと入った。
車通りの少ない高速道路は走りやすい。

空は曇っていたが、沖縄の街を少し高台にある高速道路から眺めながらのドライブは最高だった。
「天気予報では雨が降るって言われてたけど、なんとかなりそうね!やっぱり私たちラッキーだわぁ〜」

さっきまで気持ち悪いと言っていた里央は鼻歌まじりで上機嫌だ。
レンタカーのオーディオは地元の海軍向けの英語のラジオにした。
「まるでハワイに来たみたい!」

里央のこういう、なんでもない事でもスペシャルに楽しもうとするところに、
隆は今まで何度も助けられて来たと思う。
車は上機嫌な二人を乗せて順調に北上して行く。

カーナビによると西原ICから許田ICまでは1時間くらいだ。許田に着くのは11時半頃。
朝4時に起きた二人には丁度良いランチの時間だろう。

「まず何を食べたいか考えておかないと。1回目の沖縄での食事だから外せないな!」
「私はね、沖縄そば食べたい!」

二人は許田で待つ沖縄グルメに想いを馳せて、和気藹々と流れ行く沖縄の風景を楽しんだ。
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フジレンタカー
http://www.fujiren.jp/

東京みやげ ベビースター全国いいとこ取り贅沢もんじゃ味
https://www.oyatsu.co.jp/product/babystar/list/

美ら海水族館
https://churaumi.okinawa/

道の駅 許田にあるやんばる物産センター
http://www.yanbaru-b.co.jp/


多少なりとも、あなたの生活にプラスとなるような情報でしたら嬉しいです。