冨山さんとの写真

冨山和彦さんに「富山」のことを聞いてみたら、100m競争の例えが秀逸だった

こんにちは。藤井だいすけです。

先日、とあるメディアの取材で経営コンサルタントの冨山和彦(とやま・かずひこ)さんにお目にかかることができました。冨山さんといえば、2003年に産業再生機構のCOOとしてカネボウやダイエーなどの再建に尽力され、2007年からは自ら株式会社経営共創基盤を設立し、地方バス会社(みちのりホールディングス)の再生や地方空港民営化(南紀白浜空港)などを手掛けつつ、パナソニックや東京電力の社外取締役も務める、まさにG(グローバル)とL(ローカル)の経営戦略の両方を語ることのできる、日本経済産業界の「知の巨人」と呼べる人物です。

冨山さんの著書の一つ『なぜローカル経済から日本は甦るのか GとLの経済成長戦略』(PHP新書)では、G(グローバル)とL(ローカル)は優劣じゃない、日本の雇用の7割がLなのでLの再興なくして日本の再興はない、と地方企業に光を当てています。

今回の取材の内容は、まだ未公開なのでここでは書けませんが、せっかくの機会なので冨山(とやま)さんと同じ「和音」である富山(とやま)県について、ちょっとだけ質問できましたので、一部のみ公開させていただきます。

◆冨山さんと富山県の関わり
冨山さんは、20年ほど前に富山のとある企業の再建にコンサルタントに携わったことがあるそうで、それ以来富山にはご縁があるそうです。つい先日も、五箇山に旅行に出かけたとか。

◆冨山さんが考える富山県を含めた地方企業の再建
地方企業の経営の本質は「現場のオペレーション」。極めて地味で、日々コツコツ改善し続けられるかが重要。成果は1日2日では見えないので、粘り強さ、勤勉さが重要。

◆地方の人手不足の解消について
これは日本全体の構造的な問題。今後40年間は変わらないのでは。となれば、会社が働く人を選ぶのではなく、働く人が会社を選ぶ状況が当たり前になる。つまり、働く人に選ばれる「ホワイトな企業」が生き残る。

◆富山を含めた地方経営者が重視すべきこと
付加価値労働生産性(※1)に注目し、それを高めていくことに集中すべき。付加価値労働生産性が上がれば1人あたりの給与も上がっていくし、設備投資もできるようになる。そのためにも経営者が現場で働く人を「ひとりひとり」固有名詞で把握し、ちゃんと頑張っている姿を評価することが重要。

※1:付加価値労働生産性……工業生産での「物的労働生産性」が生産量や販売価格をベースにするのと異なり、サービス提供によって生み出される価値(≒粗利額)をベースに、労働投入量(労働時間or労働人数)で割ったものとされる。

中でも藤井がなるほどと唸ったのは、100m競争の例え。以下、藤井の意訳です。

・地方の企業は、重りをつけて100m競走をしている状態。その重りを外して走れば、当然スピードは上がる
・100mの世界記録や日本記録を目指さなくてよい。むしろ自己記録がどれだけ伸びたかに注目すべき。そこが企業の伸びしろ(成長率)につながる
・大手企業は0.1秒伸ばすために必死でAIだのクラウドを導入している。中小企業は、働く人にとってのブラックな部分をホワイトに改善する余地が大きい場合があるから、あっという間に5秒とか10秒とか速くなれる

私も地方の介護福祉事業経営者の端くれでありますので、「働き方改革で人件費が上がると中小企業経営が圧迫される!」とのネガティブな意見がついつい出てしまうこと、大変よくわかります。しかし、そこが伸びしろだと冨山さんにやわらかく喝破されたときにドキリとしました。

冨山さんは取材中、「経営に魔法はない」と何度も繰り返されていました。私も、「AIやITはドラえもんじゃない」と議会質問で述べたことがあります。とはいえ、私の場合はローカル企業の伸びしろを信じての発言というより、ITに対する無理解を表現したものでした。

このあたり、いち経営者・いち地方議員として、しっかり自分の言葉に昇華できるよう、考えを深めていきたいと思っています。

藤井だいすけ