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「小杉湯はもう十分にケアだ」|小杉湯×医療者交流会を開催して。

9月26日に小杉湯×医療者交流会を開催しました。

▽なぜ銭湯と医療なのか?

銭湯は世代や趣味の異なる人が集う、公共の場。名前は知らないけれどなんとなく顔は知っている、フラットな関係性があります。そんな銭湯には、入浴以外にもコミュニティや健康づくりなどさまざまな活用の可能性があります。例えば、もし医療者が銭湯にいたら、病気になる前の元気なうちから関わることができます。そこでコミュニケーションを取ることで、なんでも話せる、街の保健室のような存在になれるかもしれない。社会的処方・予防と言われる地域での初期対応を行うことができるかもしれない。

そのように銭湯に可能性を感じている医療者と小杉湯3代目平松さんが出会ったことや、小杉湯番頭/イラストレーターの塩谷さんが銭湯と出会ったそもそものきっかけが体調不良だったことなど、様々な想いやキッカケが重なって、今回の交流会の開催に至りました。

▽開催内容

今回の交流会では、以下の内容を実施しました。

1.のぼせレクチャー
番頭/番台さんへ「医療者に聞きたいこと」アンケートをとったところ、最も多かった回答が、お客さんがのぼせてしまった時の対応でした。
 実際に、この10年の高齢者の「不慮の事故」の死因別に比較すると「交通事故や火災」による死亡者数が減少しているのに対し「不慮の溺死及び溺水」による死亡者数は増加しており、より安心・安全な入浴方法について知ってもらうこと&実践してもらうことが、重要となっています。

のぼせレクチャーでは、杉並区にある訪問看護ステーション ナーシングケアいおり の坂田さち子さん( @MioMioyosida)に講師をしていただきました。

「のぼせ」とうまく付き合う方法
・のぼせとは何か(のぼせと似た症状含めて解説)
・のぼせへの対処方法
(入浴前の注意事項、入浴中の対処、倒れてしまった場合の対処)

交互浴の聖地、小杉湯はいつもは湯船に浸からないお客様がいらっしゃることも多いです。そして、“久しぶりに大きいお風呂に入るし、せっかくだから長湯しよう”とのぼせてしまうお客さんも珍しくないです。
番頭/番台さん達はそのような状況に対して「正しい対処方法を知りたい」と思っていたそうで、講義終了後は時間オーバーするほど沢山の質問が出ました。
講師の坂田さんも「あんなにたくさん質問が来ると思っていなかったので、こんなに真剣に聞いてくださるんだ!」と番頭/番台さんたちの積極的な姿勢に感動されていました

2.銭湯ケースカンファレンス

小杉湯にどのようなお客様が来られるのか・そこではどのようなコミュニケーションが行われているのかの情報共有と、小杉湯×医療でこれからやっていきたいことについてグループセッションを行いました。

このカンファレンスでは、医療者が小杉湯の皆さんの多様な視点に目からウロコでした。

番頭/番台さんは「お客様に気持ちよくお風呂に入ってもらう」「余白のある時間を過ごしてもらう」ために、お客様と丁寧に向き合うコミュニケーションを大切にされています。

その延長線上に、ごく自然と見守りや互助力といったソーシャルキャピタルの力が発揮されていたのです。

その多様な視点に医療者はハッとしましたし、ワクワクしました。

参加者のツイートをご紹介する形で書かせていただきます。

医師や医療者は専門職であることから「先生」と呼ばれることが多いですが、街で出会うとき、そう呼ばれるのは少し違和感があります。それは、私たちが街で暮らしている方々に学んでいきたいと思っているからです。

医療者は、時に「Aさんが○○病を抱えている」ではなく「○○病のAさん」とラベリングしてしまい、狭まった視点になってしまうことがあります。
だから、患者である前にその人であるAさんと出会うために、「医療者」「専門職」という鎧を捨てて、フラットな関係性で街に出て行き、“医療者と患者”ではなく、“住民同士”での出会いを大切にしていきたいと実感しました。


▽交流会を実施してみて/今後のこと

今回の交流会を実施してみて分かったこと。
それは「小杉湯は十分にケアだ」ということです。

第1回目のキックオフを開催したばかりなのに何を言っているの?と思うかもしれませんが、小杉湯は、私たちが想像していた以上に、地域コミュニティのハブとなっていたからです。

前回のnoteでも書いたのですが、小杉湯と医療者が混ざることで「つどい、まなび、むすばれる」場所をつくって行けたらいいなと思っています。

今回の銭湯ケースカンファレンスでは、気になる高齢者のお客様の相談窓口として地域包括支援センター(小杉湯がある杉並区ではケア24と呼ばれています)を紹介させてもらいました。ケア24は65歳以上の方の総合相談窓口で、無料で保健師や主任介護支援専門員、社会福祉士に相談することができます。本人やご家族からの相談はもちろん、地域の方から「最近心配な人がいる」と相談することも可能です
番頭/番台さんたちからは「そんな風に相談できる場所があることを知らなかった」「そういうところに相談して良いんだ」と意見が出ました。
確かに、このような情報はなかなかキャッチする機会が少ないと思います。

だから、私たち医療者が、小杉湯のようなソーシャルキャピタルのチカラがある場所に足を運んで、「こういう時は相談できるところがあるからそこに繋いでね、あとは大丈夫」という安心感の持てる情報提供をして医療と街の架け橋になれたらと思っています。

逆に、それ以上のことはしなくていいと思っています。小杉湯の今の色を守るために、お客さんと働く皆さんがもっと安心して集えるように「一緒に楽しみ、何かあった時に相談できるサポーター」として医療者は関わっていきたいと思います。

▽おわりに

参加者以外にも、兵庫県や福井県などで活動している全国各地の医療者から反応をいただいて、嬉しく思いました。


銭湯に通うことは、多様な視点を持った人、街の多世代とごちゃ混ぜに出会うこと。

きっと、小杉湯となりが完成したら今まで以上にコミュニケーションが生まれると思います。それぞれの“得意”、“ちょっと詳しい”を持ち寄って「つどい、まなび、むすばれる」居場所となったらいいなと思います。そして、“弱さ”も許容し合える、安心感のあるつながりがひとつでも生まれたらいいなと思います。

今後も、小杉湯×医療での取り組みは続けていきたいと考えています。医療者に限らず、なんだか面白そうだから関わりたい!という方がいらっしゃいましたら、お気軽にツイッターにDMください。

最後まで読んでいただきありがとうございました!



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