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【読書感想文】 「戦争のない世界は可能か」三牧聖子 現代思想2024年1月号 特集=ビッグ・クエスチョン


挨拶

はじめまして
現在 哲学広場AGORAの企画で「現代思想2024年1月号」を使って
毎週 読書感想会を企画しています。

今回はその5回目となる企画です。
興味ある方はAGORAにぜひ参加してください。

★ AGORAの詳細知りたい方はこちら ※準備中


戦争のない世界は可能か 内容説明

三牧聖子

同志社大学の准教授で国際関係論などを中心に研究されています。『Z世代のアメリカ』『戦争違法化運動の時代』『リベラリズム失われた歴史と現在』(翻訳)など出されています。

内容

「戦争をしてはいけない」誰もがそう考えるけど、戦争のない世界は私たちにとって理想である。現代では〈戦争=違法〉と〈戦争=手段〉の立場の国(集団)があり、後者は〈自衛〉という概念を拡張化させることで正当化を図っている。満州事変、ウクライナ紛争、ハマス-ガザ危機、日本も含めて様々な国が自衛という名の“暴走”を起こしていた。その中でも「アフガニスタン侵攻」が拡大化の原因だと著者は分析する。アルカイダへの報復はバーバラ・リーを除く全ての議員と多くの国民が有形力(テロとの戦い)として認めた。その結果なにが生まれたのか。20年間で国内外“共に”甚大な被害をブラウン大学の「戦争コスト」や実例などを通して確認していく。後半は被害とは別の“救済”という視点を中村哲医師の活動を通して紹介していく。そして、そのまま“現在”の問題(ガザ危機)の話に繋げていく。

2023年10月ハマスはイスラエル越境に攻撃を仕掛けて民間人・観光客も含む1200人が犠牲。200人が人質に取られた。そこからハマスとイスラエルの全面的な武力衝突となる。イスラエルのネタニヤフ政権は「テロへの戦い」として市民含む無差別な攻撃を繰り返し一カ月ほどで一万人が死にゆくことになる。病院や学校も攻撃対象となる。これに対して欧米諸国(本書では主にドイツ)はイスラエルを擁護する。それはなぜか。

ドイツに対してトルコの大統領が「ガザでは10分に一人子どもが殺されている。これは戦争犯罪として国際法廷で裁かれるべきことではないか。我々はホロコーストに加担していないからイスラエルに負い目はない」痛烈な批判であると同時に擁護する/しないには複雑な問題が抱えてることが示唆される。

今の世界はどのような事態なのだろうか。「戦争のない世界」に近づいてるのだろうか。著者は否定する。戦争を「自衛」「テロとの戦い」みたいな呼び方によって、違法から逃れる「戦争とは呼ばれない暴力が跋扈する世界」であり、そちらに進んでいる現状を憂い、それだと理想に近づかないと本書から読み解くことができる。また、理想に近づくためには目標を正しく見定める必要がある。そのために今回、取り上げられたような「自衛の正当化」を私たちは批判的な眼差しを向けていく必要を持たなければならない。


気になる点

①私たちができること

本書は一貫してテロの問題よりもテロから生まれる「テロへの戦い」に批判の眼差しを向けている。もちろん、これは「自衛するな」という話ではない。自衛における適切さの是非が問われている。また、「正当か正当ではないか」みたいな哲学など人文系で巻き起こる議論とはどこか距離を置いてる点も特徴である。重要なのは既に正当化された暴力とどのように我々や社会は向き合うのか。正確に言えば向き合い続けるためにはどうすればいいのか?という点が大切となる。

②攻撃する側とされた側の非対称性

今回、あまり語られていない点がイスラエル政権側の反論にある「攻撃する側と攻撃される側を同列に並べている」点については個人的に気になる。本書の内容を見る限り同列のように扱う建てつけは“被害者数”という量的な還元において、テロもテロへの戦いも“市民にとって”同じ暴力であり、むしろテロへの暴力の方が被害者数は多いと論じられている。しかし、上記の反論にあるように攻撃する側とされる側は同列に扱えるのか、もう少し話すなら「攻撃される側」と「攻撃されない側」は同じ理屈で語ることができるのか。市民の犠牲を伴ってでも壊滅に追い込まなければ、苦しむのは私たちではなくイスラエルである。無批判への眼差しは無論大切である。しかし、その批判への眼差しはイスラエルの未来を守る責任を果たせるのだろうか。この点は今後の深掘りが必要になると考える。

読書会を通した気付き

※今後追記予定

日時:2月2日(金) 22時〜
場所:https://twitter.com/i/spaces/1vAxRvRqWgaxl
※アーカイブあります。


今回のテーマで
興味ある方はぜひ参加して下さい。
読書感想会は一度して終わりではなく
今後、チャットなど含めて
繰り返し話していく予定です。

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