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静岡県立大学・山田特任教授が語る!医食同源の重要性、食品の機能性研究の可能性(2/2)

今回のインタビューで、薬理学の専門家である静岡県立大学大学院の山田静雄特任教授が食品の機能性研究にも力を入れるようになった理由が見えてきました。「研究成果は社会に還元されるべき」と語る山田特任教授は、自身が代表を務めるNPO法人を通じて健康な体づくりの重要性を地域住民に伝える啓蒙活動に力を入れています。インタビューの後半では、“地域の中にある大学”という視点から研究者の役割について話を聞くこともできました。

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静岡県立大学大学院の山田静雄特任教授

必要とする人に研究成果を届けたい

前の記事でお話したとおり、私は「医食同源」の重要性を見直し、「食」の健康効果について研究しています。食材(食品)には、さまざまな栄養成分が含まれています。食事のメニューやレシピの組み合わせによって健康面での相乗効果が期待できますが、医薬品とは異なり即効性は期待できません。そうした中、食品から機能性成分を抽出したサプリメントに対する期待が高まりつつあります。

実際に、2015年4月にスタートした機能性表示食品制度を受けて、効能効果を打ち出したサプリメントは急増しています。どの商品を選べばいいのか、迷ってしまう人も少なくないでしょう。必要な成分を効率的に摂取できるサプリメントですが、私は、複数の天然由来成分が含まれているものをおすすめしています。そのほか、有効性と安全性を示すデータは必要不可欠といえるでしょう。

病気を抱える人はしかたありませんが、病名はついていないものの不調が続く「未病」に悩まされている人も医薬品に頼りがちということが指摘されています。こうした悩みを持つ人にも、「食」で健康を取り戻せることを知ってほしいと思います。私はこれまでの研究で、ボタンボウフウ(過活動膀胱による排尿障害の改善)、クロレラ(急性膀胱炎の再発予防)、そして、前回ご紹介したそばの新芽(間質性膀胱炎の症状改善)など、食品とその機能性をいくつか報告してきました。未病にとどまらず、食品は病気をすでに抱えている人の助けになる可能性も秘めているのです。

医薬品の多くは、症状の緩和を目的とした対症療法的に使用されています。そのため、副作用のある医薬品を生涯にわたって服用する必要が生じるケースは少なくありません。ふだんの食事やサプリメントで必要な食品成分を適切に摂取すれば、未病を改善できると考えています。食品成分は健康効果の発揮に時間がかかるものの、不調の原因を改善する根治療法に役立ち、副作用の少ないものがほとんどです。

ただ、サプリメントの一部の成分には、薬の効果を弱めてしまう相互作用があるので注意が必要です。私の研究では、認知機能の改善効果があるイチョウ葉やセイヨウオトギリソウといったハーブの摂取で、薬と相互作用を起こすことが確認されています。「食」による健康の維持・増進のためには正しい知識が必要なのです。

サプリメントに限った話ではありませんが、大学に蓄積された「知」は社会に還元されるのが望ましいと考えています。必要としている人に、研究成果をどのように届けていくべきか──。県立大学の大学院に籍を置く研究者としてのあり方を模索していた私がたどり着いた一つの解が、「くすり・たべもの・からだの協議会」の立ち上げでした。同協議会は2015年に医学・薬学・食品栄養学・看護学の専門家や医療従事者などとともに設立したNPO法人で、薬・食品と健康に関する正しい知識の啓蒙活動を地域で続けています。

NPO役員理事全体写真

NPO法人のメンバー。専門家や医療従事者の力をお借りしています

「食」による健康がテーマの講演会を主催

協議会では、専門家を招いての市民講演会を年に数回主催しています。講演会では、日常生活の中で実践できるアンチエイジングやアロマセラピーなどの健康法を紹介したり、機能性食品の選び方や使い方など基礎知識について質問を受けたりしています。座学以外では、健康状態の測定やトレーニングの体験といった参加型の要素を盛り込み、健康意識を高める工夫をしています。私たちの活動趣旨に賛同いただいた企業の商品の説明やサンプル配布の機会を設けることもあり、具体的な情報収集の場としても参加者に活用いただいています。

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大勢の市民で賑わう講演会の様子

2020年6月20日には、動脈硬化やフレイルの予防にくわしい医師と研究者の講演を予定していました。この講演会は、新型コロナウイルスの感染拡大により残念ながら中止となってしまいましたが、次回は例年どおり9月ごろの開催を見込んでいます。開催情報は協議会のHPで随時更新しているので、興味のある人はチェックしてみてください。

第20回講演会チラシ_

前回開催された講演会

食品成分の健康効果は解明されていないことも多く、勘違いされやすい側面が多いようです。食品の機能性解明を進めつつ、協議会の活動で正しい知識を世に広めていきたいと考えています。この先、どんな発見があるでしょうか──。薬理学の研究者として創薬研究に携わるようになってから50年、いまもワクワクしながら研究を続けています。

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