Fichronicle #40『星』

2021年1月31日、この日の星の時間、公共放送を行うテレビ局にて太陽系のとある惑星をテーマに約1時間番組が放送されていた。


それから6日後の2月6日(土)、僕は暇な時間を手に入れて、テレビの録画リストに入っているこの番組のファイルを開いた。


宇宙は僕にとって、とても好きなテーマの一つで、小さな頃からの憧れの存在。宇宙飛行士に憧れ、月面への着陸してみたいと思う、そんな時代もあった。
あれから10年以上の時間が経ち、なんとなく宇宙がどのような場所かを人並みに知り、宇宙へ実際に行こうかというと、今の段階では分からない。

それでも僕はずっと宇宙に憧れ、「憧れ」というものの大きさは、身長と年齢と共に子どもの頃より増しているような気がする。


宇宙飛行士という職業に憧れるようになった頃から、今日こうしてテレビの録画ファイルを開く時までの間に、プラネタリウムで季節の星空や、僕の住む街をテーマにした星の眺めと景色を見たり、月面に人を着陸させる事に成功した組織と共に、宇宙がどのような場所かを探索する番組を観たりして、宇宙というものを人並みには知るようになった。


録画ファイルを開き、番組が始まる。

1930年代初頭に発見された、というこの惑星。2006年にこの星がどのような姿をしているかを知るために探査機を送り、2015年にそこへ到達。発見した事を伝えるのが、この番組のテーマらしい。

僕はこの星に対してイメージはない。ただ、同じ太陽系の中にある天体の一つ。そういうイメージがあるだけ。

番組を観ている時間は、もう星の時間。外は街灯と誰かの家の電気で照らされている。電気を付けなきゃと思った時、昔のことを思い出した。

今から8年以上前の10月、寝られない日があった。1時に2時になっても起きていて、あまりにも暇だからとテレビを観て時間を過ごしていた。
今となっては、地上波だったのかBSだったのかはもう覚えていないけど、土星か木星の衛星がテーマの番組だったのは今でも覚えている。

辺りは星の時間の色に包まれる中、テレビからの光が僕の周りを照らしていた。この星はよく分からないけど、広大な場所で、すごいところだと思った、ような気がする。
僕の中で、その衛星の最も印象深い姿はCGによる予想の映像だとは思うけれど、噴水のように地下から水が吹き上がる間欠泉のシーンだった。
その後のことはあまり覚えていない。ただ、誰かの語りを聴いていたような気がる。

そんな事を思い出して、僕は部屋の電気を付け、暖房の温度を2度上げた。

番組は、探査機がこの惑星の探査の様子と、知り得たことが地球に伝えられるシーンへとなり、解説が始まる。
この星はただ、透明色というわけではなくて、表面の先には暖かい水がある可能性が紹介されていた。
太陽系の出口に近い場所にあるはずのこの星にも暖かさがあるのかもしれないと驚く。

番組はその後も解説が続き、気がつくと結ばれた。

とても不思議な天体だと思った。同じ太陽系にある星も個性が豊かだ。
そういえばと思い、僕はスマホを開き、検索を始める。“8年以上前の10月のあの日”僕が観たあの衛星は土星なのか木星なのかと。
「木星 衛星 間欠泉」と検索したらすぐに出てきた。2019年に間欠泉が実在する事が確かだと分かったと書いてあった。あの頃はまだ予想の段階だったんだと同時に、検索ワードが韻を踏んでることに気づく。気づいただけで、それ以上の感情はなかった。僕はラップが出来るほど器用じゃないから。

この星にもいつか人は行き、そして生活さえも可能になる日が来るのだろうか。
そんなロマンにあふれる日常が来ると面白そうだなと思いつつ、僕は夕飯が出来るまで部屋の掃除をしていた。

機材代に使います