ガリガリの多幸感~かすみ嬢の居場所(13)


 入院、をしていました。学校もあるからそんな長期にじゃなく、短期の。私が渋ったから。でも、体重はぐんと増えて、帰されてきました。

 学校の健康診断、BMIの正常値が20以上になっていて唖然…。本当に、本当にそれが世間に基準なの…。せめて18以上とかにして…。
 ちなみに、16以下でもう1回体重測りにおいでって言われます。何度測っても変わるものでもなかろうに…。筋肉がなくて脂肪が多いから、体重の割に太って見えてるし、憂鬱極まりないよ。

 入院中、もうイヤだってずっとずっと思ってて。でも、もう帰ったら即減らせるから流されたいって思いも働いて、流されようとする自分もイヤで、どちらにしろ寝させられて点滴されて否応無しに増やされていく体重は現実のことで受け入れるしかなくて。もうイヤ…。

 そんなとき、高校の先生が訪ねに来てくれて、可愛がってもらってた人だったから嬉しかったんだけど「ちょっとまるくなった?」って、自分の顔を手で包んでみせて「そのほうが可愛いよ」ってニコッと笑われて、もうどうしようもなく複雑な気分になった。私はこんな身体可愛いと思えないよ絶対に。

 結論から言うと、私は絶対に、もう絶対に、こんな身体は受け入れないしイヤだ。痩せるんだ。もっともっと痩せたいんだもん。こんな気持ちにさせられるなら、入院するなんて先生の言う治療にとっては逆効果じゃないか。
 私は、先生のことなんてもう絶対に信じらんない。こうやって意固地になったらいわゆる「治療」を大きく遅らせますって知ってるけど、知ってるけど、私の望む方向はそっちじゃない。

 昨日は「たくさん買ったけどいる?」って勧められたお菓子を断ったら「かすみはいっつもそうだよね」って言われてどきっとした。
 でも、ここまでなら食べようって立てた予定通りに予定通りのものを食べる以外でものを食べるのはきついかな。予定通りに食べきることもあまりしないけど。人前でものを食べるのもハードルが高いよ。

 今日は喉が痛い。梅雨寒っていうのかな、骨まで滲みる感じがしてすごくきつい。
 でも大丈夫。風邪は痩せる前兆。寒いと消費エネルギーが上がる。大丈夫大丈夫。

 それにしても、肘のすぐ上のとことか、前はするっと人さし指と中指の中に収まってたのに、今じゃ無理矢理じゃなきゃ、しかも角度を調節してみなきゃ収まらない。太腿も難なく両手で掴めてたはずなのに掴めなくなってる。
 何回も何回も確かめて赤く跡になってるし、手を目一杯広げすぎて親指と人差し指の付け根が痛くなった。こんなに無理しなきゃ掴めないの…って、それだけでもすごいパニック。

 ねぇ、痩せよ。痩せなきゃやってらんないよ。「私の心と身体の釣り合いが取れるところを探しましょう」って先生は言ったけど、先生、私の心はもうこの身体についていけてないから、精神上よろしくないから、前よりも痩せることをお許しください。もういっぱいいっぱいなの。
 食べなければ運動すれば痩せる。それだけのお話。あとは私の気力次第だけど。痩せることしか考えられないこの頭を信じてあげたい。

 私は痩せられると、いつか痩せ姫になれると、それを頼りに頑張らせて、お願いだから。

 あと、これはたぶんでもなくて絶対だけど、腹筋が…割れなくなってる…。ちゃんと綺麗に跡が見えてたのに今じゃうっすら線があるかなくらいになってる。肋骨はまだOK、違いがわかりにくい。ちゃんと見えてればいい。でも腹筋は、腹筋はいろいろと死活問題なのに。

 ふくふくしてる部位触って確かめてあぁこんなに太ってるって絶望するくらいなら、まだ、死にそうでもガリガリさに多幸感を感じてるほうがよっぽどいいの。
 痩せられないなら生きてく価値などないしさっさと死にたい。
 あぁそれやったらよくないよ…って思う自分も居るには居るのだけど、今の太った私を喜ぶ人はみんな敵。痩せを拒もうとする人はみんな敵だよって考えが強くなってる。もう関わらないで、人間関係の重みも要らない要らない。

 痩せて見返したいリストに新たに人がどんどん加わっていくのは、苦しいことだけど、それがある種の生きる意味になっている今。


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