ちゃんと食べてる?

今朝の「てっぱん」で、ヒロインが電話越しに、
「ちゃんと食べとる?」
と聞かれてた。
尾道から大阪に出てきたものの、就職するはずの会社が倒産し、住むところもなくなって、路頭に迷ってるはずのヒロインは、その時点で、危機を脱し、美味しい食事にありついていたから、その問いかけに、
「ちゃんと食べとるよ」
と、明るく答える。
そのシーンを見ながら、僕の小説「何処までもやせたくて」の最初の一文が「ちゃんと食べてる?」だったことを思い出した。でも、一人暮らしをきっかけに、本格的なダイエットを再開するつもりの、僕の主人公は、その母からのメールを削除し、ちゃんと食べていては痩せられないのに、と考える。
だから、第1話のタイトルは「ちゃんと食べない!」なんですね。
僕の描こうとしてる世界は、朝ドラ的な世界とは真逆に位置するのかな、なんて思いつつ、それでも、根っこではつながってるはず、という気もして。
たとえばやはり、今朝の「てっぱん」で、
「キミにとって、食べることとは?」
と聞かれたヒロインは、
「人生で一番大切なことです」
と、答える。そのやりとりを素敵だと感じつつ、でも、誰もがそういう気持ちで、生きていける世界なら、僕の小説は誰にも読まれず、存在する意味を失うだろう。
僕の主人公、そして、同じ痩せ姫として共感してくれてる人たちが、胸を張って「ちゃんと食べてるよ」と言えるときは、それぞれ、どんなふうに訪れるんだろうか。

(初出「痩せ姫の光と影」2010年10月)


アメブロ初期の記事って、ややきれいごとっぽいというか、この末尾についても、そんなときが訪れるとは限らないのに、というツッコミを受けそうな気がする。まぁ、試行錯誤を経て、痩せ姫本、そして現在のスタンスへと到っている、ということなのだけど。あと、人生で何が大切か、なんてことも無理に決めなくていいんだろうな。そのとき、その瞬間に、やりたいことをやればいい、という考え方が今はしっくり来ている。

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