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ふうせんうさぎby娘

 今日は7月7日。
あっちゃんの家の近くにある神社で、七夕のお祭りがあります。
あっちゃんは この七夕祭りをずっと楽しみにしていました。

「ごちそうさま!」
あっちゃんは夕ご飯もそこそこに、早くお祭りに行きたくてしかたがありません。
「おばあちゃん、早くゆかたを着せて!」
おばあちゃんは、このお祭りのためにあっちゃんにゆかたを作ってくれました。おばあちゃんは、奥のタンスからゆかたを持って来て、あっちゃんに着せてくれました。
あっちゃんはゆかた姿が気に入りました。
鏡の前でぴょんぴょんはねると、背中に結んだきれいな帯が,金魚の尾っぽのようにひらひらとゆれました。
「いってきま~す!」
あっちゃんはおじいちゃんと、犬のロンとお祭りに出かけました。
神社の近くに来ると、たくさんの笹が道の両側に飾られていました。
お祭りはたくさんの人でいっぱいです。
 向こうからあっちゃんと同じ年くらいの女の子が お母さんにつれられてやってきました。その女の子を見て、あっちゃんは少しさみしくなりました。
本当はあっちゃんも、お母さんと一緒に来たかったのです。 けれども、今
お母さんは赤ちゃんを産むために病院にいます。
 お姉さんになるのはうれしいけれど、ちょっぴりお腹の赤ちゃんにお母さんを取られたみたいで、あっちゃんはさみしかったのでした。
しょんぼりしているあっちゃんの手を 犬のロンがぺろぺろとなめました。
「あっちゃん、なにかお願いを書くかい?」
おじいちゃんが言いました。
たくさんのお願い事が 色とりどりのきれいなたんざくに書かれてありました。
あっちゃんは しばらく考えていいました。
「もうすぐ、あかちゃんがおうちに来るけど、あっこ、妹がいいな」
「そうか。じゃあ、お願いしよう」
お祖父ちゃんはたんざくにあっちゃんのお願い事を書いて、笹に結んでくれました。

 帰り道、あっちゃんはおおきなうさぎの形をした風船を買ってもらいました。それは、ずっと前からあっちゃんがほしかったものでした。

 その夜ベッドに入ったあちゃんはふうせんうさぎがどこかへ飛んでいってしまうのではないかと心配でした。
あっちゃんはふうせんうさぎをベッドにしっかり結んで眠りました。
そして、あっちゃんは安心して目を閉じました。

しばらく 目を閉じていると、どこからか声がしました。
「あっちゃん、ぼくにつかまってごらん!」
その声はふうせんうさぎでした。
あっちゃんは 起き上がると、ふうせんうさぎにつかまりました。すると、ふわっと体が浮いて、ふうせんうさぎと一緒に夜空を飛んでいました。
大きなまあるい月が、たくさんの星たちを照らしていました。それはまるで
きれいなガラス玉をちりばめたようでした。
「とってもきれい!」
「見てごらん、あっちにも、こっちにも、キラキラ光るものが生まれているだろう。これが天の川だよ。ここで、ほしたちは生まれるんだ」
 あちらこちらで、金や銀や青の星が生まれるのを、あっちゃんはじっと見ていました。
「星はね、月のこどもなんだ」
ふうせんうさぎは 言いました。
「私にお母さんがいるように、お星さまにもおかあさんがいるのね。見て、
ふうせんうさぎさん、あそこで七色の星が生まれたわ」
その時、あっちゃんが見つけた七色の星が 流れ星になって天の川から落ちて行きました。
「あの星は、人間になったんだ」
ふうせんうさぎは言いました。
「ねえ、私もこんな風にして生まれてきたの?」
「そうだよ」
「じゃあ、私はお月様の子?」
「そう、みんな人間はそうなんだよ。だから、みんな兄弟なんだ」
「わたし、もうすぐ、お姉さんになるの」
ふうせんうさぎはうなずきました。
月の光がだんだん弱くなってきました。
「もうすぐ朝だ! あっちゃん、帰ろう」

気が付くと あっちゃんはベッドの中でした。
あっちゃんはふうせんうさぎに聞きました。
「ふうせんうさぎさんは どこから来たの?」 
ふうせんうさぎは 月を指さしました。その瞬間、ふうせんうさぎの姿が 月に映り、もう、あっちゃんの前には、ふうせんうさぎはいませんでした。

 朝 目を覚ますと。ふうせんうさぎは小さくしぼんでいました。
 その日の朝早く、あっちゃんはお姉さんになりました。
ふうせんうさぎと見た七色の流れ星は,あっちゃんの妹だったのです。

 七夕の日に生まれたあっちゃんの妹は、7月7日にちなんで、「ナナ」とつけられました。

          おわり

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