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【本屋案内】ヨルダン本屋のルームツアー!店に庭にカフェに、うっとりため息

「ここで働かせてください!」で住んでみた、ヨルダンの本屋をご紹介。当店は「本屋」だけにあらず、カフェに庭にと複合施設のようでもあった。それぞれの部屋にまつわるエピソードも交えながら、ルームツアーならぬ"ブックショップツアー"にご招待する。

●ワクワクする門をくぐると、広場

(1)世界中の客のワクワクを受け止める「門」

店長の車、クリーム色のベンツが店の前にとまっている

さて、私たちの本屋にようこそ。これが門。丸いロゴの下にはポットがぶら下がっているのが可愛らしい。(クリックで拡大できます)

全体的にゴツゴツした岩と、それに調和する塗装によって、入る前から「何だこの店は?」とワクワクが止まらない仕様になっている。一呼吸して、心を落ち着けて入店しよう。

ちなみに私の初来店時は、アドレナリンというマグマが大噴火し「落ち着く」など不可能、大変なことになっていた。

(2)なんもない「広場」

いつも猫が走り回っている

門をくぐったらすぐ店!とならないのが当店のいいところだと思う。「まず、広場」。これが余裕ってやつだ。何があるって何もないし、何のためって何のためでもない。ただ広場があるのだ。こういうのっていいなと思った。

(3)キッチン受付

ここではフードを注文できる。メニューは英語・アラビア語がある。

オレンジの木も、景観に一役買っている
人気プレート「アラビアンおかず4品とパン」

●本屋内には5つのエリアが

改めて、本屋の間取り

いよいよ店内をご案内。本屋には4つのエリアがあり、まっすぐ進むか、すぐ右や左に曲がるかで、いろんなエリアを巡ることができる

(4)エントランス、レジ前スペース

向かって右側の小さいスペースがレジ

重厚な扉を両手でゆっくり開けるとこんな世界が飛び込んでくる。レジまわりには、地元のクリエイターたちが作ったアクセサリーや雑貨、レコードなどが並んでいて、楽しい空間になっている。

この前は大きなアラブの絨毯も売っていたのだが、台湾からの観光客が買っていた。彼らはどうやって持ち帰ったのだろうか..。

(5)当店の顔、「メインの本エリア」

窓からの緑の景色のおかげで圧迫感は無し

入口を入ってまっすぐ進むと、メインエリア。店内に木が生えていたり、天井までぎっしりと本が並べられたり、と盛りだくさんの空間だ。

天井を塗るラウラ

私が本屋に着いて数日後には、ラウラが天井の白い配線を青く塗装していた。小学生時代に「習字の授業がある日は黒い服で登校」を徹底していた私は、白い服で天井を塗装するラウラに仰天してしまった。

(6)「ミュージックルーム」

ギターがある部屋(写真には写っていない)

ここはそれほど広くはないが、ソファーとギターのあるちょっとした小部屋だ。お客さんがいない時間帯などはみんなでここにぎゅうぎゅうに集まって、ギターを弾いたり、ジャムにつけるタグを作ったりしてまったりしていた。

(7)日当たりのよい「アカデミックルーム」と、「自習カウンター」

ではでは、本屋の入口を入ってすぐ右に曲がると、どんな部屋があるかというと…

「Study Room」という看板がぶら下がっているのが見えるだろうか。ここをくぐると..
階段型・ヒト型など、ユニークな本棚の並ぶ空間

ここはアカデミックな本の並ぶエリア。会計学、生物学、スペイン語、医療、ポエムの作り方、などとにかくいろんなジャンルの本がある。

またここアカデミックルームは、電源とwifi完備で、出窓のカウンターを自習室として使える(1時間150円)。後で紹介するカフェのコーヒーも持ってこれば、もう最高の自習環境だ。

多分この店のことだから、規定の1時間を過ぎても、誰も気づかないのではないか。さらには快適すぎて、そのまま「住ませてください」という人が出てもおかしくない。あと多分OK。

(8)レアブック⁨⁩ーム

続いては、本屋に入ってすぐ左に曲がったところの部屋をご案内。

店の入口を左に曲がり、「Rare Books」の看板をくぐると…
レアブックルーム。この薄暗さがまたいい

ここには、もう生産されていない本や、海外の珍しい書物が置かれている。私が来たばかりの頃、店長は「この部屋はどんなルームにしようかな」と構想段階であったが、レアブックというテーマが決まり、無事部屋が完成した。

日本語の本も発掘された。「読んでくれ」と言われ開いてみると、漢文をカタカナで書き下したような難解な日本語で、到底読むことができなかった。「なんで日本語なのに読めないんだ!」店長に怒られた。

●階段を降りると、広がる庭

(9)幸せすぎて足がふらつく「階段」

さて続いては、本屋に後ろ髪を引かれながらも一旦出て、下の階に行ってみよう。

階段の入口にある看板。「本を愛する僕達の家族ならば、下へどうぞ」と書いてあるらしい
階段を降りて、振り返ったところ

本屋の感動で心はお腹いっぱいなのに、下の階まであるんですか、ああそうですか、私、一体どうなっちゃうのお〜〜と思いながらソワソワ降りていくと、庭とカフェに繋がっている。

(10)どの席に座ろうか悩んでしまう「庭」

くねくねした小道が素敵。手前の看板には「タバコポイ捨て禁止」と書いてあるらしいが、アラビア語だとなんでもかわいい
席がとにかくたくさん

階段を降りると庭に着く。この庭はなんと言っても美しい。そういうタイプの庭なのである。この庭は「ヨルダンの素敵な空間」として有名らしく、世界的に著名なアーティストがここでライブを開催したこともある。

●目が釘付けになるカフェ

いよいよカフェに入る!!

そして何と言ってもカフェだ、カフェ。「本屋」に寄るのは月1で十分かもしれないが、「カフェ」なんて週になんぼ行ってもいいのである。実際、毎日くる顔馴染みの客も多くいた。

本屋併設ということでアカデミックなオーラを醸しているのか、お客さんは経営者や勤勉な学生などが多く、客層がベリーグッド&ほとんどの客が英語堪能だった。

(11)来客を出迎えるカウンター

始めて来た時、素敵すぎて倒れそうになった

カフェの扉を開けると、目に飛び込んでくる木のカウンター。本当に目に飛び込んでくるのだから、困ったものである。岩のゴツゴツ加減、看板の文字やペイント、というかもう全てが調和して、一体どこから見たらいいのかさっぱり分からない。目が足りない。

困惑していると、当店のバリスタが「メニューにお困りですか?」と注文をサポートしてくれる。「いえ…この空間に釘付けで、メニューをまだ見ておりませんでした」としか言えないのが通常である。

(12)壁に沿ったソファがいかにも中東らしい、店内席・テラス席

天井のアートやメニュー版もまた、私が来る前にいた海外スタッフが描いたのだそう

カフェの室内席。どの席にも、クッションがこれでもかと置いてある(中東インテリアでよく見られる光景)。キーカラーの水色は、自然な岩の色を邪魔しない塩梅で、素敵なアクセントとなっている。

店長がくつろいでいるだけでも、いい画になる

テラス席も「壁に沿ってソファがびっしり並ぶ」中東らしい空間づくりがされている。車のタイヤを活用したこの席は特に、喫煙者たちに大人気だ。みんなタバコとコーヒーを片手に、ぼけっとしたり、本を読んだり、絵を描いたり、チェスしたり、おしゃべりしたりと、思い思いの時間を過ごしている。

●STAFF ONLYエリア

(13)大工ルーム

いつもポーズしてくれるアリス大先生

さらには大工用の部屋もある。ここには木材やペンキ、そしていろんな機械が揃っており、使い放題だ。技術のあるスタッフが「ここに棚があるといいんじゃない?」「カフェにメニューボードがあると素敵じゃない?」とどんどん制作していた。

例えばこのジャム売り場を作ったり。詳しくは「大工の仕事編

(14)住んでいた家(崩壊)

ところで当店のスタッフは8人いて、そのうち4人は隣の「住み込みハウス」に住んでいた。住むと言ってもここで過ごすことはなく、本当にただ「荷物を置いておき、寝るために帰るだけ」の場所だった。

室内の壁も岩造り。中東の古民家的な感じだろうか

この家は、あまりに隙間風がするし、天井や壁がボロボロと崩れているし、「壊れそうだよね」と話していた。しばらくして私が日本に帰国したころ、店長から「あの家、壊れたよー」と連絡が来た。へ〜、家って壊れるんだ。壊れたって、徐々に?それとも突然?それともあまり考えない方がいいのか。

(16)住んでいた部屋(極寒)

その崩壊寸前の家にある一室。私とラウラの相部屋である。広々と(寒々と?)していて、「アラブの絨毯、ベッド、以上!」という感じ。本当に寒かった。そして毛布に関してはゴワゴワ…というよりカスカス?で、あたたかい空気を含むこともなく、熱を全て逃すただの重い布だった。

家に関してはあまりに寒すぎてつい文句ばかり紹介してしまったが、突然「泊めてくれ」と押しかけてきた私にこうして提供してくれて、感謝感謝である。

●以上、本屋のルームツアーでした

ふう…、長くなってしまったが以上が当店のご案内であった。ぜひヨルダンに行った際は寄ってみてほしい。または私のように、「この本屋に行きたいからヨルダンに行く」でも、十分価値のある店である。

この記事で、それが伝えられていたら嬉しい。
ご来店をスタッフともどもお待ちしております。

●次の話:この本屋でどんな仕事するの?

第1話はこちら
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