『とまり木をください』松谷みよ子詩集
『とまり木をください』
松谷みよ子
絵・司 修(つかさ おさむ)
筑摩書房 1987年6月25日 第1刷発行
外見としては、60頁ほどの薄い詩集です。しかし、中身には、途方もなく重い重量があります。
「あとがき」によれば、「あるひとりの子が、いじめによる死」を選んだことから、松谷みよ子の心の底の沼の水が、煮えたぎります。55頁
いじめを主題とする詩のかたちをした言葉の群れです。
怒りと悲しみと憎しみと悔しさなどなどの感情が沸騰しています。
それでいて、表面的には小学生でもよくわかる、やさしいことばだけで、つづられています。難解なことばは、ひとつもありません。
「もし、投げこまれた石によってのたうつカエルの一匹が、叫んだら、そのひとたちの心に、小さな穴がプツンとあきはしないだろうか。心の扉が、開いてはくれないだろうか。」56頁
この本が書かれてからでも、45年に近い年月が経過しました。
しかし、今でも、いじめはあります。いじめる子がいて、いじめられる子がいます。
学校の図書館の棚に、ひっそりと眠っています。時が来て、それを読むべきものを持つ子どものために、めざめる本の一冊です。
現在ならば、電子書籍の形にしておけば、スマホの画面で、誰にも知られずに、ひっそりと読めることでしょう。子どもたちのために、無料で公開していただきたい一冊です。この本を、いつでも子どもたちの手の届くところに置いておくことは、わたしたちおとなの義務とすらいえるでしょう。
画家の司修さんは、忙しい仕事の中でも、急いで挿絵を描いてくださったそうです。迫りくる死の影の恐怖が、ありありと透けて見えます。松谷みよ子と唱和するメッセージが、明白にこめられています。
イラスト/いそろく
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