さめざめ暴書「あたしがいなくなれば」
昔から漠然とこの世から消えたいと思うことがある。
でもそれはかなりライトな思考であって、正確にはこの現実から逃げたいという意味なんだと思うようにしている。
「私、〇〇君のセフレなの。」
渋谷の安い居酒屋でビールの入ったジョッキを持ったまま、少し鼻についた言い方で友達に言われたことがあった。
その時、私は息を呑んだ。
だって、◯◯君とは私の彼氏だったからだ。
仲の良い女友達が、いま目の前で言ってる言葉が外国語に聴こえた。
「ナニヲイッテルノカワカリマセン・・・・」
こーゆー時、私は私で嫌な女だった。
「そうなんだぁ。」透かした言い方で返す。
「サオリちゃんもセフレなんでしょ?」
食い気味で私の反応を伺うように言う。
「え?違うよ〜。」
私は平然を装った。
彼と付き合ってることは当時、みんなに内緒でと言うか
内緒にするようにと彼氏に言われるがまま言うことを聞いていた。
今、思えば付き合ってることを周りに知られたら面倒なことがたくさんあったのだろう。だから秘密を守って、友達にも言ってなかった。
そしたらまさか、その友達から葉っぱをかけられるとは。
女子会の酒の席で言われたその時から、私は友達ではなく男をとった。
友達の前では知らん振りをして、女子会が終わると彼氏にすぐ連絡をした。
「〇〇ちゃんとセフレなの?」
「え!!あいつそんなこと言ったの?でもお前と付き合う前の話だよ。」
事実、それは本当のようだった。
私と付き合う前までのセフレ、でも私と付き合ってからはそれがなくなって
友達がそれを不審に思い、私にそんな暴露をしたのだった。
このことが浮き彫りになって、私と彼が付き合ってることを友達にちゃんと話すと
友達が逆上をした。
「あんな奴のどこが良いの?私はもうあいつとはヤらない。だからサオリちゃんも、あいつと別れなよ。あいつ他にも女がいるよ。」
付き合って幸せだった数ヶ月が一気にばらばらに砕かれていく。
私も友達と一緒に彼を非難して別れるべきなのか、他の女もいるとは本当なのか。
大好きだった彼の裏側がどんどん暴かれる。
彼を問いただすと他にも女がいることが分かった。
私よりも前から続いてる女性が。
しかも、その女性とも付き合ってるような言い方をした。
もう何がなんだか分からなくなっていく。
本当に友達が言ったことは正しかったのか。
だからと言って、急に友達と一緒に彼の悪口を言いたくない。
そんななか「彼と二度とヤらない。」と啖呵を切った友達が数ヶ月後、また彼とセックスをしていた。
それを知った時、信じてたものがどんどん信じられなくなっていたのだ。
今まで彼と築いてきた平凡な幸せは何だったのか。
ぜんぶ知らなければ良かったものなのか。
彼も友達ももう信じられない。
その頃くらいから心の薬を飲むようになり、やめていた腕のお絵かきも増えていった。
あたしがいなくなればいいのかな。
あたしが友達の目の前から、彼の目の前からいなくなれば
ちゃんと哀しんでくれるのかな。
泣いてくれるのかな。
あたしがいなければ、友達も不幸にならずに済んだのかな。
あたしがいなくなればいいのかな。
当時はそんなことを思っていたような気もする。
もう歌で浄化することでしか生きる術はなかった。
怒り狂う友達に対して、私は同じ熱量で怒ることができなかった。こんな時は冷静になってしまう自分が悲しい。
だのに普段、あまり他人に物を言えない性格の私の黒い心を丸ごと吐き出したくなる時がある。
「ふざけるなよ、ふざけるなよ、ふざけるなよ。」
この部分を歌う時、その都度その都度の「ふざけるなよ。」の魂の色も形も違う。
それでもいつだって、私の心の中にはこの言葉がぶら下がっている。
この曲を作ったことで、私はまた生きると言う選択肢を選ぶことができた。
この数年後もその男にも友達にも何度も似たようなことをされたから、結局は私の男と友達の見る目がなかったんだと思う。
いつだって自分のせいにするのが楽なんだ。
あたしがいなくなればいいんだって思うようにね。
歌詞
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