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法人用クレジットカードを軸にしたAll-in-one-finance Brex(米)

今日は、アメリカのスタートアップ向けクレジットカード事業を展開するBrexを紹介します。日本では、最近大きな資金調達を発表しているUPSIDERが類似の事業を展開しています。

Brexとは?

Brexは、スタートアップ向けに特化した法人用クレジットカードを提供しています。
シードアクセラレーターの名門Y Combinatorに採択されて、2017年4月に設立。そして、驚くべきことに2018年10月には時価総額$1,100Mとなり、設立から1年半でユニコーンになっています。

直近では、2021年にも資金調達を実施しており、これまでの調達総額は$1.5B、時価総額は$12Bです。

Brex登場前のB2B決済

法人用のクレジットカードというのはBrexが登場する以前から存在はしていました。日本でも取引先との飲食代の支払いなどにコーポレートカードと呼ばれるクレジットカードが使われていました。
しかし、法人間の取引でクレジットカードが使われる割合はとても少なく、アメリカでもBrex登場以前は95%以上が請求書払いや小切手でした。
日本でも、未だに支払いは請求書で振込払が当たり前で、毎月紙の請求書を発行して郵送したり、経理の担当者が銀行に行って振込手続きをするというところもまだあるかと思います。

Brexの何がすごいのか?

けっこう不便なのに、なぜか変わらない商慣習に、絶妙なタイミングとアプローチの仕方で切り込み、一気に登っていったところにBrexのすごさがあると個人的には捉えています。

絶妙なタイミングとアプローチという観点では、スタートアップへのリスクマネー供給が増加し、十分な手元資金を持つスタートアップが増えてきたタイミングで、スタートアップ向けに特化してスタートしたことが挙げられます。
そのため、オンラインですぐに作ることができて、個人保証を与信に使わない、限度額をB2B決済に使える大きさにするというこれまでになかった法人用クレジットカードが登場しました。

Brexのマーケティング

Brexは、サービスローンチ前に、Linkedinで1,000人以上にDMして100社の初期顧客を獲得し、徹底的に顧客の声を聞いてプロダクトを磨きこんでからローンチしたという話が有名ですが、もう一つの特徴として屋外広告の活用が挙げられます。

共感獲得型のマーケティング

これまでなかった新しいサービスを世の中に浸透させるときのマーケティング手法として共感獲得型のマーケティングがあります。これは、まずは少ない人数で構わないので、きちんとストーリーを伝えて自社サービスに共感してもらい、協力者になってもらうところからスタートします。
日本だと、ネット専業型保険の先駆けであるライフネット生命やスキルマーケットのココナラがこのようなマーケットアプローチをとっています。

Brexも、徹底的な顧客ヒアリングやオンライン広告最適化で、自社プロダクトがどこに一番刺さるのかをデータドリブンに探り、マーケティングの基軸となる層を絞り込みました。そして、イベントやピッチで徹底的に直接ストーリーを投げかけます。オフラインで、顧客に近い場所へ趣き、プロダクトの有用性を解くことで、Brexへの共感を獲得し、積極的にレビューを発信してくれる協力者を着実に積み上げていきます。
そして、一定の共感が獲得できたタイミングで、屋外広告へと積極投資しました。(上図でいうと、一番左上)Brexにとっての屋外広告は単なる強制視認の媒体ではなく、サンフランシスコというスタートアップがたくさん集まる街をジャックすることによってスタートアップ内でBrexが浸透しているという雰囲気づくりを行いました。

Brex Cashについて

Brexは、All-in-one-financeを掲げており、クレジットカード決済以外のB2B決済へと事業を拡大するためにBrex Cashをローンチしました。
Brex Cashは、疑似ネットバンクで、オンラインですべての入出金を管理できる法人口座のようなものです。

Brex Cashによって、クレジットカード以外の決済データもBrexに蓄積されるため、与信の精度は飛躍的に向上します。その与信の仕組みを活用して、Instant Revenueという未入金の売上を即時現金化するクラウドファクタリングのようなサービスも追加しています。

Brex Premium

さらにBrexは、経費精算、支出(請求書)管理のSaaSを提供するBrex Premiumというサブスクリプションサービスも2021年4月に開始しました。
決済に課金するというトランザクション・モデルがメインとなる金融ビジネス(Fintech)から経費精算、支出管理といった経理関連の業務を効率化するHorizontal SaaSの領域に進出してストック収益にも注力しはじめたようにも見えます。

SmartApproachもスタートアップ向けに特化したサービスという意味で、Brexのマーケティングは大変参考になる事例でした。また、今後どのような成長戦略を描いていくのかもとても興味深いです。

SmartApproachとは?

よいサービス、製品が、きちんと世に広まる社会の実現を目指して、これからサービス、製品を広めていくスタートアップ(挑戦者)のマーケティングとその資金をサポートするSaaSプロダクトです。


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片山 幹健 |Social Bank
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