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現代短歌の楽しみ(歌集を紹介するよ)


 「現代短歌」とはいうものの、現代の人にあまりなじみのあるものではない。
 おおかたの人は、せいぜい「あーね。五七五七七のあれね」と言うくらいのもので、それらしい一首を覚えているわけでもない。そもそも私がそうだ。三十一文字を口に出せるといっても、百人一首をいくつか覚えていればいいい方だろう。そしてそれは「和歌」であって、現代短歌ではない。
 とはいえ、俵万智の『サラダ記念日』を思い出すことができれば、現代短歌はぐっと身近になるだろう。

 この味がいいねと君が言ったから七月六日はサラダ記念日

 「嫁さんになれよ」だなんてカンチューハイ二本で言ってしまっていいの

 あたりなら、聞いたことがある人も多いと思う。そして、「短歌」という言葉がまとう「ふるくさい」「むずかしい」「おもしろくなさそう」「年寄りの趣味」といったイメージも少しは遠のくのではないだろうか。
 ということで、短歌のことなど何も知らない私が最近読んだ本のうちで、面白かったものを紹介する。この手の本ってめったに重版なんかかからないので、本屋でぱらぱらと見て気に入ったら即購入をお勧めする。詩集や歌集というのは、なんといっても世間の評判より、自分の肌に合うかどうかが一番なのだ。

三田三郎『鬼と踊る』(左右社)

 これは、作者が何をしている人か、いくつくらいの人かも知らないまま、本屋で一目ぼれして買った本。

ずっと神の救いを待ってるんですがちゃんとオーダー通ってますか

シュレッダーに死者の名刺を食わせればもっとよこせと唸りを上げる

万札はテーブルに叩きつけるため持ってきたわけではないでしょう

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雪舟えま『たんぽるぽる』(短歌研究文庫)

 これは、下の『桜前線開架宣言』で知った人。面白そうなので、歌集を買ってみた。タイトルがかわいいけど、中身も大当たり。

薄っぺらいビルの中にも人がいる いるんだわ しっかりしなければ

真昼のような青い夜空だ あの人にそうだなおっぱいをあげたいな

満員のエレベーターでは人はみな上を向いて苦しい一輪挿しのようだ

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加藤千恵『ハッピー☆アイスクリーム』(集英社文庫)

これも下の本で知った人。同タイトルの17歳の時の処女歌集に、五つの短編小説を加えて一冊になってるお得な文庫本。大学の先生みたいな名前とは裏腹に、小説も短歌も才能あふれるラノベのようなみずみずしさ。

歩道橋に立って遠くを眺めてた 空は近くて遠くは遠い

いつどこで誰といたってあたしだけ2センチくらい浮いてる気がする

まっピンクのカバンを持って走ってる 楽しい方があたしの道だ

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山田航『桜前線開架宣言』(左右社)

これは「Born after 1970 現代短歌日本代表」というサブタイトルの通り、70年生まれの大松達知から91年生まれの小原奈実まで、40人の歌人を取り上げアンソロジー。すっごいたくさんの今どきの短歌が載ってるので、センスが合う人を探すのも楽しいし、意外な言葉の紡ぎ方に頭を撃ち抜かれたりするのも楽しい。

出口なし それに気づける才能と気づかずにいる才能をくれ 中澤系

体などくれてやるから君の持つ愛と名の付く全てをよこせ 岡崎裕美子

レジ袋いりませんってつぶやいて今日の役目を終えた声帯 木村龍也

月を洗えば月のにおいにさいなまれ夏のすべての雨うつくしい 井上法子

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