「筆先三寸」日記再録 2005年9月~12月


2005年9月7日(水)

▼おかげさまで最近は、パソコンで文章を書かずに、紙にばっかり字を書いている。べつに原稿用紙に向かったり、白紙に入魂の文章をしたためているというわけではない。
 ただぼんやりと、広告の裏や新聞の余白や、使いさしのノートの空いたところに、万年筆で適当に字を書いている。目についた漢字を書いたり、家族の名前を書いたり、新聞記事を写してみたり。お気に入りの万年筆なら、それだけでずいぶん楽しいことに気がついて、けっこうな時間を潰してしまったりする。
 と、そうこうしていて出合った、(私個人にとっての)グッドニュースとバッドニュース。
 バッドニュースからいくと、私は、ここしばらくツバメノートを愛用していて、紙質にも書き味にも大変満足していたのだが、これがどうも最近具合が悪い。先日まで使っていた、「安物のペリカン+ペリカンのインク」および、「ロットリングのペンとインク」でなら、大変快適に書けていたのに、今使っている、「ラミー2000+セーラー極黒」や「先のペリカン+モンブランの新インク」では、さっぱり書けないのである。ペン先がすべるような感じがして、インクののりもまったくよくない。趣味や道楽は関係なく、仕事で常用しているノートなのに、これには大変困っている。
 で、グッドニュースの方は、その「モンブランの新インク」で、つい先日、セピアと一緒に出た「レーシング・グリーン」のことなのである。レーシング・グリーンとは、聞きなれない緑色の名称であると思うが、一番いい例は、たまに見かける英国高級車ジャガーの深緑だと思う。あるいは、「サンダーバード2号」。ところが、このモンブランのグリーンは、名前につられて買うと大失敗する。見事に「抹茶の緑」なのである。モスグリーンやオリーブというより、完全に抹茶である。ただし、そう思って買うと、これがなかなか渋くていい。
 とくに、万年筆のインクらしく、太目のペンでゆったり書くと、黒に近い緑から宇治金時の染みくらいまで、きれいな濃淡が出て、書いていてとても楽しい。

 というわけで、今度はノート界を放浪中なのである。定番であるコクヨのキャンパスも、今ひとつなのがわかった。今のところは、無印良品の再生紙ノートがいい感じなのだが、ほかにいいノートはないだろうか。

▼サイが、どこかで光電話が安いと聞いてきたらしく、「うちも光にしよ」と言い出した。
 これこそ、渡りに船、願ったり叶ったり、飛んで火にいる夏の虫である。私が、間髪をいれず、「いこいこそれいこ、光OK光最高、すぐいこすぐ申し込も、ほれほれ電話かせ電話」となったのも当然といえよう。
 なにしろ、私の家は、現在ADSL12Mを導入しているのだが、いろんな速度計測サイトではかっても、680kbpsがいいところなのである。そこ笑わない。さすがに、ダイヤルアップ&テレホの頃のように、ファイルサイズが2Mを超えるとダウンロードをあきらめるというようなことはなくなったが、フラッシュ見るだけで待たされるのは、我慢ならない。
 NTTに電話すると、工事は11月ごろになるらしい。急いでいるわけではないが、待たせるにもほどがあると思う。
 ま、それはともかく、近く数Mbpsの世界がやってくるのである。下手すると数十Mbps。
 いやあ、久しぶりに「ネットランナー」買わないといけませんか。nyも入れた方がいいでしょうか。そうすると、あんな動画やこんな画像やそんな楽曲が、ウハウハ無料でとり放題ですか(著作権注意)。
 期待とか胸とかその他いろいろ、ほんとに目いっぱいふくらみますな。


2005年9月12日(月)

 8月19日の日記のとおり、やっぱり自民党が圧勝したわけで。おまけに、今日の朝日の夕刊には、「野田氏、復党に含み」なんていう見出しもあったりして。私の予想もなかなかであるなあと自画自賛しようとしたものの、そんなことくらいよほどのへそ曲がりでなきゃ誰だって思ってたよな、と気がついてしまう謙虚な私。とりあえず、自民党のこととか選挙のこととか、ちゃんと考えたい人は、ここ(リンク切れ。官僚系の日記だったと思う。2023年9月4日註)とかを読んでおきましょう。さすがはキャリアと、その質にも量にも圧倒されるばかりです。同じ公務員で、どうしてここまで書くものに差が出るのか、われながら不思議です。

 ここで私は、自民党の圧勝の理由を考えてみようとは思いません。小泉のイメージ戦略がとか、国民の閉塞感がとか、民主党の政策アピールの中途半端さだとか、思いつきのようなフレーズが、新聞やテレビで撒き散らされていますから。適当にそれらを貼り合わせれば、いくらでももっともらしいことが書けると思います。だからそれはほかの人に任せます。

 私が今回の選挙で感じたことはいくつかあります。「どぶ板より政策、ていうかインパクトだよな」とか、「小選挙区制度ってすげーな」とか。
 しかし、一番如実に感じて、少なからず暗然としたのが、「あーあ、戦後民主主義教育が育ててきたサヨクって、ほんとうに死んじゃったんだなあ」という感覚でした。誤解を招く言い方ですので少し注釈を加えますと、ここでの「サヨク」は、「ガチのアカ」や「反日分子」のことではありません。もっと穏やかな、天下国家や世界経済より、身の回りの人々のレベルから政治や経済を考えてみようとする人々のことです。
 ここ数年でのネット上での議論や、大手サイトの言説なんか(加えて、最近のコヴァ信者の増大固定化とか、『マンガ嫌韓流』の売れ行きとか)を見ていると、大きな流れとしてあることは感じていましたが、まさかこれほどまでとは、というところです。だって、「投票率が上がって」、しかも「都市部」で、自民党が勝つんですから。
 国民の経済格差は広がるばかり、社会保障は年金制度含めて崩壊しかけている、景気は上向いてるらしいのに閉塞感は変わらない、高齢者や障害者に厳しい方へと政策は進む、治安にしても教育にしても国の根本のはずなのに迷走中。国民に、もしそういう実感があるとすれば、それは(この間の政治を担っていた)政権党の責任以外の何物でもないのに。
 かつてなら、きっと、「ここでもっかい小泉はないよな」とサヨク的な言説が広まって、民主党や社民党にもう少し票が流れたような気がします。にもかかわらず、今や老親を抱えて本人リストラという、痛みばっかりモロに浴びてる層だって、自公に投票してるような感じです。

 私自身は、「サヨクでけっこう」と開き直ってるんですが、そんなこんなで、今回の結果ばかりは、なんともやりきれないものがあります。


2005年9月17日(土)

 金曜日の夜のことである。テレビ東京系の「TVチャンピオン」で、「アキバ王選手権」だとかいうのをやっていた。
 「秋葉原」には一度しか行ったことないのだが、大阪には「日本橋」があり、それこそ電子パーツ屋とオーディオ屋がひしめいていた時代から、その変貌をつぶさに見てきた私としては、秋葉原の同じようなオタクシティ化をじっくりと見ることができて大変面白かった。
「ほうほう、これがメイド喫茶か」
「なるほど近ごろの声優は」
「しかし、この程度でヲタを名乗るとは、こいつらは」
 などと、晩酌の膳を前にしながらつぶやいていると、なおちゃんがぼそりと言った。
「お父さん……アキバ系やな」
「な……、あ、あ、あほ言うな。おとうさんはちゃうっちゅうねん」

 なんぎな誤解である。こう見えても、お父さんは若い頃、「ポパイ」を創刊号から買ってたほどのおしゃれさんなのであるぞ。私服通学で知られた高校で、一番最初にメンズ・ビギを着ていったほどなのであるぞ。当時創刊された「アニメージュ」など、今日に至るまでただの1冊も買ったことなどないのだぞ(「OUT」は買ってた)。ネコ耳にメイド服ごとき、四半世紀前からチビ猫に萌えておったのであるぞ。あれ?
 いや、だから誤解なんだって、なおちゃん。
 当時、お父さんの属していた由緒正しいSFオタクと、現在の主流であるアニメオタクが、どれほど対立していたか話して聞かせようか。一晩かけて。それが、「DAICON III」のオープニングアニメで止揚に向けての光明を見い出し、「ヤマト」の軋轢を捨て、「ガンダム」「イデオン」を経て、お父さんも加わった「DAICON IV」のオープニングアニメこそ蜜月時代の始まりを告げるファンファーレだったという話を、じっくり語ろうか。週末つぶして。
 だからそれは誤解なのだ。お父さんは、(現在の)アキバ系でもなければ、ましてや「萌え~」などと叫ぶヲタでは決してないのだ。

 そんな話をしようとした瞬間、テレビに出てきた審査員を見て私は声を上げた。
「あ、岡田さんや。久しぶりに見るなあ」
 すかさず、サイにつっこまれた。
「そんな人(岡田斗司夫)を、知ってるという時点でおかしいわ」

 それはともかく、声優ひとつとっても時代は変わったのだなあとの感慨しきりである。こっちの時間は、日高や林原で止まっているというのに。メイド喫茶はどうでもよいが、ゲームキャラなど手も足も出ない。(ゲームではないが)なんとか「マリみて」が限界である。
 おかげで、途中から沈黙してしまったお父さんの横顔を見つめるなおちゃんの表情も、心なしかさみしそうである。
 私は、チャンピオンの夢破れて引退したボクサーが、息子にたるんだ腹を見られてしまったような気持ちになった。「お父さんは強かったんでしょ。お父さんはチャンピオンだったんだよね」と、すがるような目で幼い息子に問いかけられた、元ボクサーのような気持ちがした。
 私は、小さく唇をかんで、心の中でつぶやいた。

 悲しむな、なおちゃん。見ていろ。お父さんは、きっとまだ戦える。

 いきなりの過重なトレーニングは身体を壊すだけであることを知っている私は、今日の仕事帰り、久しぶりに駅の売店でジャンプを買って、帰りの電車で熟読した。通勤電車でジャンプを読むなど、おそらく十年ぶりくらいだ。そしてきちんと、「銀魂」で吹き出して見せた。
 大丈夫、まだまだ身体は動く。
 しばらくは自宅のストックと、インターネットで軽いトレーニングを積みながら、様子を見て日本橋へ出かけることにしよう。最初のうちは、血を吐くことになるかもしれないが、ロートルにはそれぐらいの負荷でもかけないと現役復帰は無理だろう。
 なんといっても、3日前に42歳になったくらいなのだから。

 ひょっとして、ものすごい勢いでまちがってますか。


2005年9月25日(日)

最近読んだ対談本から。

奥泉光・いとうせいこう『文芸漫談』(集英社/1600円)
 奥泉の文学的な直感や営みを、いとうが的確に解釈して突っ込んでいくという、非常に勉強になる対談本。もちろん奥泉の口振りは、いとうの突っ込みや、議論を盛り上げるための技巧であったりするので、ボケとツッコミの役割分担が非常に明確になっているといってもいい。普通に漫才みたいになってるところもいっぱいあるし(じっさい笑える)。
 ともあれ、私がどうして「セカチュー」を読めないのか、私が「本当に面白い小説」をどうして「退屈」であると感じるのか、などについて、ずいぶん明確になっただけでも、とても収穫があったように思う(でも、渡部直己の脚注はやっぱりウザイので注意)。

上野千鶴子・小倉千加子『ザ・フェミニズム』(ちくま学芸文庫/680円)
 「週刊誌のコラムレベルのフェミ」には、大概うんざりしている私だが、この本は本気で面白い。だって二人とも、「夫婦別姓? あほくさ」、「男女雇用機会均等法? ろくなもんじゃない」という感じなのである(それがなぜかは本文参照。私はいちいち腑に落ちた)。それと、この本に男の悪口はほとんど出てこなくて(すでに言うのもバカらしい?)、女(よそのフェミとかキャリアウーマンとか専業主婦志向とか)の悪口(?)ばっかり書いてあって、それもとても面白かった。
 ところが、じつをいうと、そんなこと(フェミ話)よりなにより、いちばん面白かったのはこの本の対談の具合なのである。
 普通、対談というと、インタビューとか先輩後輩ものとかのような「承り系」と、同じ方に向かって難しいことや建設的なことを話す「読者に講義系」の二通りしかないと思っていた(「宮台×宮崎」本や、上の『文芸漫談』は、後者の典型である)。しかし、この本は、「ぶつかり系」というか、「ガチで議論系」というか、互いにゴンゴン突っ込み合うのである。「私はそうは思わない」とか、「嘘つき」とか、「説明してください」とか、そんな感じで互いの認識やズレや曖昧な部分をびしびし指摘しあって突き詰めたりする。これが男同士の対談なら、たいてい大喧嘩になってると思うくらいである(男の議論って、いつのまにか「相手に勝つ」が目的になるからね)。
 おかげで、私はこの本で、「質問」というものの威力を痛感した。これまでに読んだ対談本の中で、いちばんスリリングで面白かったかもしれない(でも、遥洋子の解説はやっぱりウザイので注意)。

 対談本では、ほかにも春先に出た、内田樹・名越康文『14歳の子を持つ親たちへ』(新潮新書/680円)というのもあって、こちらも近年の対談本では出色。とりあえず、子持ちは必読といっていいかもしれない。なんのためにもならないけど。て、どっちやねん(実はどっちも正解)。


2005年10月4日(火)

 なんといっても悪いのは、ジュンク堂書店大阪本店であるといえる、かもしれない。
 ことのおこりは、みなさんおなじみの「アキバBlog」である。この記事を目にした私は、「お、11巻出たんや。こら買わんと。なおちゃんもともちゃんも喜ぶでぇ」と、夜中にちょっと喜んだ。
 それでも仕事だなんだで、やっと昨日、仕事の帰りに本屋へ立ち寄ることができた。それが、ジュンク堂書店大阪本店なのである。私は、梅田でマンガを探す場合は、ここか阪急グランドビル30階の紀伊国屋と決めている。どちらもかなりの品揃えで、一般的なコミックならまず見つけられないということはない。

 ところが、その頼みのジュンク堂には見当たらなかった。一応店員にも聞いてみた。ずいぶん待たされたが、きちんと調べて答えてくれた。
「えーと、それは、初回限定版というのがあったんですが、すでに売り切れたようですね。そのあと、通常版というのが出るはずなんですが、これがいつになるかは、ちょっとわかりません。10月の発行予定にもないようですので」
 えー、いや、あの、べつに、私は、初回限定版とかアクションフィギュアとかはいらないんですが。単行本がほしいだけですから。そんなもん、もう出てるのわかってて、11月まで待てません。

 私は腹を括った。よーし、買うたらええんやろ、買うたら。こっちは大人じゃ、1200円やそこら高いところで気にもするかぁ。かわいい子どもが待ってるんじゃ。
 というわけで、私は初回限定版を探すことにした。
「ふーむ。グランドビルは遠いな。ここはやっぱり、ものがケロロだけに……よし」
 私は、職場では決して見せることのない決断力を発揮して、その場できびすを返した。目指したのは、大阪駅前第3ビル地下1階、「ゲーマーズ梅田店」である。ここは、極端なほど「大きなお友だち」向けに偏っていて、以前からよく立ち寄っていたので(特に理由は秘す)、ケロロもきっとあるだろうと踏んだのである。

 歩くことほんの数分、店舗に一歩入った私は小さく叫んだ。「ビンゴ!」。めざす『ケロロ軍曹 第11巻 アクションケロロパック』は、平台の中央、いちばん目につくところに積まれていた。即座にひとつを手にとって、レジに向かったことは言うまでもない。
 私は座れるところを探して、慎重に開封することにした。外箱を覆うフィルムすら、箱の上部だけを切り開いて、そっと中身を取り出した。
 お、単行本の表紙もフィギュア用で、通常版とはちがうんだ。へー、アクションフィギュアもおまけの域を超えているじゃないか。私は感心した。そりゃあ、これじゃあ大きなお友達の皆さんも先を争って、ご購入なさるはずだ。ひょっとして、二十年もすれば値打ちが出るかもしれない。

 そのあと私は、時間をかけてコミックスを一冊読み終えると(もちろんたいへん面白かった)、取り出すときよりもまだ慎重な手つきで、すべての封入物を箱に戻した。もちろんコミックスも、ツルツルした表紙についた指紋をぬぐいまでしてから、ブリスターパックの空きスペースに納めて、箱に戻した。
 私は思った。このまま持ち帰って子どもたちに与えるのは危険すぎないか、と。ともちゃんはまだまだフィギュアの扱いも乱暴だし、細かな部品なんてなくすに決まっている。なおちゃんにしても、手を洗うどころか、ポテチ食べながらマンガ読むなんて、日常茶飯事である。読みながら席を立つときなど、広げて伏せて置いたりするのである。いやはや本読みの風上にも置けぬ(って、私が神経質なのか)。

 そこで私は決心した。まあ、私自身は11巻が読めて満足したことであるし、子どもたちには11巻の通常版が出るまで我慢してもらおう、と。
 そんなわけで、『ケロロ軍曹 第11巻 アクションケロロパック』は買ったことも秘められたまま、限りなく未開封に近い状態のまま、私の本棚の奥深くに隠されることになった。なんだか、当初の思惑とはぜんぜんちがう方へ進んでいるような気もしないではないが、気にしないでおく。
 子どもたちは当然そんなことは知らない。身近に初回限定版を置くような大きな本屋があるわけでもないので、「ケロロ軍曹の11巻まだかなあ」と首を長くしている。

 許せ息子たちよ。11巻が出たら必ず買ってやるから。いつになるかわからんらしいけど。


2005年10月11日(火)

 三日前の夕刊みたいな話題からはじめて申しわけないが、先のクールで見ていたテレビドラマは、『電車男』(フジ)と『女王の教室』(NTV)だけだった。テレビドラマはほとんど見ない私が、二つも選んで見るのは珍しいのだが、どちらもとても面白かった。ま、後者については、むしろサイとなおちゃんがバッチリはまってたのだが。
 『電車男』についてはすでに語られつくされているので、内容に付け加えることは何もないが、個人的には、「やっぱりテレビドラマの王道はコメディだよな」に尽きる(昔、『ショムニ』のときにも同じことを思った。そういえばスタッフがかぶってるらしい)。気楽に見られて、素直に笑えて、次回が楽しみになるような。
 『女王の教室』は、初回から興ざめなエンドタイトルで最終回の腰砕けは予想できていたが、天海祐希のクールな演技と残酷な展開による前半は、なかなかよかったと思う。そして、ここで書きとめておきたいのは、「芝居の達者な小学生って結構いるんだな」である。
 ほかにも、私は見てないが(マンガは知ってる)『ドラゴン桜』なんかも、なかなか評判だったようだ。

 となると、次のドラマ化作品は、弓月光『エリート狂走曲』(集英社文庫)で決定!

 いやあの、シャレや冗談ではありませんから。本気ですすめてますから。まず、小学生の中学受験~進学校での競争がテーマで、子どもの奇抜な作戦で大人や学校が翻弄されるバリバリのコメディで、イケメン家庭教師や美人でセクシーな先生も出てきて、チューなんかもあって、etc.etc.……。ああもう、これがテレビドラマにできなくてどうする。
 とりあえずアマゾンの紹介文を引いておく。

 田舎から都会に越してきた、やんちゃ坊主・哲矢を待っていたのはお受験を控え進学塾に家庭教師と、勉強漬けな日々…。しかし! ムチャなスパルタ狂育に負けじと、哲矢の悪知恵炸裂! 個性的なエリートコース攻略を描く、学園コメディ!

 関西弁の腕白坊主が、受験志向の学校をめちゃくちゃにしつつ、最後は受験にまで勝利する、抱腹絶倒のストーリーギャグマンガである。加えてヒロインは、完璧なまでの元祖ツンデレ美少女美波唯(もちろん小学生)。お、こちらにもナイスレビューが(レビューは消えたようなのでWikipediaにリンクを張りなおした。2023年9月9日註)

 この傑作マンガを、まさに今、実写化しようと考えないドラマプロデューサーはモグリだ。『鬼嫁日記』なんかに二匹目のどじょうなんているかっての。


2005年10月29日(土)

▼敬愛するテキストサイターの半茶さんが、つい先日、大阪は梅田まで来たとか。本を買おうとして、グランドビル30階の紀伊国屋をパスされたのは正解のようです。あちらはコミック専門店なので。
 にしても、私の職場は梅田からせいぜい10分のところなのに、ちょっと惜しかったような気がします。声をかけてもらえれば、お茶の一杯くらい、いくらでもおごってもらったのに。え?

▼古本者ではない私にしてみれば、名のみ高くて手に入れる機会のなかった、早川の「異色作家短編集」シリーズですが、新大阪の書店で新装版を発見して迷わずゲット。どうやら、早川書房の創立60周年記念出版とかで、順次復刊されるようです。とりあえず初回は、R.ダールの『キス・キス』と、F.ブラウンの『さあ、気ちがいになりなさい』の2巻で、それぞれ開高健と星新一の名訳のまま刊行されるようです(後者のタイトルまでそのままとは)。
 レビューについてはまた気が向けば書きますが、各巻2000円で全20巻というのには、少々たじろいだのも事実です。新書に毛が生えたようなサイズの本に、いちいち2000円、それで20巻。
 でも、よく考えると全巻そろえても4万円、今ほしいと思っている万年筆1本よりずっと安上がりです。このクオリティの短編集が続くのなら、本当にお買い得のような気がします。つぎ(11月)はシマックとスタージョン。きっと値打ちはあるでしょう。楽しみです。

▼ついでに同じ本屋で、前から気になっていた、綺羅光『凌辱女子学園(完全決定版)』(フランス書院ハードXノベルズ/1500円)を見つけて購入。
 フランス書院とはいえ、おなじみの黒い背の文庫じゃなくて新書版のせいか、なかなか置いている本屋も少なくて、これはちょっとラッキーな気がしました。
 ただでさえ少ないうちのサイトの読者がますます減るような気がするので、内容や感想には触れないようにしますが、実用系では古今東西最強の1冊だと思います。実用とかいうな。

▼今日はたまたま、クロースアップマジックをレクチャーする機会があったのですが、相手が女子高生若干名ということで、本番前はちょっとドキドキしました。
 とくに、今回はスポンジ・ボールのマジックを主に考えていたので、相手の手にこちらの手を添えてボールを握らせるなどという手順も頻繁に出てきます。へんに緊張して失敗したらどうしようなんて心配までしてしまいました。
 しかしながら実際のところは、本気のマジシャンモードでレクチャーしたので、緊張も妄想も入る余地などありません。「ここでこうパーム」、「このバニッシュは徹底的に練習のこと」、「演技はメリハリが大切」などなど、きっちり「講師」をしてしまいました。
 でも、本当に今日の女子高生は可愛かったと思います。ちょっとしたマジックにもキャーキャー喜んでくれるし、前田知洋ネタなんてしようものなら大騒ぎするし、基本の技法を教えると10でも20でも必死で練習するし。毎日通勤電車で見ている、茶髪ミニスカのケータイイジリストとはえらい違いのような気がしました。
 ただ残念だったのは、自分の年寄りを実感したことです。少し前までは「真ん中高めのホームランコース」だったはずの、「細身色白で元気な女子高生」が、いつの間にか「外角低めの完全なボール球」としてストライクゾーンを大きく外れていたのですから。もちろん、親子ほど年も離れていますので、なんかもう完全に小娘、ていうか「娘がおったらこんなんか」っていう感じでした。「言戯」さんの、このエントリがすっごくよくわかります。
 ま、そのおかげで、落着いてレクチャーもできたんですけれど。


2005年11月3日(木)

 うおー、今日も「細かすぎて伝わらないモノマネ選手権」は面白かったー。腹いたいー。とくにあの辻本清美は反則やー。

 てな話はともかく、ついさっき二階からどたどたと駆けおりてくる足音がして、とっくに寝ているはずのなおちゃんが私の部屋に飛び込んできた。
「な、な、なんやなんや、びっくりするがな」
「ちゃうねんちゃうねん。あのな、今寝てたらな、蚊ァおるやん、蚊ァ、それがな、プーンて、顔のとことか飛んできてん」
 はあ、それで目が覚めたのか。って、それが部屋を飛び出してくるような話なのか。
「ほんでな、やっつけようと思て、電気つけてんけど、ともちゃんも起きて」
「ふんふん」
「ともちゃんが、蚊ァが耳に入ったかもしれん言うて、ずっと口開いてんねん。そんで、なにしてんのん?って聞いたら、『耳と口はつながってるから、蚊ァが出て行くかもしれん』やて」
「ぶははははは、あほかー」
 焼酎のお湯割を噴きそうになった。見ると、なおちゃんの後ろで、ともちゃんが歯の抜けた口を大きくあけて、ニカーっと笑っている。
「それで、蚊ァは出たか?」
 いちおう聞いてみた。なにが楽しいのか、ともちゃんは満面の笑顔である。
「出えへんかった」

 結局、話はただそれだけで、二人の子どもたちは声をそろえて「おやすみー」と叫びながら、どたどたと階段を駆け上がっていった。
 いったいなんだったんだ。お父さんに、今あった面白話を聞かせたかっただけなのか。お父さんを笑わせてやろうというだけだったのか。

 素晴らしいじゃないか。


2005年11月6日(日)

光キタ━━━ヽ(ヽ(゚ヽ(゚∀ヽ(゚∀゚ヽ(゚∀゚)ノ゚∀゚)ノ∀゚)ノ゚)ノ)ノ━━━!!!!

 今まではADSLといいながら、基地局から4km超の田舎のため、下り680kbpsそこらという「みなしナローバンド」環境に甘んじていたが、ついに本日その田舎を逆手にとって大逆転を果たすことができたのである。
 まずは今まで散々地団太を踏まされてきた速度計測サイトの結果をごらんいただきたい。

ブロードバンドスピードテスト http://www.bspeedtest.jp/ v2.4.0
測定時刻 : 2005/11/06 21:49:07
回線種類/線路長/OS : 光ファイバ/-/Windows XP
キャリア/ISP/地域 : フレッツ光 プレミアム/ODN/大阪府
サーバ1(さくらインターネット) : 40.6Mbps
サーバ2(NTTPC) : 36.7Mbps
下り受信速度 : 41Mbps(40.6Mbps,5.1MByte/s)
上り送信速度 : 8.9Mbps(8.87Mbps,1.1MByte/s)
コメント : フレッツ光 プレミアムの下り平均速度は32Mbpsなので速い方です。(下位から70%tile)

 なんと、「速い方です。」ですと! 「速い方です。」ですと! 「速い方です。」ですと!(しつこい)
 さすがに人口密度の低い地方に住んでると、ベストエフォート型のサービスでは有利なようです(ほんまか)。

 これでもう、「ザイーガ」紹介の面白動画も、「pya!」の動画ランキングも、ぷっぷくぷーのひょいひょーいで見られるわけですが(いやあの、マジ、今までの静止画像並みにさくっと開いて動き出すので、ちょっとびっくり中)、なんかえらい時代になったというか宝の持ち腐れというか。

 でもやっぱり、「動ナビ」のピックアップ動画ばっかりは手ごわいなあ。くやしいなあ(あ、いや、決して、それが目的で光にしたというわけではないんですけどね、決して)。


2005年11月10日(木)

祝 第七回雑文祭開催!

 ええと、なんとか参加したいのはやまやまなのですが。
 でも、「蒋介石の招待席」て。固有名詞の縛りはきついなあ。無理に開いてダジャレでこなすセンスはないしなあ。うーん、うーん。
 と、すでに困っておるむしまるなわけですが、この難渋が雑文祭の醍醐味でもあるわけで。

 初めての方も参加してみると楽しいですよ、きっと。


2005年11月21日(月)

 朝夕寒くなって、いよいよ冬の訪れを感じる今日この頃、皆様いかがお過ごしでしょうか。
 ていうか、普通に寒いっちゅうねん。
 それでも昼間は微妙にあたたかいので、まだ石油ファンヒーターも出してなくて、エアコンとガスストーブでしのいでいるわけですが、これが頼りにならない。

 まあ、個人的な文句はさておき、これから厳寒の季節を迎えるそんなあなたに豆知識。

 朝とか寒いじゃないですか。とくにあったかい布団から起き出して、眠いままネルのパジャマ一枚で洗面所に立つつらさといったら、思い出すだけで呪詛の言葉が唇からあふれます(旭川とかシベリアとか家中24時間暖かい、でも「暖房切れたら死ぬ」レベルの地域は除く)。そして、深夜、木枯らしの吹きすさぶ中を、歯をがちがち鳴らしながら歩いて帰るときの、骨の髄まで凍るようなつらさ。家に帰ってももちろん暖房は切れています。
 そんな時、石油ファンヒーターはなかなかつかないし、エアコンもそこら中のものをぶつけたくなるくらいかったるいし、最高温度のコタツにもぐりこんでも最強にしたホットカーペットにへばりついても、寒いばかりか着替えすらままなりません。

 そんなときの必殺技をあなたに。
 朝起きてきたけどめっちゃ寒い、家帰ってきたけど死ぬほど体冷えてる、そこですかさず!
 パジャマの襟元からドライヤーを! セーターの首のところからドライヤーの温風を!

 案外有名な技かもしれませんが、やったことのない方は、やけどに注意してどうぞお試しください。
 思わず声が出てしまうほど気持ちいいですよ。


2005年11月23日(水)

 昨日のことである。私は先だっての日曜出勤の代休ということで休みをもらっていた。
 午前中は庭の手入れや買い物を適当にこなして、午後から子どもたちの小学校へ授業参観に出かけた。
 ともちゃんは、算数の授業で繰り下がりのある引き算(13-6とか)を習っていて、教室の前で発表させられたりしていた。筆算の説明で、「13から6はひけません。1をかりてきて、10です。10から6をひくと、4です。その4と3を合わせて、こたえは7なります」と、これは(日ごろみんな繰り返しやっているのだろう)なかなかはきはきとできていて少し感心した。
 なおちゃんは、5年生の合同授業(音楽)ということで体育館での発表だった。なんのことはない、各クラスの合唱とか5年生全体での合奏とか、早い話がなつかしの「生活発表会」である。みんなそれぞれ真面目かつ達者に楽器や歌をこなしていて、ほほうとも思いかけたがよく考えれば5年生である。5歳や6歳であれだけのことを保育園でやってたんだしと思い出して、それほどたいしたこともないような気がした(なおちゃんごめん)。それより、1年生も5年生も茶髪金髪の子どもが一人もいなくて、学校の指導のゆえかそういう地域性なのかは知らないけれど、それはそれで意外な気がした。

 そして夜。ともちゃんが急に自慢をはじめた。
「きのうドッジボールしてんけどな、ともちゃんドッジボールめっちゃうまいねんで」
 おお、運動音痴のお父さんの子にしてはすばらしいではないか。
「ほんまか。やるやんけ。ほんなら、いっぱい当てたりすんのか」
「ううん」
「受けんのがうまいんか」
「ちゃうねん。よけんのん、めっちゃうまいねん」
「え」
「いっつもおどってるやん、いえとかで。せやから、こんな、こんなかんじで、ひょっと、とかな、しゃっと、よけてぜったいあたれへんねん」
 そう言ってともちゃんは、半身になって身体をくねらせたり、両手を上げて飛びのいたり、「めっちゃうまい逃げポーズ」をいくつか披露してくれた。

 そんなん、「ドッジボールがうまい」とは言えへんっちゅうねん。


2005年12月2日(金)

小川洋子『博士の愛した数式』(新潮文庫/438円)
 前前から読みたいと思っていたのが、文庫で出たのを見かけて即入手&読了。
 あー。ええ話やー。第1回本屋大賞にふさわしい、母と子と素数の物語である。
 素頓狂な“博士”の設定以外、これというストーリーがあるわけではないが、どこをとってもきらきらと、いとおしくなるような文章でつづられていて、ほんのちょっとしたシーンでも何度も読み返してしまう。
 セカチューやイマアイでは頼まれても泣くような私ではないが、この物語に出てくるオイラーの公式の美しさと、ラスト近くの「どんな打球でものがさず捕球できそうな美しいグローブを是非に、」という一節には真剣に胸が詰まって泣きそうになった。
 寺尾聡&深津絵里で映画化されるらしいが、寺尾聡はちょっとイメージが違うような気がする。深津絵里はルックス的にはイメージどおりだけれど、角の取れた芝居ができるかどうか。あと、江夏豊が特別出演で1カットでも出てくれたら完璧。

▼グループ魂が紅白に出るらしい。
 ご存じの通り、クドカン率いる劇団「大人計画」のメンバーで、平均年齢38歳とかのバンドである(ボーカルが阿部サダヲって)。当然、曲は「君にジュースを買ってあげる」になるのだろう。
 これは人気TVアニメ「ケロロ軍曹」の現在の主題歌でもあるので、子ども受けやオタク受けを狙っての選出であると思うが、NHKもよく聞いて選んだのだろうか。
 たしかに、「月収10万以下だけど、君にジュースを買ってあげる」とか、「恋ってやっぱりギブ&テイク」とか、「食事は君が払いなよ!」とか、ふつうに聞いていれば面白い歌詞ではある。ところが、クライマックスのリフレインでは、どんどんテンションを上げながら、「君にジュースを買ってあげる」から、「僕のジュースを半分あげる」「君に・僕の・ジュースを・あーげーるー!」とありふれた、しかしNHKには不適切な隠喩へとなだれ込んでいくのである。

 NHKの担当者は、シナロケの名曲「レモンティー」をよく聴いて反省すること。

▼年の瀬も近づくと、悩むのは来年の手帳である。この時期になると、文房具屋のみならず本屋でも手帳を並べ始めるので、いやでも考え込まざるを得ない。
 そこで、各種の手帳をそれぞれ複数年使ったことのある(年の功である)私が、長所短所について書いてみた。皆さんの参考になれば幸いである。


2005年12月5日(月)

 先週の話なのですが。
 ある朝、職場からちょっとしたお使いに出かけたところ、目的地の近くにある大きな交差点で普段とは違う気配を感じたのです。あたりを見回すと、ひとつの角に十人ほどの人だかりがあり、そばには窓を黒く塗りつぶしたバスまであります。他の角にも二人ずつくらい、工事現場の誘導員が持つような赤いスティックを持った人がうろうろしていました。なにをやっとんねんなにを、と思いかけたところ、先の人だかりの真ん中に映画撮影用でしょうか、大きなカメラがあるのが目に入りました。
 道頓堀や通天閣界隈ならともかく、この大阪でもかなり中途半端な場所で映画の撮影もあるまい、こりゃきっと警察やお役所の何とか安全ビデオとか何とか啓発ビデオとかの撮影だろうと安く踏み倒して、私は行き先へと足を早めました。
 私が交差点を渡りきろうとした瞬間、あたりに緊張が走るのがわかりました。たまたま私のそばにいた女性スタッフらしき人も、急に物陰に潜むようにして、トランシーバーで符牒のようなものを交し合いはじめました。
 私はそれでも足を止めずに歩きかけたのですが、そのとき遠くから車の排気音が響いてきました。
「なんか来る!」
 いくらなんでもこれは無視できません。私は足を止めて激しい音のする方へ顔を向けました。なるほど、爆音にふさわしい黒のオープンカーがこっちへ疾走してきます。
 オープンカーは、タイヤを鳴らすほどの勢いで私の目の前をカーブして去っていきました。ものものしい撮影部隊は、どうやらこの車を撮るためだったようです。私はちょうど、カメラとは交差点をはさんで対角にいたので、モロに写ってしまったような気がしました。
 そんな中で、私は首を巡らせて車を見送りながら、グラサン姿でオープンカーを駆る、そのドライバーをはっきり確認していました。
「た、た、竹内力!」

 次回作の「ミナミの帝王」では、「特別出演:むしまる」とクレジットを入れてもらいたいと思います。


2005年12月11日(日)

▼クリスマスプレゼントは、例によって自分で買いに行くわけですが、今回はLAMY2000の4色ボールペン0.5mmのシャープペンシルということにしました。すでに万年筆は持っているので、日常の用についてはこれでほぼ完璧な布陣となります。
 とりあえず今日も仕事だったので(またもや10連勤確定ってヲイ)、帰りにヨドバシカメラをのぞいてみました。だってヨドバシじゃ、上のリンク先同様、ラミーはむろんシェーファーでもペリカンでも3割引なんですぜ旦那。そのうえ10%のポイントもつくんですぜ大将。
 ところがもう、年末の日曜日とあって、足を踏み入れるだけで眉間にしわが寄ってきて、肩口からじわじわと殺すオーラが漏れ出してくるほどの人出。思わず、昔なつかしい吉野家コピペを思い出してしまいました。

 今日、梅田のヨドバシカメラ行ったんです。ヨドバシカメラ。
 そしたらなんか人がめちゃくちゃいっぱいでろくに歩けないんです。
 で、よく見たらなんか垂れ幕下がってて、クリスマスがどうとか書いてあるんです。
 もうね、アホかと。馬鹿かと。
 お前らな、ボーナス出た如きで普段来てないヨドバシに来てんじゃねーよ、ボケが。
 なんか親子連れとかもいるし。一家4人でヨドバシか。おめでてーな。
 よーしパパプリンタも買っちゃうぞー、とか言ってるの。もう見てらんない。
 お前らな、俺のポイントやるからもう帰れと。

 と、心底なつかしいフレーズをぶつぶつアレンジしながら、輸入筆記具のコーナーへ向かいました。
 すると、いつ来ても必ずあったはずのペンが両方ともありません。店員に確かめると今日に限って売れてしまっているようでした。
 チクショー!(小梅太夫調で)

▼家族で夕食を食べていると、ともちゃんが言った。
「お父さん、お父さんのかいしゃってな、こんなひとおんねんやろ」
「ん?」
「下忍と、サラリーマンと、ぶちょうさん」
 ええー。
「いやあの、部長はいてるけど、忍者はおれへんし。ていうか、忍者のいてる会社なんか聞いたことないし。ナルトの見すぎや。それに、サラリーマンはおるていうても、みなサラリーマンやがな。そんな、動物園には象とキリンと動物がいますみたいなこといわれても」
「ぶちょうさんがいちばん強いんやろ」
「お前、人の話聞いてるか」
「ほんで、あれもいてんねんやろ、あれも」
「あれってなんや」
「ガソリン番長」

 不覚にもそこでお茶ふいた。そんなもんおるかー!
 ネタか! ネタやな! 無理におもろいこと言おうとしてるやろ! お父さんを笑わすつもりやろ!

 素晴らしいじゃないか。
 となりでは、すでになおちゃんがへたり込んで笑ってるんだけど。


2005年12月14日(水)

 ひとりよがりの文房具話も、やっとのことでひと段落を迎えられそうということで、いましばらくお付き合いのほどを。

 さて、前回の日記でぼやいたLAMYの4CBPと0.5MPについては無事入手いたしまして、FPも入れてめでたく真っ黒ボディの3本組となりましたので、この子らのためにと思い、あわせてペリカンの仕切りつき革製ペンシース(3本用)を奮発しました。
 奮発といえば、じつのところ、今回私はそれどころではない暴挙に出てしまいました。
 12月ということで税金にごっそり持っていかれながらもボーナスをいただきましたので、上記の(家計による私への)クリスマスプレゼント以外に、こつこつ貯めたお小遣いをはたいて自分へのごほうびを購入したのです。

 M800 キタ━━━ヽ( ゚∀゚)人(゚∀゚ )メ( ゚∀゚)人(゚∀゚ )メ( ゚∀゚)人(゚∀゚ )ノ━━━!!!

 もちろんニブの太さはB。ばっちりしっかりの太字です。これも1本挿しのペンケースをあわせて購入しました。
 これで私の万年筆ジャーニーも、(次の出発までは)ひと段落ということになりそうです。
 思えば長い道のりでした。それまでは二十年で3本しか持ってなかったのに、今年の2月にウォーターマンの鉄ペンを買って以来、10ヶ月で10本以上買い集めたのですから。<バカ?

 というわけで、現在第一線で活躍する一軍の万年筆は5本ということに。
(1)セーラー ハイエース(細字)
 リンク先は個人ブログのレビュー。ホームセンターへ行けばビニール袋に入ってぶら下がってる千円以下のペンですが、気軽に使える手帳用EFとしてはピカイチの出来だと思います。私はコンバータにエルバンの薔薇色のインクを入れて、文章の朱入れや手帳のスケジュール欄に使っています。
(2)ペリカン トラディショナルM200 ダークグリーン(F)
 深緑のスケルトン軸なので、モンブランのレーシンググリーンを入れてあります。使い勝手のいい細字で、鉄ペンとはいえサラサラ書けるようになりました。メモや雑記の目先を変えたいときに使っています。
(3)ラミー ラミー2000(F)
 デザインは秀逸、フローもたっぷり、手になじんでずいぶん書き味もよくなりました。一時のセーラー極黒は抜いて、今はペリカンのブリリアントブラックを使用中。メモやノート取りの主力です。
(4)ラミー サファリ イエロー(M)
 少し太めのがほしくて、安いしこれを買いました。はじめはすごく書きににくくて苦労したのですが、ペン先をあれこれいじってたら、急にすらすら書けるようになりました。微妙に字が太い中字ということでノートの消費は早まるものの、気軽に書き飛ばすには最高なので、普段のポケットにはこれを挿しています。インクはコンバータを使って、ラミーのブルーを入れてます。
(5)ペリカン スーベレーンM800 緑縞(B)
 そして、新人にして主砲の登場です。インクはパーカー・クインクのブルーブラックを入れました。ペン本体の太さ重さとも存在感は抜群ですし、バイカラーのBニブの太さも想像以上で気持ちいいのですが、まだまだ荒削りというか、はっきり言って書きにくいです。。・゚・(ノД`)・゚・。
 ポイントがスタブ風に平たく研いであるため筆記角がシビアで(そのぶん欧文は抜群に美しく書ける)、ペン先を少し傾けて紙に当てるだけで、さっぱりインクが出てこなかったりします。まあ、一年以上かけて自分のものにしてゆくという、本格的な万年筆の楽しみがこれから待っているのでしょうけれど。

 ふと気がついたのですが、これで、私が普段持ち歩いて使う筆記具だけで、定価の合計が10万円を超えることになりました。<やっぱりバカ?

 それでは、つぎは安くてちょっと自慢できる多色ボールペンについて。
 ゼブラに、「クリップオンマルチ」という、黒赤青緑の4色ボールペン+0.5mmのシャーペンという、便利な1本があります。しかも税込み525円で安いです。ラバーグリップで持ちやすいし、お勧めの1本です。1050円出せば、金属パーツを使った高級感のある製品もあります。
 と、ここまでが前フリその1。私は気に入って使っていました。
 前フリその2は、皆さんご存じのパイロット「ハイテックC」です。この異様に細いゲルインクボールペンは、何十色という多色展開とあいまって、文房具屋でも広い棚を取っています。私は、細かい字がかけるし書き味も発色もいいので、0.4mmを好んで使っています。会社の書類ではボールペンより出番が多いくらいです。基本は透明軸のキャップ式なのですが、最近これに「コレト」という2色ボールペン型の軸に、自分で選んだリフィルを2本差し込んで使うという製品が出ました(パイロットの紹介ページ)。リフィルだって10色もあります。ただでさえ減りの早いゲルインクを、マジで細い軸につめるというのはコストパフォーマンス的に気になるところですが、1本100円なのでよしとしましょう。
 ここで本ネタ。なんと、この「コレト」のリフィルは、一般のボールペンのリフィルと同じ太さなのです。2mmほど尻を切れば、「クリップオンマルチ」にもバッチリ適合することがわかりました。

 というわけで、私は労せずして「黒赤青緑の4色ゲルインクBP(しかもモノはHI-TECH-C 0.4mm)+0.5mmのシャーペン」という、夢にまで見た多機能ペンを手に入れたのでした。めでたしめでたし。
 簡単な改造のわりに、とても使いやすくてちょっと通っぽいので、みなさんにもお勧めしますが、普通の人相手に見せびらかすと多分ものすごく引かれるので、その点は重々ご注意ください。


2005年12月15日(木)

 クリスマスの連休は、家族で映画でも見に行こうかという話になった。
 とはいえ、ハリー・ポッターでさえ、「こわいかもしれん」といやがるヘタレ兄弟である、見に行くことができそうな作品は限られる。
「『チキン・リトル』やったらええわ。見に行きたい気がする」と、なおちゃん。
 さすが、小さいころから戦闘場面が嫌いで、画面上の暴力はアンパンチが限度だった男である。小学5年生になってもそれか。まあ、横でともちゃんもうなずいているので、それでもいいといえばいいのだが。
 とりあえず、私は反問してみた。
「チキン・リトルて、あれ、子どもやのに、なんでヒヨコとちゃうねん。じつは、ちっさいおっさんかなんかか」
「知らんわそんなん。見たらわかるんちゃうん」

 横からサイも口をはさんできた。
「『あらしのよるに』はどう?」
「うーん、ええかもしれん。ドキドキするかなあ」
 と答えたなおちゃんに、私は再び聞いてみた。
「それはあれやろ、コマーシャルで、“ともだちなのにおいしい”ていうやつやろ」
「ははは、もう食べてるやん、それ」
 そのネタはそこまでにしておけばよいものを、私はもう一度重ねてみた。
「ほな、“ともだちなのにごちそうさま”やったかな」
「はは」
 すると、横で黙ってゲームボーイをしていたともちゃんが、ふと顔を上げて私に向かって言った。
「もうつっこめへんで」

 小学1年生にして見事なすかし突っ込み! お父さんは今日ほど我が家の教育方針に自信を持ったことはないぞ。


2005年12月20日(火)

 今年もクリスマスが近づいてきました。街はもう本当にクリスマス一色で、美しいイルミネーションに飾り立てられ、おなじみのクリスマスソングと街を行く楽しげな人々のざわめきに包まれています。
 ことに今年のクリスマスは、3連休の土日ということもあり、ちょっとした旅行に出かけたり遠出をしたりして、いつもの年とはちがうロマンティックなクリスマス・イブを過ごす方も多いのではないでしょうか。
 ただ、ひょっとして、この日記をごらんの方のなかには、クリスマスを一緒に過ごす相手に恵まれず、今年もさみしいイブになるなあと目にうっすらと涙を浮かべている方もあるかもしれません。
 悲しむことはありません。神様はどんな人にも祝福を授けてくださいますし、だれの心の中にもサンタクロースは訪れるはずです。
 そうは言っても……と肩を落としそうになる、そんなあなたに、私から励ましの言葉を。

「さあ、顔を上げて、元気を出しましょう。今年のあなたのクリスマスは、きっと来年より素敵なのですから」


2005年12月25日(日)

「ジングルベルの曲を逆回転させて聴くと」
 ザイーガで知りました。クリスマスのメッセージかと思った私がバカでした。死ぬかと思った(ショッキング注意)。

▼おくれまくりながら、「第七回雑文祭」に参加しました。拙作はこちら
 やっつけ仕事であれですが、もう雑文祭でもないと書かなくなった私が悲しいというかなんというか。

▼今日見たばっかなので、「M-1グランプリ2006」の感想を少々追加。
 実は今回、どうも粒が小さいなあと期待していなかったのだが、どうしてどうして。とくに、チュートリアルの安定感と、ブラックマヨネーズの大化けには目を見張るものがあった。
 チュートリアルは二枚目の徳井の緊張感のあるボケが秀逸。ロザンやランディーズあたりと十把ひとからげで見ていたけど、ネタの実力は一歩抜けていると見た。
 ブラックマヨネーズはつい最近まで、「このハゲ!」「なんやとこのブツブツ!」みたいな、ただの罵り合いか怒鳴り合いのような漫才しかできなかったと思うのだが、今回はネタの出来も抜群で抱腹絶倒した。「上本町で破れたら難波まで転がるやろ!」は、ちょうどそこいらが高校時分の遊び場だったので、日本一のあたりを猛スピードで転がるボウリングの球をリアルに想像して爆笑したし、「そこはまずふつうシャケからやろ!」には息が止まるかと思った。このコンビのネタだけ、繰り返し録画を見てもほんと腹が痛くなるので、優勝は妥当だと思う。
 品川庄司はもうひとつ好きじゃなかったけど、一生懸命やればできるんだーと見直した。とくに品川が、必死なまでに冷静にネタをコントロールしているのが伝わってきて、笑いながら感動した。
 笑い飯は昨年の失敗をバネにしたのか、かぶせあうボケだけではなくてネタに工夫が見られた気がする。とくに2本目のハッピーバースデーネタは、夏前にテレビで見たときとは練りこみ具合が格段に違っていて(とくにモンローが出るまで)、かなり面白かったと思う。
 麒麟は、1本目のオチと2本目の「麒麟です」がすべてだったような。少し気になったのは、ネタの最中でお互いをアホとかバカとか言い合うようになる瞬間のおかしさは認めるにしても、半分シュールな展開がエスカレートしきった瞬間にそれが起こるからおかしいのであって、中途半端なタイミングでお互いをけなしても面白さは生じないのに、それにとらわれているような感じがしたこと。2本目の不完全燃焼はそのせいだと思う。
 アジアンは、今いくよ・くるよではなく、すぐにでもワッハ上方へ出かけて、海原お浜・小浜のネタをおさらいすること。


2005年12月27日(火)

 クリスマスを過ぎると、もちろん子どもたちは冬休みに入る。ただし我が家は共稼ぎなので、私たち夫婦は仕事である。二人にはがんばって留守番をしてもらわねばならない。
 なおちゃんはもう5年生なので心配はない。油断しているとゲームとマンガの度が過ぎることもあるが、ほうっておいても宿題はするしピアノの練習もする。ともちゃんの世話だってぬかりはない。あれしようこれしてのわがまま放題にもつきあってやりながら、一日中でもキャーキャー一緒に遊んで過ごしてやる。
 だから、サイは仕事にいくときも、石油ストーブを消して(暖房はエアコンとコタツでなんとかしてもらう)、お弁当を二つ置いて出かけるだけで、今やなんの心配もいらなくなった。
 そういえば、お昼の弁当については、夏休みに聞いたことがある。なんでも、12時になったらお弁当を食べることというサイの指示を律儀に守って、なおちゃんとともちゃんは12時前からお弁当箱と麦茶のコップをテーブルに並べて、
「なあ、おにいちゃん、まだたべたらあかん?」
「まだ12時になれへんから。あと5分待ち」
 などといっていたという。
 で、昨日のことである。2時半にはなおちゃんは塾の冬期講習とやらへ行くので、ともちゃんはサイが帰ってくるまで、一時間以上一人で待たなければならない。ともちゃんピンチである。
 以下は、昨日の夜サイから聞いた話。

 3時ごろ、サイの勤め先にともちゃんから電話がかかってきた。
 おうちからです、という取次ぎにあわてて出てみると、なんとともちゃんが泣いている。
「グスッグスッ……ともちゃんな、グスグス、おにいちゃんじゅく行ったらな、さみしなってきてな……、グスッ、おかあさん、はやくかえってきてな」
 ということだったらしい。
 とりあえず何事もないというので安心したものの、むろんサイは急いで帰った。
 帰ってみると、当然ながらともちゃんはけろっとしている。そもそも、一人でお留守番など今まで何回もクリアしてきているのだ。どうやら家族べったりで過ごした三連休の直後だったこともあるので、その落差がこたえたのかもしれない。
 ともちゃんは、さすがにもう泣いてはいなかったものの、職場にまで電話をしてしまったことがよほど申しわけない気がしたのであろう。
「ごめんねおかあさん。めいわくかけたね。ごめんね」
 としきりに謝ったという。
 迷惑て。1年生がなぜそんな生意気なボキャブラリーを。
 凹んだ顔で謝るともちゃんに、サイは、1回や2回迷惑ではないが、今後は火事やけがなど緊急の場合に限ること、それならいくらでも電話していいと言ってなぐさめた。それにしても、よく考えると1年生で親の仕事場に電話できるとはいい度胸である。これなら緊急連絡も十分できるだろうと思うと、ちょっと心強いものがある。
 そこへ、ともちゃんが付け加えた。
「ともちゃんな、このごろないてへんかったから、ないてストレスはっさんしてみてん」
 今度はストレス発散か。わかって言ってるのかこの小学1年生。

 夕食を食べながらサイからその話を聞いて、家族で笑いあった。ともちゃんも、照れくさそうにニコニコしてしていた。
 そうこうするうちに子どもたちの寝る時間になった。二人とも歯を磨き終えて、布団をのべてある二階へと上がる間際に、なおちゃんがサイに言った。
「おかあさん、明日は6時ごろ起こしてな。6時半から塾の宿題の残りしてしまうから」
「なんで? 冬休みやのに。塾も昼からやろ」
「んーと、ともちゃん今日泣いてたっていうから。いっぱい遊んであげなあかんやろ」
 わからんわこの小学5年生も。なんでそんな安物のホームドラマみたいな台詞を。

 そらともちゃんも、おにいちゃん大好きて言うわ。


2005年12月31日(土)

 今年ももう今日でおしまいです。
 ここへおこしの皆様には、一年間本当にありがとうございました。
 まだまだ至らぬところばかりですが、来年もどうぞよろしくお願いします。

「デカ長、上のようなメッセージが、食堂のテーブルに残されていました!」
「これがほんとのダイニングメッセージ……」

「……やっぱり、駄洒落は向いてませんね」

 いや、あの、まあ、ともかく、来年もひとつよろしく。

よろしければサポートをお願いいたします。いただいたサポートは、創作活動の大きな励みになります。大切に使わせていただきます。