見出し画像

はじめて短歌を詠んでみた

恋歌
文通に 萌すおもひの 丈のびて 隣のまちから 宛名なきふみ

自由歌
よひ醒めて ぐい呑みにうつる おぼろ月 しとねは空 春をちびちび

解題は記事の最後に載せようと思います。

筆折れば名無し


今回、はじめて短歌会というものに参加しました。

サラダ記念日くらいしか聞いたことがないし、

ルールなんて、
・季語がひつようないこと
・57577のリズムであること

それくらいしかしらないド級の初心者ですが、
とても楽しかったです。


何が楽しかったかというと、
自分の歌が想定外の解釈をされるということです。


そんな意図じゃないよ、とか
あーそういった解釈ができるのか、と

自分が作った歌のくせにあたらしい発見ばかりなんですよね

そこに短歌の可能性を感じました。

詠むではなく、「読まれる」ことによってあたらしい意味が生まれてくる。
私の短歌ではなく、「私たち」の短歌になっていく。

それがとても嬉しく刺激的なのです。

デリダが言っていた、翻訳されることによってエクリチュールにさらなる価値が付与される。死後の生が生き延びる、という意味を言葉ではなく心で理解しました。


機会があれば、また短歌会に参加したいと思います。


解題1️⃣ 
文通に 萌すおもひの 丈のびて 隣のまちから 宛名なきふみ

 ある少女は男の子と文通をしていました。当初はたんなる友人関係や遊びで交換していました。けれど徐々に恋心が芽生えてきてしまいます。そのことを知ってほしいという想いの丈は伸びるばかり。だけど直接伝える勇気ありません。今の関係をこわしたくない。だからこそ宛名のない文にこの気持ちをつづります。
 下の句はどんな解釈もできるようにしました。送るかまよって彷徨するうちに隣のまちに行ってしまったとも読めるし、いろんな読み方ができるようにしました。というのも、ジャック・デリダの「差延」という概念を援用したからです。差延とは、「遅らせ」や「迂回」「痕跡なし」を意味するものです。そういった差延の概念が、「隣のまち」や「宛名なき」こと、郵便という時差と距離を隔てるものという思いをこめてみました。
 今の時代、メールもLINEもかならず宛先と差出人がわかってしまいます。けれど、宛名がなかったり、差出人不明だったりすることの良さもうしなわれてしまったのかと思います。

解題2️⃣
よひ醒めて ぐい呑みにうつる おぼろ月 しとねは空 春をちびちび

 お金や時間に余裕があるわけではない。かならずしも贅沢とはいえない、けれどお酒を飲んで思いめぐらす何気ない日常という贅沢を歌にこめました。
 よひは「宵」「酔い」を掛けています。昼間からお酒を飲んでまどろんでいたのですが、目を覚まします。そんなときに、飲みさしのぐい呑みに逆さ月が映っています。そして月がぐい呑みにうつるなら、しとね(布団)は空のようではないか。そして私は空の上にいるのだという酔いの浮遊感。空の月を眺めて、ぐい呑みにうつる月の呑んで、五感全体で春それ自体を肴にする一日です。


この記事が参加している募集

#今日の短歌

39,790件