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シードマネー5,500万円調達のOsidOri、攻めの経営で夫婦のおカネの管理に革命を起こす

皆さんこんにちは。藤原です。今回のスタートアップ取材記事は、共働き夫婦のおカネの管理を圧倒的にラクにするアプリで有名なOsidOri(「オシドリ」と読む)です。

これまでは僕がベンチャーキャピタリストだったときの投資先に限定して取材しておりましたが、OsidOriはその制限を外したときの最初のスタートアップとして取り上げたいと前々から決めていました。ぜひご一読ください。OsidOriはいいぞ。

※なお、かなり細かい数値の議論もさせいただいたのですが、公開するのははばかられるので、そこは少しぼかしています。

この記事の登場人物

宮本敬史氏 OsidOri代表取締役CEO(バナー写真右)
中山知則氏 OsidOri共同創業者COO(バナー写真左)
藤原弘之 (質問内容を太字で記載)

エンジェルランドからシードラウンドまでの流れ

今日はよろしくお願いします。
宮本・中山「よろしくお願いします。」

僕がお二人と出会ったきっかけってグロービスのイベントでしたっけ?
宮本「そうです。GVC(注1)で僕らが優勝したときに、メッセをもらって、ちょうど資金調達もあったのでお会いしたのが最初です。僕らが優勝したのは去年のGVCなので、2018年の今頃ですね。」

(注1)GVCはGlobis Venture Charengeの略で、グロービス経営大学院卒業生・在校生に参加資格を限定したピッチコンテスト。優勝チームは1,000万円までの投資を受ける権利がもらえる。投資スキームは次の資金調達ラウンドで他の投資家に合わせるかたちになる。

あのときは確かプロダクトはまだローンチしてないですよね。
宮本「プロダクトどころか、デザインもまだ怪しい時期でしたね。あったのは宮本作成モックでしたから。」
中山「何を作るかという骨子は決まって、デザインを始めていた、という段階でしたね。」

コンセプトとモックとピッチの資料があります、という段階で優勝されたんですね。あの1,000万円の出資は結局受けたんですか?
宮本「いえ、あのときはGVCからの出資は受けずに、エンジェルラウンドとして5名から合計2,500万円調達しただけでした。」

そうなんですね。エンジェルラウンドだから普通株で?
宮本「はい、普通株です。それでいったん事業をまわして、ようやくこの前、9月末にGVCも含めた優先株とDebtも合わせて合計5,500万円のシードラウンドを終えることができました。」

GVCて優先株もやるんですね。J-KISSだと思ってました。
宮本「GVCは基本的に他の投資家と合わせるというスタンスなんです。それで前回、僕らがまだ何もなかったというのもあって、エンジェルラウンドで普通株で、という調達だったので、そこにGVCも入ってもらおうとしたら『それはさすがにゴメンなさい』ということで。」

普通株はNG。
宮本「そうですね。それで1年待って、ステージも進んで他の投資家さんとも優先株でお話しがまとまったので、それに合わせてGVCにも入っていただけました。」

出資者はどういった方々なんですか?
宮本「ワールド・モード・ホールディングスというアパレル系人材の会社さん、京銀リース&キャピタルさん、前回に引き続いてインフキュリオンさん、あとGVCですね。」

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アパレル系の会社というのはFinTechからは遠く見えるんですが、どういう意図があったんですか?
宮本「一見するとそうなんですが、若い女性のスタッフが沢山いらっしゃるんですよ。僕らのターゲットは、20〜30代のミレニアル世代の男女なのでまさにドンピシャなんです。」

ダブルインカムの夫婦がターゲットだと思っていましたが、独身の人も使うんですか?
宮本「独身でも同棲するとターゲットになります。おカネの分担がここから始まるので。」

そうなんですね。僕はてっきり保険屋さんと組むのかなと思っていました。保険系のVCが入っていないのは、何か色が付くのを嫌って?
宮本「いや、保険屋さんとも連携していきます。保険系VCが入っていないのは色が付くと言うより、前回のラウンドはまだ少し僕らのステージが早かったんです。プロダクトができてトラクションが出てきているので、今後コラボがご提案できるという意味で、まさにこれからですね。アプリはもうAppStoreからダウンロードできますよ。」

高いマーケティング効率

ダウンロード数ってどれくらいですか?
中山「DL数は公開していないんですが、想定より市場の反応は良いなと感じています。」

今はCPIって高いじゃないですか。1,000円とか下手したら1,500円とか。オシドリはどんな感じなんですか?
中山「具体的な数値は控えますが、初めに想定していた数値より、実際にはそれの半額以下で取れてますから、かなり効率は良いですよ。」

それは凄いですね。初期の頃だからメインターゲットだけに刺さってるってことなんですか?
中山「はい。リリース間もないこと、広告を踏んでいないこともあり、イノベーターやアーリーアダプターに限定してもまだ全然取り切れていないですね。他方で、アーリーマジョリティーくらいまではこのCPIより高騰することはないかなと試験をしている中で感じています。」

宮本「ターゲットだけに絞っても、毎年結婚する人が70万人くらいいますからね。」

なるほど。まだまだLow Hanging Fruitsということですね。あとは速度感ですよね。3ヶ月でこのダウンロード数で良いのかっていう。
中山「計画では実はもっと少なく見積もっていて、これでもかなり想定以上なんですよ。」

そうなんですね。来年末時点の目標は設定されているんですか?
宮本「はい。ただ、ダウンロード数も、もちろん大切なんですが、今は継続率の方を重視していますね。」
中山「もはや今はアクティブ率と継続率しか見ていないというか。」

確かに初期段階ですもんね。バケツに穴が開いていたら意味ないですし。
中山「そうですね。CPIも安く取れていますし、マーケットに出しても反応が非常に良いというのが初期の学びとして分かったので、あとはこれを継続して使ってもらう状況を作るのが大切で、今は1〜2週間で新しいバージョンをどんどん出して改善しているところです。」

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UXに対する課題感

OsidOriの場合、無理矢理おカネを払って獲得している訳ではないからまた違うんでしょうけど、一般的には初月獲得した100名が次月には70名くらいになって、その後60名、50名とだんだん減少率が緩やかになってきて、最終的には初月の20%〜30%くらいのユーザー数で安定するという推移がよくあるパターン(下記イメージ図参照)で、それを元にコホート分析をやったりすると思うのですが、OsidOriはこの辺どうなんでしょう?

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※出所:『IPOと資金調達を見据えたExcel財務モデル作成演習(講師:熊野整)』講義資料より抜粋

中山「アクティブ化した後でしたら、OsidOriもそんな感じの動きだと思います。そもそも初めのアクティブ化が成功するのが、家計簿系アプリって厳しくて、20〜30%しか残らないかなと言われているんです。そうなった後に、上図の折れ線グラフがスタートするようなイメージです。」

宮本「OsidOriの場合、他の家計簿アプリ同様、銀行口座連携ところで設定できないユーザーが離脱することに加えて、カップルで使うことが前提なので、ペアリングのハードルも越えていただく必要があります。」

そうか。OsidOriは一人で使っていても意味がないですもんね。いわば2回コンバージョンしていただかなくてはならないというのが、結構なハードルですね。
宮本「ここがハマれば、かなりエンゲージメントは強いんですけどね。」

その為に何かUI/UXを工夫されてるんですか?
宮本「個人のプライベートと家族のシェアの区分けはかなり明確に作ったりと、色々工夫されたUIになっています。だけとマーケットに出してみて色々な意見が出ているので、UXは現在進行中で改善していっています。」

デザインってどうされています?
宮本「外部のデザイナーとデザイン設計の時からチームでやっています。デザインは今まで色んな所で見せても評価が高いんですよ、銀行なんかでも『こんなアプリ作れるって凄いですね~。』って言われたり。ただ、UXの部分は、まだまだ改善する必要はありますね。」

具体的にはどういう部分ですか?
宮本「ユーザーって望んでいることに幅があるんですよ。手入力をしたいユーザーもいれば、銀行登録をして自動反映させたいユーザーもいます。それってユーザーによって求めるUXが全然違って、手入力したい人は、いちばん初めに手入力ボタンを押したいですよね。すぐに入力してすぐに反映されるのが理想。でも、銀行連携するユーザーって、そこはあまり強いニーズがなかったりするんです。普段からキャッシュレスなんだから勝手に反映してよって感じで。だからと言って両方を追うと、それはそれで開発が大変になるので悩ましいところです。」

確かに難しいですね。どちらをUXとして重視するか。例えば、女性向けと男性向けでアプリ上違いってありますか?
宮本「色は同じですけど、基本的には女性向け設計を優先しています。女性側が主に使うアプリだと思っているので。」

中山「ファーストユーザーはカップルの中でも女性かなと思っているので、そこは女性優先で考えていますし、実際にそういう使われ方をしていますね。まだまだUI/UXは改善ポイントが沢山ありますが、重要なのは、ターゲットをフォーカスしてブラッシュアップしていくことだと思っています」

いずれにしても、課題が明確なのは良い事ですね。
中山「はい、言い方を変えれば伸び代しかないという感じで。実現したいけどまだできていないことがたくさんありますが、優先順位を明確にして突破していきます。」

攻めの経営と資金調達

ちなみに今ってバーンどれくらいなんですか?
宮本「具体的な数値はすみません。直近では各種数値も出始めているので、成長させていくために資金調達のコミュニケーションを開始しました。」

前回ラウンドってDebtも含めての5,500万円ですよね。まだ資金需要があるんですね?
中山「はい、Android版がまだ出せてないので、その開発をガンガン進めているなどもありますので。」

Android版はいつ出るんですか?
宮本「年明けくらいには出したいなと思っています。」

次の調達では、トラクションも出てるんで、前回よりValueを上げてって感じですね。
宮本「そうですね。B向けの提携モデルとかももう決まってたりしますし、あとは外部連携のところも決まってきているので、そういった所も踏まえて投資家にはお話ししています。」

B向けの提携というのは具体的にはどういう?
宮本「具体的にはまだ言えないのですが、ホワイトラベルで金融機関に提供などの着々と準備を進めています。」

プロダクトローンチが続きますね。発表を楽しみにしています。この記事を読んでいるVCやCVCの皆さんにはぜひ投資の検討お願いしたいですね!
宮本「そうですね。ご一緒頂けるパートナーを探していますので、よろしくお願いします。」

資金面は分かりましたが、人材面はいかがですか?
宮本「今まさに絶賛募集中です。正社員採用を進めているところで、特にエンジニア職を求めています。まずは開発リソースですね。」

今後の成長戦略

先ほどB向けの提携で、金融機関にホワイトラベルで提供というお話しがありました。この提携の部分が成長のための大きなウェイトを占めそうですが、他にも考えられていることがありますか。
宮本「提携というのも実は幅があって、一つは今おっしゃったホワイトラベル提供、もう一つはこのアプリケーションからさらに金融サービスにつないでいきますので、金融サービスとの連携のところです。」

それは、例えば投資信託が買える、というようなことですか?
中山「B向けとC向けに分けたときに、ホワイトラベルはB向けですけど、C向けにはこのアプリケーションが持つべきおカネの管理に関する様々な機能を充実させていきます。投信を買うというのはその一機能です。夫婦で管理しているおカネに関する用事って色々あるじゃないですか。『増やす』は『投資』だったり、『守る』は『保険』だったり、『送る』は『送金』だったり。そういう色んな用事をこのアプリだけで片付けられるようにする、ということです。」

なるほど、今はデータを蓄積して可視化して夫婦で見やすく共有している段階ですけど、これがどんどん発展していくんですね。
宮本「ユーザーが日常的に行っていることをアプリ内で完結することが理想なので。投信を買うというのは確かに大きいですが、それほど頻度が高い訳ではないので、まずは頻度の高い、もっと手前側のニーズにしっかり対応していこうと思っています。」

いろいろ勉強になりました。今日はありがとうございました。これから資金調達頑張ってください!
宮本・中山「こちらこそ、ありがとうございました!」

OsidOriについて

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株式会社OsidOriは『誰もがお金に困らず、生きたい人生を歩める世界をつくる』という想いから2018年6月に上の2人が創業、2019年8月に共働き夫婦向けのお金の管理・形成サービス「OsidOri(オシドリ)」をリリースし、2019年9月には5,500万円のシードラウンドを完了し累計調達額が1億円に到達した、気鋭のFinTechスタートアップです。

彼らは今、一緒にサービスを産み育て、社会を変革していく仲間を募集しています。写真からも分かると思いますが、CEOもCOOも非常に誠実で楽しい方々です。興味がある方はぜひ下記リンク先をチェックしてみてください。


さて、時間のキリがちょうど良いので今回はこれくらいにして、また次のnoteにつなげていきましょう。良かったらコメント・高評価・チャンネル登録・あとTwitterのフォローをしてくださると嬉しいです。

https://twitter.com/fuddy

では次回、スタートアップ取材記事でお会いいたしましょう。今回はこの辺で。

サポート代は大好きなスタートアップへの取材費に充てさせていただきます