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役員失踪と多額の借金からの復活劇!ユーザー同士の結婚も現れた『topia』アバターコミュニティーへの情熱

皆さんこんにちは。藤原です。今回のスタートアップ取材記事は、バーチャルライブ配信アプリ『topia(トピア)』を開発・運営するアンビリアルを取り上げます。彼らは先日、みんなで歌える新機能『トピカラルーム』をリリースしたのが記憶に新しいところです。

今回、アンビリアル代表の前原さんにその辺りも含めてインタビューすることができましたのでぜひご一読ください。アンビリアルはいいぞ。

この記事の登場人物

株式会社アンビリアル 代表取締役 前原幸美氏(バナー写真)
藤原弘之(質問内容を太字で記載)

創業から役員失踪を経て借金を背負うまで

今日はよろしくお願いします。記憶力が悪くて申し訳ないのですが、そもそも前原さんとはどこで知り合ったんでしたっけ?(笑)
あるVCさん経由です。藤原さんがその方に「アンビリアルを取材させて」ってメッセされていて。

あ、そうでした!それは失礼しました(笑)。では改めまして前原さんのご経歴などを伺えたらと思うんですが、創業っていつ頃なんですか?
2012年です。その頃はまだドミノという社名でして、アンビリアルに社名変更したのは確か2017年ですかね。前職はKLabだったんですが、そこでエンジニアをやっていました。

KLabの人だったんですか。じゃぁ資金調達でKVPとかは?(笑)
行きました(笑)。代表の長野さんとは以前一緒に働いたこともあったんですが、出資についてはタイミングが合わず。

創業期はどんなビジネスだったんですか?
当時まだスマホゲームのネイティブ化が進み始めたかなくらいの時期で、僕らは当初モバゲー向けにブラウザゲームを開発していました。そこに出したゲームを、今度はネイティブとしてまた出していこうということで、大手ゲーム会社さんがパブリッシャーになって、という感じです。

なるほど。パブリッシャーがそこで開発がドミノ(当時)で。
はい。その役割分担で進めていたのですが、プロジェクトの途中で役員が失踪してしまう事件がありまして。

えっ?それは大丈夫だったんですか?
スケジュールが守れなくなったので、プロジェクトは解散になりました。ただ、先方にご理解いただき損害賠償にはならず円満な解散となりました。その代わり、僕らが持ち出しで先に発注していたイラスト費用などの借金は残りましたね。

その役員の方の体調は大丈夫だったんでしょうか?何の前兆もなく?
前兆とかはなかったですね。誰も気付かなかったです。急に「あれ?来ないな」となって、結構寒い時期だったんですけど、家の前に一日張り込みしたり。半年後くらいにふらっと現れたんですが、それまでは結構心配していました。今では彼も他社で大活躍していますし、僕らが負ってしまった借金の返済に対しても、責任を感じて少し多めに負担してくれたりして、現在の関係は極めて良好ですのでご安心ください。

株式のシェアとかも大丈夫だったんですか?揉めがちですけど。
はい。それについても僕がいったん全部買い戻しまして、その点も円満に解決しています。

プロジェクト解散後、会社の方はどういうビジネスを?
創業チームはいったん解散しまして、僕の方がほぼ個人で業務委託を受けるような感じです。ディレクションもできてコードも書ける人材というのは、ゲーム業界の中では結構重宝されるんですよ。

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伸びなかったロケーションベースVR

前原さんみたいな人材だったら安定的に仕事が来たと思うんですが、もう一度自分たちでリスクを負って、自社プロダクトを作ろうと思われたのはなぜですか?
確かにフリーランスの方がその瞬間では稼げるんですけど、やっぱり、自分たちでプロダクトを作っていろんな人に使ってもらって、それで多くの人達にハッピーになってもらいたい、という想いはずっとありました。ディレクションを個人で受けながらいろんな知見をためて、2016年にVRのプロダクトを作り始めました。

2016年ということは、VR元年が来るって言われていた時期のちょっと前ですかね。スタンドアローンがもうすぐかって言われてたのが2017年ですもんね。なぜその領域を選ばれたんですか?
たまたまOculusのDK1を触らせてもらえる機会があって感動したのと、あとSAOを契機にVRを始められた方がこの業界には結構多いんですが、僕の場合は『ログ・ホライズン』というラノベにハマったのがきっかけでした。この世界観を創りたいと思うようになったんです。

そうだったんですね。僕もちょうどキャピタリストだった頃で、TOKYO XR STARTUPSの第三期のスタートアップに3社投資しているんですが、前原さんもその年代の方ってことですね。
そうです。僕はアクセラレーターには参加していなかったのですが、シェアオフィスが同じだったこともあって、以前この取材noteにも出られていた岸上さん(※1)や、藤川兄弟(※2)や、加藤卓也さん(※3)も知っています。

※1) MyDearestの代表。VRゲーム『東京クロノス』が有名。
→ https://comemo.nikkei.com/n/nee9f37409649
※2) UNIVRSの代表。通称VR兄弟。酔わないVR移動エンジンに定評。
→ https://comemo.nikkei.com/n/n9d53b914b3a3
※3) VARKの代表。VRライブ配信システムVARKがヒット。
→ https://comemo.nikkei.com/n/n923967460f49

でも御社の『topia(トピア)』ってスマホアプリですよね。VRはもうやめられたんですか?
2017年までVRのプロダクトを創っていましたが、今はやっていません。VRは合計2本開発したんですが、両方ともVR施設に導入するものでした。

所謂ロケーションベースですね。
はい、そうです。自転車にセンサーを付けて、自転車を漕くことでVRの中で走り回って4人〜6人で対戦できるマルチ対戦ゲームです。それを2017年の東京ゲームショウに出展したりしていました。当時はスペースあたりの集客数で言えばVR領域でトップだったと思います。見た目も分かりやすいですしね。ところが、「よし、これでいけるぞ!」思ってVR施設を下見に行ったら、施設自体が全然稼働していなかったんです。お客さんがそもそも入っていなくて、特に平日はもう絶望的というか。これだといくら僕らがコンテンツで頑張っても無理だなと。

確かにロケーションベースは日本ではあんまりでしたね。韓国では補助金ジャブジャブで結構伸びていた時期もあったみたいですけど。
そうなんです。ロケーションベースがダメなら、一般のVRデバイス向けの方はどうかとも思ったんですけど、やっぱりまだ早いなと。それでいったんはスマホアプリでやろうと決めました。それが2017年の12月です。

初期開発に必要な資金はどうされたんですか?
少額ですが、2018年にエンジェルラウンドをやっています。あとは公庫からのDebtも活用して、 同年10月にスマホアプリの『topia』をリリースしました。ただ、将来的なXR化を諦めているわけでは全然なくて、これからどんどんデバイスも盛り上がっていくと思っていますので、時期が来たらシフトしていきます。やっぱりVRが好きなので(笑)

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リアルライブとバーチャルライブのユーザーの違い

メインユーザーってVTuberの方でしょうか?
VTuberは既に自分のカラダを持って活動しているので、その一歩手前というか、VTuberになりたい人が初期のターゲットセグメントでした。実は投げ銭機能も当初は設けていなかったんですよ。

配信者は何のインセンティブもなく?
はい、まずはコミュニティーを育てるところかは始めようと思っていましたので。ただ、これが結果的にはうまくいかなかったですね。それで2019年の5月にようやく投げ銭機能を実装して、そこからは伸び始めました。

ライブ配信できるサービスとしては既に17LIVEやSHOWROOMがあると思いますが、『topia』はバーチャルライブ特化型ですね。市場環境ってどう見られていますか?
リアル配信の側で言っても、17は一般の方が多くてSHOWROOMはどちらかというとタレントとかアイドルになりたい人が多いというように、実はプラットフォームのブランディングに応じてユーザー層も異なっているんです。ですから1つのプラットフォームで全ユーザーを取るというはライブ配信市場では無理なんですね。『topia』の場合は顔出しをしたくない層が利用ユーザーになりますから、結構棲み分けができていますし、実はそちらの方が数としては多いと思いますね。

ユーザーコミュニティーの特徴としても何か違いがありますか?
リアル配信の方は、やはり配信者側は「これで有名になりたい」とか「もっと稼ぎたい」という思惑があって、所謂プロの方々ですよね。それを見に来ている視聴者の方々も、その配信者のファンだったりします。お互いの立場としては配信者なら配信者、視聴者なら視聴者として固定されていると思います。それに対して『topia』は少し違っていて、配信者が自分の配信をした後、今度は視聴者として自分の推しを見に行く、というような動きをしています。実際に投げ銭についても、配信している人の方がよく投げ銭してくれているんです。

それは面白い違いですね。そうすると、ユーザーセグメントが異なるからこそ、プラットフォームとしてあえて実装していない機能とかってあるんですか?他社では普通にできることでも、自分たちのユーザーにとっては逆にその機能は迷惑だから実装していない、みたいなケースがあれば興味深いと思ったのですが。
前提として顔出しはできません。アバターが強制的に出ますので、ビデオ配信をしようとしてもできません。また現時点では、ゲーム配信は捨てています。ネットワーク帯域節約のため、映像は送っておらず、実はアバターもユーザーの端末側にあって、フェイストラッキングのデータだけを流通させて、レイテンシーが小さくなるように工夫したりしています。

今回リリースされたカラオケ機能も珍しい?
カラオケ機能自体は各社さん出されているのですが、結構サブ的な位置付けが多くて、あまりメイン機能としては位置付けていらっしゃいません。ウチの場合は、リクエスト機能なんかもあって、視聴者と配信者がいっしょにカラオケで盛り上がれるようになっています。順番が回ってきたら視聴者側も歌います。その辺りは「普通のカラオケ店に配信者と行った」みたいなノリです。

『topia』の変わった使われ方というか、想定外のユーザーの反応みたいなことって何かありますか?
実は、配信者同士で結婚されたケースがありました。

えっ?アバター同士とかではなく、生身の人間同士が?出会ったときに「アバターと全然イメージが違う!」とかなかったんでしょうか。
いえ、それもなかったようです。『topia』でのコミュニケーションはアバターを介して行っているのですが、声は地声ですから、実際に会われた際にもそんなに違和感がなかったようですよ。

確かに、見てくれに惑わされずに本質を見抜くという意味では、こっちの方が実は自然なのかも?何か分からなくなってきました(笑)
新しい結婚の形である事は間違いないですね。僕らもそういうケースが出てくるのは『topia』というプラットフォームを好きになって楽しんで使ってくれている証拠なので、とても嬉しいです。

今後の展望

面白いですね。あとは、このサービスをいつXR化するか、という点についてはどうですか?
いつかやりたいとは思っていますが、他にやりたい施策も結構あるので、Questの段階で参入しようとは思っていません。ただ次のバージョンからはすごく惹かれるので、悩んでいます(笑)

技術的にはどうなんですか?UnityにしてもUnrealにしても進化が早いじゃないですか。
確かにそうですが、昔まだUnityが民主化されていなかった時は分からないこともかなり多かったんですが、今ではソフトウェアを作る側はどんどん楽になってきていると思いますね。だから参入はいつでもできると思っていて、それまでにコミュニティーをもっと育てていけたらと。

事業数値の面はどうですか?
数値の面においても、皆さん家に居ることが多くなったので、アプリ自体の平均滞在時間がかなり伸びています。以前は1日あたり120分くらいでして、それでも凄い数値ではあるのですが、昨今の社会情勢の変化によって、1日あたり150分にまで滞在時間が長くなりました。当然平均滞在時間が長い方がARPUも大きくなりますので、当面はこれを伸ばせるように頑張って行きます。

今後の展開を楽しみにしています。今日はありがとうございました。
こちらこそ、ありがとうございました!

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株式会社アンビリアルについて

04_アンビリアルについて

UNBEREAL(アンビリアル)は、自分だけのアバターでカラオケをライブ配信できる、バーチャルカラオケプラットフォーム『topia』を開発・運営するスタートアップです。『topia』は高精度の顔認識・音声認識技術によりアバターが配信者自身と同じように動き、10,000曲のカラオケの歌い放題を楽しむことができるという特徴があり、2020年1月の歌いまわし機能β版の提供開始から約半年間で月間課金額の成長率は300%を突破、1人あたりの平均視聴時間は150分/日にのぼります。

冒頭でシェアしたSTARTUP TVの動画にもあった通り、彼らは絶賛人材募集中だそうです。興味のある方はぜひアクセスしてみてください。


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