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スモールビジネスからスタートアップの第二創業へ、グローバル・カルテットのCEOに聞く女性経営者特有の悩みとは?

皆さんこんにちは。藤原です。今回のスタートアップ取材記事は、多くのプロフェッショナルリサーチャーを束ねたPF事業を展開しているグローバル・カルテットを取り上げます。

彼らはライフサイエンス領域に特化した多くの専門人材をプラットフォーマーとして抱え、現在は主に大企業のリサーチ業務を中心に数々の案件をこなしています。コンサルティングファーム出身でもある同社代表の城みのりさんは、僕もメンターとして参加したパソナ女性起業家コンテストのファイナリストでして、先日開催されたデモデイまで多くのディスカッションをさせていただきました。結果的には惜しくもグランプリは逃しましたが、個人的な感想としては、このグローバル・カルテットがもっとも所謂『VC向け』で『スタートアップ的な』事業を提案した企業の一つだったと思います。

そんな城さんに、スモールビジネス創業からスタートアップの第二創業までのマインドの変化や、女性スタートアップ経営者が今後もっと増えていくために必要なことなど、興味深い話を色々と聞くことができましたのぜ、ぜひご一読ください。グローバル・カルテットはいいぞ。

この記事の登場人物

株式会社グローバル・カルテット代表取締役 城みのり氏
藤原弘之(質問内容を太字で記載)

スタートアップを起業しようと思った訳ではなかった

本日はZoom取材ですが、よろしくお願いします。
城「こちらこそ、よろしくお願いします」

初めてお会いしたのは、年始のパソナ女性起業家コンテストのキックオフの日ですが、創業自体は結構前ですよね。そもそもどういう経緯で起業されたんですか?
城「初めは今みたいにチームを束ねて、というような事は全然考えていませんで、『フリーランスという働き方があるんだ、へ〜』みたいなレベルでした。普通にマッチングサイトに登録して、自分で一から十まで、自分一人で案件をこなしていましたね。ただ、これだとどう考えても重い案件を月に1本やるのが限界だなと思うようになりまして。」

なるほど、もっとやりたいのにできないと。
城「ヘルスケア系ができる人が少ないからだとは思うのですが、結構な数の案件をいただきながらも、お断りしなければならない場面が増えてきたんです。どうしようかなと思っていた時に、クライアントさんから『なにも城さんが独りで全部やらなくても良いじゃない。チームを作って城さんはコントロールしてくれたら』と言われて、『あ、そうか』と(笑)。」

それでチームを作り始めたんですね。
城「その頃は個人事業主だったんですけど、束ねてるメンバーも徐々に増えてきて、クライアントからも『今の形態のままだったら次は発注できないかもしれない』って言われて、ようやく法人化した感じです。それが2017年頃でしたかね。だから当初は、今みたいにVCさんを回って資金調達をして、みたいなことは全然考えてなかったですね。」

第二創業で変わる社内のマインドセット

それでも年始のパソナ女性起業家コンテストというアクセラレータープログラムでファイナリストになる訳ですが、2019年末にはこれに応募しようと思われたんですよね。どういうきっかけだったんですか?
城「実は、Facebookで知人がシェアしているのを見て『そう言えば、何かを試すにはビジネスプランコンテストが良いって講演で誰かが言ってたな』くらいのノリです(笑)。資料を作るのも得意だし応募してみようと。」

その結果、採択されてファイナリストになる訳ですが、それの前と後で何か変わったことはありますか。例えば城さんのマインドもそうですし、社内の雰囲気なんかも。
城「意外だったのが、Slackで『パソナのファイナリストになりました』と書いたところ、みんなすごく盛り上がって、3,4人から『事業戦略のところ関わりたいです!』みたいな立候補がいっぱい来たんです。」

すごいじゃないですか。
城「たまたまそのメンバーはみんな元コンサルティングファームの人間だったので、多分リサーチ業務だけで留まっていたのが、少し物足りなかったのかなと思います。でも、そんな風に思ってたなんて、私が『ファイナリストになったよ』って書かなければ知れなかったことなので、その点はすごく意外というか、ありがたかったです。」

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城さんとしても徐々にスタートアップ第二創業やるぞ!みたいな。
城「私の性格としては、自分のためだけだったら別に熱くならないんですけど、こんな風に思ってくれるメンバーがいて、前向きになっているんだったら、みんなを巻き込んで挑戦たいなと、徐々に思うようになりましたね。」

資金調達の中ではVCからは結構厳しい指摘もあると思うのですが、その辺りは城さんはどう受け止められていますか?あまり気にされない性格なのかなと思うんですが(笑)。
城「実は私だって少しは凹みます(笑)。1日半くらいは『またフラれちゃったな〜』って思いますが、そっから先はむしろ『やってやる!』とか『今までにない新たな視点を手に入れられた!』って思いますね。確かにVCさんの指摘の中には、私が考えをすっ飛ばしてしまっていたことも結構あるので、事業プランだけでなく私自身もこの活動を通じて成長している感じです。」

それは良かったです。ケップルにもスタートアップの資金調達を支援するサービスがありますので、そういうのも利用していただいて、良い結果になればと思っています。
城「そうですね。ケップルさんからも2社ほどご紹介いただいている(注)ので、このご時世ですから、とてもありがたいです。」

(注)ケップルの資金調達支援についてはこちらをご確認ください。

やはり人材の問題は凹む

今でこそ順調ですけど、やはりスタートアップですから苦しい時期もおありだったのかなと思いますが。
城「もちろんそうですね。特に人材の問題は結構落ち込みました。問題というか、私のマインドと実は合っていなかったというのが後で分かったというお話しなんですが。」

興味深いのでもう少し教えていただけますか?
城「私自身がマミートラック(注)で前の会社を辞めていて、『女性ってなんでこんなに辛いんだろう』と思ってたんですね。だからこそ、もっと自分の力で社会に貢献したいという想いや、もっとバリバリ働きたいということで、今の会社を立ち上げて、同じコンサルティングファームにいた同じような境遇のフリーランスの人たちに企業の案件をお願いしていたんです。ですが、ある年の夏に、メンバーが誰も働かなくなったことがありまして。」

(注)出産子育てを機に女性が重要な職位や出世コースから降りることを強いられる事。稼働時間=成果という考えやリモートワークNGなどの旧来の評価制度が色濃く残る企業において、女性が出産によってオフィスで物理的に働ける時間が短くなることなどが原因。

えっ?何でですか?
城「聞いたら『夏なんで夏休みですけど何か?』くらいな感じだったんですね。要するに彼女たちにとっては仕事が第一ではないと。そこで初めて、出産子育てで会社を辞めているから自分と同じ気持ちだろうと、私が勝手に勘違いしていたことに気付いたんです。」

なるほど。一見、出産を機に退職をしたという事象は城さんと同じだけども、仕事に対するマインドの部分は全く一緒じゃなかったということですか。確かに仕事に対するスタンスは人それぞれですからね。
城「そうです。それが良いとか悪いとかではなくて、その差があるよということに気付けていなかったんです。仕事に対するスタンスが予め分かっていれば、それに対応して案件もコントロールできていたはずなので。」

その時はどうされたんですか?
城「当てにしていた稼働が急にゼロになりましたから、昼も夜も季節も分からないくらいがむしゃらに働いて何とかリカバリーした記憶があります。」

スタートアップの女性起業家を増やすには

今回のスタートアップ取材記事で14社目ですが、実は城さんが初の女性起業家なんです。
城「えっ、そうなんですか?」

意外かも知れませんが、それくらい世の中には少ないです。スモールビジネスの社長さんはまだいらっしゃるのですが、VCからリスクマネーを調達して急成長をしようとする所謂『スタートアップ』の起業家は断然少ない。なぜだと思いますか?
城「なんででしょうね。ん〜、そこまでの野心がないんじゃないですか。」

女性起業家はTAMが小さすぎてVC案件になりにくい、というのはよく言われます。またスタートアップにはインターネットやIT、AIなどのテクノロジー領域が多く、理系の男女比率なんかもよく原因として挙げられます。個人的にはいずれの仮説もそんなに外れてはいないと思いますが、本当かどうかはわかりません。ただ、城さんはいきなりライフサイエンス領域におけるプラットフォーム事業を志向されていますし、グローバルにフリーランスを束ねることで、24時間稼働できます!みたいなかなりパワフルな訴求をしていらっしゃいます。その差は何なんだろうって個人的にすごく興味があって。
城「考えてみると、私って一番が好きなんですよ(笑)。ただ勉強やスポーツで一番になれるかというと、そんなことは一度もなかったので、どこだったら一番になれるだろうか?と夢に出てくるくらい考え続ける中で、この領域にたどり着いているというか。ある日突然ここに来たわけではないというはありますね。私も初めは本当にいちフリーランスだった訳ですし。」

なるほど。徐々にそういうマインドになっていったということなんですね。例えば、スタートアップの女性起業家がもっと増えるためにいちばん必要なことって何だと感じていらっしゃいますか?
城「まずは家族の理解でしょうね。色んな方のお話しを私もうかがいますけど、やっぱり離婚の危機だったり、最終的に離婚したとか、そういうことをよく聞きます。男性が主に大企業からスタートアップに転職するときに嫁ブロックがあってできないって話しがありますが、女性のスタートアップ起業で言えば、旦那ブロックもあるのではと思っています。『俺のことはどうするんだよ?』みたいな。いや、俺のことは自分で何とかしてくださいよって話しなんですが、そうもいかないので、そこは理解が得られるかどうかで随分違うと思いますね。」

それは新たな視点でした。ありがとうございます。城さんは旦那さんや家族の理解が得られていると思いますが、その上で、こういうサポートがもっとあったら良いのに、というような部分はありますか?
城「自分より少しだけ先を歩いている女性起業家のお話をもっとお聞きしたいというのはありますね。自分の年齢で考えると、私より年上の女性でかなりの地位まで行かれている方々って、男社会の中で闘って勝ち上がってきた方々なので、素晴らしい方々なんですが、彼女たちがおっしゃってる事があまりスッと入ってこないことが多いんですよ。あと、VCも男性が多いですし、今回のパソナ女性起業家コンテストのメンター陣も藤原さん含めて男性が多かったですしね。確かに事業プランのブラッシュアップとか経営戦略とかファイナンスとか、そういう部分でアドバイスをいただけるのは非常にありがたいのですが、女性特有の悩みであったり、所謂『生き方』の部分で相談する、ということに対応できているアクセラレータープログラムって少ないと思っています。」

そう言われてみれば確かにそうですね。やっぱり悩みますもんね。
城「VCさんを回っていると、『城さん、5年後、10年後もこれを全力でやり続ける覚悟はある?』って聞かれたりするんですが、覚悟って言われたら、やっぱり普通の女性は悩んじゃうと思いますよ。子どもや家族のこともありますし、自身の健康のこともありますし、人生をかけてこれにフルコミットする訳ですからね。そんな悩みを相談したり共有できるような場があったら、絶対参加したいって思いますね。」

なるほど。アクセラレータープログラムを運営するCVCや大企業もまだまだやれることが多そうですね。今日はいろんなお話しをありがとうございました。今後の活動も頑張ってください!
城「こちらこそ、ありがとうございました。」

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株式会社グローバル・カルテットについて

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ライフサイエンス領域に特化した多くの専門人材を抱え、現在は主に大企業のリサーチ業務を中心に数々の案件をこなしています。コンサルティングファーム出身でもある代表の城みのりさんを筆頭に、今はリスクマネーを調達するスタートアップとしての第二創業に取り組んでいるところです。

特に現在構想中のプラットフォーム事業ならびに人材紹介事業については、僕個人としてもかなりの可能性を感じています。興味のあるVC/CVCの方はぜひ。


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