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バーチャル経理のメリービズが語るしくじり資金調達からの教訓とPMFの重要性

皆さんこんにちは。藤原です。今回のスタートアップ取材記事は経理業務全般をまるっと請け負うバーチャル経理アシスタント事業を展開するメリービズを取り上げます。

実はCEOの工藤さんと初めてお会いしたのは2013年の春頃でして、もう7年の付き合いになります。今でこそ業績は好調で、GW明けにはより広いオフィスへの移転も計画されるほどですが、過去にはPMFに苦労され、資金調達でもちょっとした『しくじり』も体験されたとか。その辺りのお話しも詳しくうかがうことができたので、ぜひご一読ください。メリービズは良いぞ。

この記事の登場人物

メリービズ代表取締役 工藤博樹氏(バナー写真)
藤原弘之(質問内容を太字で記載)

好調なバーチャル経理サービス

本日はよろしくお願いします。このオフィスも久しぶりです。
工藤「そうですね。藤原さんが2年半ほど前に来られたときは、まだ別の会社さんと半分ずつ間借りしていたんですが、今はこのフロアを全部使っています。

それでも近々移転するとか。
工藤「そうなんです。ここも少し手狭になってきまして。今は採用面接を結構やっていることもあって、ミーティングルームが取り合いになっているんです。Slackでは『すいません、ここちょっと譲ってもらえませんか?』なんてやりとりが頻発していて、そんなの絶対無駄じゃないですか。だからそろそろかなと思いまして。」

好調ですね。良かったです。次はどちらに?
工藤「兜町の方です。東証にまた1歩近付きました(笑)。今のこのオフィスは25名くらいまでが限度なんですが、次は38名までいけますし、営業部門をフリーアドレスにするなどの工夫をすれば40名以上でもいけるので、事業計画上は1年以上は大丈夫ですね。」

初めてお会いしたのは2013年頃だと思いますが、その頃からやっていることは変わらずですか?
工藤「いえ、変わっています。当時は経理部門の業務の一部、具体的には伝票入力だけにフォーカスしてアウトソースで請け負うようなビジネスをやっていました。今は経理業務全般ですね。在庫管理から会計ですし、請求書発行とか経費精算、場合によっては給与計算も請け負うことがあります。」

利用システムとかには制限はなく?
工藤「はい。例えば楽々精算で経費精算している場合でも『金額が大きいものは稟議が出ているはずで、その稟議はkintoneでやってます』みたいなシステムが統一されていないケースでも、そっちを見に行って承認していたり、freee、マネーフォワード クラウド会計、弥生会計、勘定奉行、等の市販の会計システムではなく自分たちで構築しているような会社さんであっても、その操作方法を教えてもらって運用しています。」

経理部門がやっている仕事を全部まるっと請け負ってるんですね。
工藤「リモート経理部みたいな感じですね。経理部員の方は1名は窓口としていて欲しいんですけど、その方のサポート要員がオンライン上にたくさんいます、というイメージですね。」

伝票入力から総合経理サービスへの脱皮

7年前に初めてお会いしたときからかなり領域が広がっていますね。
工藤「当時は伝票入力というのに特化していましたが、実はあまり売上として伸びていかなくて、どうしようか悩んでいたんですよ。お客様の属性としても今とは違ってもっと小さい、個人事業主+αくらいでした。たまにストレッチして大きい会社さんに使ってもらうこともあったんですが、解約されるんですよね。」

そうだったんですか。それは意外です。
工藤「当時は売り方が悪いのかとか、そっち方面で頑張っていたんですが、資金的にもどんどん苦しくなってきて、表参道にオフィスがあったのも撤退して、申し訳ないですが人員もかなり縮小した時代でした。」

厳しい意思決定でしたね。
工藤「オフィスも役員のアパートを会社として間借りするような形で引っ越しまして、会社としてもかなり死にかけたんですが、これまで断られたお客さんや解約されたお客さんにかなりヒアリングして、結果としては、その時やっていたサービスだけでは足りない、それは業務のほんの一部なのでもっとやって欲しい、そこだけを切り出しても助からない、という意見がほとんどでした。全体最適にはなっていないということですね。」

切り出してお願いする側も、そこだけ切り出す作業が面倒ですもんね。
工藤「そうです。最近よく例えで言っているのが、クルマが欲しい人に対して『こちら最高のエンジンです』といってエンジンだけ売ってるみたいな感じですね。いや、こっちはクルマが欲しいのにそれじゃ買えないよっていうのに気付けていなかった。個人事業主みたいな小さい組織だったら、売上と経費くらいしかないから伝票入力だけでも助かるのですが、現金主義ではなく発生主義にしてちゃんとやっていこうとすると、伝票の管理を含めてしっかりやりますので、当時のサービスだと全然足りなくなってくる。」

ニーズが分かっても、すぐに対応はできないですよね。
工藤「それがすぐ対応できたんですよ。ニーズが分かったときに、僕らのケイパビリティでそれができるのか確認したら、実はもうできるようになっていました。と言うのも、伝票入力をしてもらっている方々の経歴をよく見てみると、簿記2級とか1級とか、税理士試験科目合格者とかがいたりして、普通に決算とかお願いしてもできるやんって(笑)。そういう人たちを全体の100人くらいの中から探してきて、この10名くらいは色んな事が既にできると分かって。」

ただ単にお願いしていなかっただけですか。
工藤「まさに。伝票入力だけお願いするという、もったいないことをしていただけでした。それで総合的な経理サービスをやり始めたんです。」

その頃からのユーザーさんでもし言えるところがあったら教えていただけますか。
工藤「B-by-Cさんという化粧品の会社さんは初期の頃から継続していただいていますね。それこそ当初は先方のオフィスにウチの役員が毎日お邪魔して、どういうことをやっているのかめちゃくちゃ勉強しました。物販もあるけど、美容室のフランチャイズもあったり直販もあったり、在庫管理もありますから、幅広い対応が学習できました。」

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しくじり資金調達の教訓とPMF

今でこそ順調ですが、アパート間借り時代とか苦しかった時期を僕が存じ上げてなくて驚きました。その頃の資金調達ってどうだったんですか?
工藤「そうですね。当初シードで入ってくれたA社キャピタル(仮名)については、頑張って投資を通してくれたTさんという担当キャピタリストの方が、投資実行から1ヶ月後に退職されたのも運がなかったというか。」

あー、CVCあるある(笑)
工藤「そうなんですよね。仕方がないんですけど。僕も『なるほど、こういうことになるんだなぁ』というのが分かりました。そういうのは以前読んだ海外のVenture Deals(洋書)という書籍で知ってはいたんですけど、まんまやってしまって。(笑)」

それで資金調達を続けて?
工藤「はい。実は某大手広告代理店系の事業会社さんが検討してくれていたものの、リードインベスターが決まらなくて困ってたんです。そこでB銀行キャピタル(仮名)さんが『リードをやりたい』って言ってくださって。ただ、なかなか投資決定まで行かなくて、でも担当者の方は『大丈夫だから』って言ってくれていたので、僕もそのまま信用して資金調達活動をやめてしまっていたのが良くなかった。」

えっ、まさかのパターン。
工藤「そしたら、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月経って、最後にダメだって。それで慌てて大手広告代理店さんの方に『またリードを探し直しますからもうちょっと待ってください』って言っても、そんなに待てないってことでダメになっちゃって。もうキャッシュがないのにまた振り出しに戻りました。今思えば、担当者の『大丈夫だから』は100%信用せずに、僕もちょくちょく進捗を確認したり、場合によっては他のVCとも緩くコンタクトをとり続けるなどして、ある日突然いきなり残弾がゼロになったりしないように気をつけるべきだったなと思います。でも、『せっかく前向きに検討いただいているのに他のVCに声かけるのは悪いし』って思っちゃったんですよね。」

工藤さん優しすぎるんですよ。投資家側も覆す可能性が1%でもあるんだったら、スタートアップ側もリスクヘッジしないといけないですし。
工藤「理屈上は分かるんですけど、やっぱりまだ慣れないですね。」

そうすると、当時のキャッシュの状況はかなり大変でした?
工藤「その頃って、会社を清算するために必要なおカネがあるかないかくらいの状態になったんで、オフィスを畳んで、申し訳ないですけど色んな人にも辞めていただいて、最低限の3人くらいにして、先ほど言ったアパートに移って、というのをやりました。」

それがいつごろですか?
工藤「2016年末ですね。2017年1月からアパート暮らしが始まりました。」

それから経営方針も変えて?
工藤「Webマーケに頼るんじゃなくて、しっかり人が手売りしなければいけないし、僕らももっとお客さんのことを理解しないといけないと思って、そこからはヒアリングに行きまくりましたね。その結果、今のサービスの原型ができましたし、その前に、売れるものを売ろうということで、確定申告を売りまくったりして、とにかくキャッシュをためて何とか呼吸できるようにしていきました。そして今のサービス(バーチャル経理アシスタント)がローンチできてようやく浮上の兆しが見えたというか。」

今のサービスのローンチは?
工藤「2017年の9月です。」

アパート暮らしから9ヶ月で何とか立ち直ったんですね。
工藤「そうです。破産しかけたところから、確定申告でキャッシュを得て、それでもギリギリだったんで、実は、アクロホールディングスさんという会社の会長さんとお会いして、そんなに大変なんだったら、ということで融資をしていただいて、さらにご厚意でこのオフィスも当時半分だけですが無料で使って良いよと言ってくださったので、アパートを引き払ってこちらに移ってきてサービス開発をしていました。おかげさまで、今でこそ業績は好調ですが、当時はかなり大変でしたね。」

いやー、今日は貴重な失敗談ありがとうございました。ファイナンスの失敗談って世の中に出にくいんですよ。成功した話ばっかりで。でもしくじりケースももっと世に出てくるべきだと思っていて、そうすれば他のスタートアップ起業家の方の参考にもなりますしね。ケップルアカデミーでも資本政策勉強会とかやっているのも、まさにその意図があって、後戻りできないことで失敗してもらいたくない、というのがありますね。
工藤「例えばCVCだったら、サラリーマン担当者だから結構変わることもあるよとか、そういう教訓を伝えられたら良いなと思いますね。それがダメとかじゃなくて、CVCとして仕方ないことなので、スタートアップとしてはそれを知った上でちゃんと対策を立てられるように。VC/CVCそれぞれにプロコンありますけど、それでも究極は担当者次第というか(笑)。」

はい、僕もそう思います(笑)最後に、今ケップルアカデミーのクラススポンサーになっていただいているじゃないですか。決めていただいた理由ってどういう所っだったんですか?
工藤「スタートアップであったり、新規事業をやっている方であったり、何か新しいことに関心がある企業さんが多くご参加されていることと、講座の内容でもファイナンス系のものが多くあるので、経理や管理部門の責任者あるいは、そいういうことに興味関心がある方が集まってきているので、僕らのようなサービスとの親和性は高いのかなと思った次第です。」

完璧です(笑)今日はありがとうございました。
工藤「こちらこそ、ありがとうございました!」

メリービズ株式会社について

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メリービズ株式会社は企業のあらゆる経理業務をバーチャルで支援できる希有なスタートアップです。日本全国にいる選りすぐりの経理スタッフがオンライン上の特別専属チームとして担当。皆さんの会社がコア事業に専念できるお手伝いをしています。

経理人材の不足に悩まれている事業会社やスタートアップの皆さん、同社のサービスをぜひ検討してみてはいかがでしょうか?


さて、時間のキリがちょうど良いので今回はこれくらいにして、また次のnoteにつなげていきましょう。良かったらコメント・高評価・チャンネル登録・あとTwitterのフォローをしてくださると嬉しいです。

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では次回、スタートアップ取材記事でお会いいたしましょう。今回はこの辺で。

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