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5日目

不要不急の外出をやめてください。ステイホーム。

そう百合子さんが要請してもコンビニぐらいには足を伸ばすものですが、だいたいこのぐらいの時間、22時過ぎてそばのファミマに行くと同じ店員さんが働いてるわけですね。

つけてる名札から、くにおくんのドッジボールに同じ名前のキャラがいることがわかるんですが、まあ仮に「へいるまん」さんとしときましょう。

へいるまんさんは、無口で無表情、かなりクールではありますがAmazonの荷物受け取りや各種公共料金の支払いまで、俺がお願いする限りはそつなくこなしてらっしゃいますし、作業もとてもスムーズ。

しかし、一点、この入れるという行為に対して俺がひとつ言いたい事があってですね。

このへいるまんさん、「自分が取り出したレジ袋のサイズをミスったことを絶対に認めない」んですね。

どういうことかというと、毎度毎度取り出すレジ袋のサイズが商品の量に対して絶妙に小さいんですが、頑なにその袋に入れて商品を渡してくるんです。

おい、へいるまんさん、そいつぁちょっと袋が小さいんじゃあないのかい。そう言いそうになった事は両手では足りません。

でも彼はいつも「やってみなくちゃわかりませんぜ」と、まるでアクシズを止めるパイロットばりに意気込んで(個人の主観が入っています)袋詰めチャレンジして、パンッパンになった袋をドヤ顔で渡してくるんですね。

もう、そこまでドヤ顔で渡されたら、何も言えないじゃないですか。家も近いしまあいいか…といつも思いつついつもそれを持って帰ってました。

しかし、つい先日事件が起こりました。

その日の晩飯やお菓子、2リットルペットボトルなどその日は割と量を買ってまして、今回はどうなる事かと思いつつもへいるまんさんの袋詰めを見てて、まあ案の定パンッパンに、そりゃもうパンッパンになっていったわけです。

うおーまじか、これ指二本(パンパンになりすぎてるのでもう取手の上の方まで商品が押し寄せており手をそのまま突っ込めるスペースがない)で持って帰るのか…と思いながら会計を済ませたところで、俺が箸とスプーンが入ってないことに気づきました。

へいるまんさんにしては珍しいな(同じ時間帯で働いてらっしゃるアジア系の方は基本忘れるのがデフォなのでいつも声かけてお願いしている)と思いながら、「箸とスプーンもらっていいですか?」と声をかけると、へいるまんさんはそのツッコミにも無感情、かつ無造作に箸とスプーンを取って袋に縦に突っ込みました。

すると、パンッパンになった袋が破れてしまったんです。

ズバッと。縦に。そりゃもうぱっくりと裂けまして。

いやほら!!パンパンに入れすぎてるから!!と思って、俺はそれがジワジワきて、まあまあな勢いで吹き出し、笑ってしまいました。

そしてへいるまんさんも、軽く笑ったんです。あのクールなへいるまんさんが。

彼は、フフンと笑った後黙って袋から商品を取り出し、つめ直しの作業を行うべくレジ袋を取り出したんですが


その袋のサイズは、さっき使ったものと同じものでした。

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