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【ネタバレあり】膀胱と肛門が心配なおじさんがシン・エヴァを観に行った話

 僕がちょうど14歳のころ、テレビで毎週エヴァを見ていました。14歳にして既に生きづらさを感じていた僕は、エヴァに超はまりました。アニメイトに行ってミサトさんとシンジ君の下敷きを買いました。シンジ君の下敷きを目にした兄に、「何でそんな下敷き持ってんだよ。お前ホモなのかよ?」と言われたことをよく覚えています。僕はシンジ君のことが自分の分身のように思えて、けっこう好きだったけれど、ゲイではありません。ミサトさんと大人のキスがしたいです。

 エヴァの旧劇場版のラストシーンで、シンジ君はアスカの首をしめ、アスカに冷たい目で「気持ち悪い」と言われました。その場面を見たとき、僕のなかでエヴァは完結しました。他人に「気持ち悪い」と言われつつも、共に生きていこうと決意しました。だからシンエヴァを観たい気持ちはそんなになかったんですけど、ツイッターではシンエヴァの話題でもちきりだったし、NHKの『プロフェッショナル 仕事の流儀』の庵野監督回がちょう面白かったので、シンエヴァを観たい気持ちがむくむくと膨らんできました。

 でも映画本編の上映時間が2時間34分もあると知って、震え上がりました。僕は40歳の頻尿おじさんだからです。映画本編の約半分の時間の『プロフェッショナル』を見ているときにすら、途中でおしっこがしたくて堪らなくなりました。僕は3月30日の火曜日にシンエヴァを観に行くことに決めて、3日前くらいから膀胱のコンディションを整え始めました。酒を飲まず、水道水を適量だけ飲みました。映画館に行く前日にアイスクリームを2本食べたところ、思い切りお腹を下したので、「これは膀胱だけでなく腸もまたコンディションを整えなければならないようだぞ」と思い、それ以降アイスクリームは一切口にしませんでした。

 そして当日、朝ご飯を食べたあとに綺麗なウンコが出たのでとても安心しました。喉が渇き過ぎてもつらいだろうから、水道水は少しだけ飲みました。家を出る前におしっこをして、映画館についたあと、開始時間の直前にもおしっこをしました。個室に入って絞り出すかのように。

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 僕は念のため、通路沿いの席を予約してありました。「万が一途中でおしっこやウンコがしたくなっても大丈夫だ」という安心感を持ちながら、映画本編が始まるのを待ちました。すると始まる前に広告などが20分くらい流れ、微小な尿意を覚えたので不安な気持ちになりました。そしてやっと映画本編が始まり、「ここからが本当の闘いだ、俺よ、気合いを入れていけ!」と自分を鼓舞しました。

 それから特に何事もなく2時間くらい経過し、「あ、これはもう大丈夫だな」と確信した僕は、ペットボトルの水を飲む余裕すら見せました。映画のラストシーンでは、シンジ君がめっちゃイケてるお兄さんへと成長していたため、「シンジ君よかったね」と思いました。しかし同時に、「僕はシンジ君に置いて行かれちゃったな…」という寂しさも感じました。映画のエンドロールが終わって「終劇」の2文字を画面の右下に見たとき、僕は「尿意と便意との闘いに勝利したのだ!」という喜びを覚えました。

 そしてゆっくり帰り支度をしていると、「2回観たら、余計に訳が分からなくなったよ…」と言っている人が僕の左脇を通りました。今作は、頭で考えるのではなくて心で感じるものだと『プロフェッショナル 仕事の流儀』を見て思っていたので、僕は大丈夫でした。とても良いものを感じることができました。忘れ物がないことをしっかり確認した僕は、席を立って劇場を出てトイレに向かいました。勝利したとは言え、けっこう尿意はあったからです。すると、僕と同じくらいの年齢とおぼしきおじさん達が、続々とトイレに入っていったので、笑いそうになりました。ちなみに、上映中にトイレに行ったっぽいお客さんは5人くらいいましたが、僕はあまり気になりませんでした。みなさん、尿意をあまり我慢しすぎると身体によくないので、上映中でも気にせずトイレに行ってくださいね。

 ところで、『プロフェッショナル 仕事の流儀』に出てきた庵野監督の奥さんは、いわゆる「理解のある彼女さん」の典型だなと個人的には感じました。だからこそ、あんなに前向きな映画を庵野監督は作れたんだろうなと思います。普通のヲタクの人生には通常、あのような「理解のある彼女さん」は登場しません。だから、普通のヲタクは庵野監督のように前向きに人生と向き合うことは難しいんじゃないかな、と思います。成長したイケてるシンジ君のようになんてなれないまま、僕たちは生きるしかなさそうです。つらいですが、共に生きましょう。

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