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8月 (現時点で)自分にとって最高の一冊/日記

フリーペーパー8月号はみなさんから寄せていただいた“(現時点で)自分にとって最高の一冊”と”本屋スタッフざきの大切な日の日記”の二本立てです。今月号もゆるりと楽しんでもらえたら嬉しいです⊂( ᴖ ̫ᴖ)⊃⊂(ᴖ ̫ᴖ )⊃


“(現時点で)自分にとって最高の一冊”


Y(30)
会社員 劉慈欣『三体』

僕はほとんど本を読まずに生きて来ました。『三体』が書店に並び始めた頃に当時お付き合いしていた人に付き添って本屋に行き、彼女がいつもと違うテイストの本を購入していると感じてなんとなく覚えていました。本屋に行ってから数ヶ月後に破局し、僕の家には何冊かの本が残されていました。彼女と別れてセンチメンタルになっていた僕は、これからも特に本を読むことなく生涯を終えると思うと悲しい気がして印象に残っていた『三体』を読み始めました。本を読むことに慣れていない自分自身にとって簡単なことではありませんでしたが、時間だけはあったのでとにかく読み続けました。三体は難しくもありましたが面白い本でした。夢中になることもできました。かといってその後僕が本にのめり込むことはなく、これが最後の読書になるかもしれません。だからこそ僕にとっては現時点で最高の一冊だと思いますし、今後もそうあり続けるのだと思います。本は思い出も込みで自分にとって特別になるのかもしれませんね。


ゆきえ(35) 保育士
なかがわりえこ(作)、 おおむらゆりこ(絵)『ぐりとぐら』

自身の思い出の一冊であり、保育士として働いて子どもたちと読んだ一冊であり、今は3才の娘がお気に入りで毎日読んでいる絵本です。『ぐりとぐら』に何個も思い出が詰まっているので最高の一冊に選ばせていただきました。


とくちゃん(24) 記録係
アストリッド・リンドグレーン『長くつ下のピッピ』(岩波少年文庫の大塚勇三さん訳のやつです)

児童文学というジャンルではあるけれど、大人向けとか、子供向けとか、そんな退屈な垣根を壊して進むピッピは全ての人に開かれた文学だと感じます。 彼女は「はみ出し者」かもしれない。だけど、そのはみ出しちゃいけない道を引いたのは誰だろう。自分はピッピのように、自分自身で道を引くことができているだろうか。 リンドグレーンは、自身の著作の中で人間が生来持っているはずの生きる力を説いているといいます。 大人になると、生きる力がなくても社会によって生かされることができると知ってしまう。 ピッピをみていると、自分にも本来その力は備わっていて、自由に飛び回っていいんだということを思い出させてくれます。 みなさんもピッピと一緒に、自由を生きてみませんか。


藤井雄悟(45) 無職
チャールズ・ブコウスキー『ポスト・オフィス』(幻冬舎アウトロー文庫,1999)※絶版

人生を”変えられた”一冊なら他に多くあるし、何かを”学んだ”一冊ならもっとある。しかし、この作品のラスト3行。それは僕の人生を1ミリも変えなかった。むしろ”決定づけた”。僕は大学生の頃、これを読んで以降、それをそのままのものとして生きている。


おじいさん(82) ざきさんの近所のおじいさん
新聞

私は古い人間ですから、私の好きな本なんて若いみなさんは興味がないでしょうから。昔は沢山本を読みましたけどね、もうさっぱりです。それでも新聞を読むのはいいのではないでしょうか。複数ね、読み比べるだけで、それだけでも続けてみたらいいんでないでしょうか。
※お話しを同意を得て書き起こしています。


Sumire(27) アパレル関係
矢沢あい『ご近所物語』『Paradise Kiss』

矢沢あいさんの漫画が私とファッションを出会わせてくれました。可愛い洋服を身に纏った主人公たちをみているだけで幸せな気持ちになったし、服飾の専門学校に行くことを決めました。漫画で進路を決めるなんてバカみたいに感じるかもしれないけど、胸を張ってあの時突き進んで良かったと思っています。

よっさん(45) 会社員
手塚治虫『ブラック・ジャック』

医師免許を持たない天才的外科医が主人公の漫画です。ブラック・ジャックの中で描かれる正義感や道徳は一般的に正しいとは言えないことも多いかもしれませんが、本当の優しさとは何か、生きるとは何かを深く考えさせてくれます。

北(39) 会社員
オラシオ・カステジャーノス・モヤ(著)、細野 豊(訳)『無分別』

“内戦での先住民大虐殺の「報告書」を編集中、心を病み、忍び寄る恐怖の影に怯える男。エル・サルバドルの鬼才の衝撃作!“文章能力が低いため、ネット上の内容紹介を引用しました。とにかく面白いので読んで確かめていただきたいとしか言えません。

なお(19) 学生
カフカ『変身』

主人公が何故か虫になってしまい、家族に疎まれて可哀想。意味が分からないけどでもなんか好きです。


キュアスカイ(5) こども
わかやまけん『しろくまちゃんのほっとけーき』

まちゃんがかわいい。みんなほっとけーきたべたくなる。



A(25) 秘密
写真集『アイム Snapshots taken by homeless people.』

ホームレス状態の人たちにカメラを渡し、日常を撮影してもらった写真による写真集。巻末にはインタビューが載っていて撮影者の背景や思考が浮かび上がる。このプロジェクトの核になっているという「まず、知ってもらいたい」という通り、この写真集を通して知るということが出来た。知った次は何が出来るか、考えているところ。


りんご(?) ヨガ講師
さくらももこ『さくらえび』

エッセイ集です。日常をこんなに面白くできる人は居ないと思っています。『さくらえび』に限らずさくらももこ先生のエッセイは必ず持ち歩いていて、気持ちが下向きになったら読んでいます。


佐藤正(24) 映像関係
貴志祐介『新世界より』

SF小説です。まだ読んでいない人が心底羨ましい。僕が初めて読んだ時は一睡もせず読み耽りました。物語への没入、思考、驚き全てが気持ちよく、面白い。とにかく少なくとも一人の人生に深く残っている本ということで読んでみて欲しいです。


- まとめ –

今回は敢えて年齢や肩書を入れてみました。自分に近しい人から普段関わらない人までいると思うので、いつもと違うジャンルの読書などに繋がると嬉しいです!おすすめを寄せてくださったみなさまありがとうございました。日記に続く・・・!


“大切な日々について”

洋子という高校からの友だちがいます。便利なのでいつも親友という言葉で説明しているけど、いつも彼女を思い出すとき家族という言葉が思い浮かびます。そんな大切な存在の洋子の披露宴と結婚式があったので、式近くの日記を残してみます。


- 日記 -

8/7(火)

7時。起きた瞬間から体調が悪い。倦怠感が強くて起き上がることが難しい。パジャマが汗でしっとり濡れていて、身体は熱いのに肌に触れる布がつめたくて寒い。這いつくばるようにベッドから出て着替え、熱を測る。38.3と数字が出て余計に具合が悪くなる。明日、結婚式前最後に洋子と会う予定だったけどこの調子じゃ難しそうなので体調不良の旨をラインで伝える。優しい言葉をかけてもらい、ごめんよ…と思いながら眠る。

8/24(木)

なんとなくだけど式前に一回会いたいよね、と意見が一致して、式直前の時間を分けてもらう。17時すぎに新宿で合流してご飯を食べて、珈琲西武に行く。フルーツパフェを食べて、ずっと丸見えだった花と上手く隠せていたzineを渡す。顔スッキリしたね〜とかいよいよだね〜とか話していたら、最後の最後に洋子が怖い話をし始めて、なぜ今日に限って怖い話し?!と面白くなる。どちらかと言うと私の方がソワソワ緊張していて、いつも通りにこにこ笑っている洋子は肝が据わっているなあ、凄いなあと感心する。この前はドタキャンで申し訳なかったけど、式の直前に会えて逆に良かったなあと思う。洋子も洋子のパートナーもありがとう。

8/26(土)

6時に目が覚める。早起き!洋子に何か連絡を入れようと思ったけど、今日は忙しいだろうし一昨日会えたから敢えてしないことにする。とにかくソワソワ落ち着かないので散歩に出かける。今日は絶対これだ!と思ってYUKIの『大人になって』を聴いたら涙がぽろぽろと溢れてくる。このアルバムのツアーに一緒に行った気がするけど、何回も一緒にライブに行っているので本当に行ったのか正直よく分からない。長く一緒に居る人と思い出がごちゃごちゃになって、あれ?あれ?となる感じがとても好き。どんどん分からなくなって、おばあちゃんになって全部忘れちゃったけどなんかずっと楽しかったね、と笑い合いたい。

2時間近くに及ぶ散歩後も落ち着かず、意味もなくコンビニに行ってみたりマニキュアを塗り直したりして時間を過ごす。本を読んでみてもスルスルと言葉が通りすぎ、音楽をきくと涙が出て、どうしようもないので無心で部屋を磨き上げる。そんなこんなで時間は過ぎ、予定通りの電車に乗る。式場に着くとすでに同じ高校の友人が到着していて、顔を見てホッとする。洋子の友人から親族までいつも写真付きで話を聞いているので、どこをみても(一方的に)知っている顔ばかりで安心した空間。

披露宴では綺麗なドレス姿に涙すると同時に入場から笑いに溢れていて和やかな雰囲気。無事に結婚証明書のサインもさせてもらって(手が震えて私だけ物凄い字だった・・・!)、安心したからか涙腺が本格的に緩み始める。何度も送り迎えなどお世話になった洋子のお父さんの挨拶で「震災による停電で街灯が消えた暗い駅前からバスに乗って上京していく姿を見守りました。」と言うような言葉を聞き、お父さんが普段見せない詩的な言葉と洋子を大切に見守り続けてきたことを感じて涙。さらに結婚式に移ってからはパートーナー側の視点も知ることが出来て、彼にとっても洋子の存在がかけがえのないものだと知り、ふたりが出会えて本当に良かったなあと思ったらもう涙が止まらなくなって、お茶を飲んでも一緒にお茶したなあと涙が出てくるのでした。彼女は普段から本当に明るくて楽しい性格で、笑いの数も多く、常に大爆笑か泣いているというあまりにも幸せな空間で、ふたりが築き上げた空気感が心地よく、参列出来て本当に嬉しかったよ。ありがとう。何より本当におめでとう。

。⋆。

洋子が結婚して、私はいまのところ結婚する気はなく独身で、私たちはお互いの望む通りの生き方を応援し、寄り添い、これからも共に生きていくだろうし、社会もそんな感じだといいな。幸せな空間を感じ、改めて強く結婚を望むすべての人が出来るようになって欲しいと思う。

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