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元気になる食養生-夏編-

 東洋医学研究所のホームページでは、東洋医学研究所グループの先生方が順番にコラムを担当して頂いています。
 今回は2015年10月の「元気になる食養生」と題して岡田鍼灸院の岡田静治郎先生のお話から一部抜粋し、特にこれから夏にかけての食養生について紹介させて頂きます。 

「元気になる食養生」
東洋医学研究所®グループ 
岡田鍼灸院 院長 岡田 静治郎

はじめに
 東洋医学には、病気にかかるずっと手前、健康な状態のときから実践していくことで、病気にかかりにくく、かかっても軽く済ますことができる生活方法が存在します。それが「養生」です。
 患者さんの話を聞いていると、「え、そんなふうに過ごしているの。それじゃあ、こんなひどい体調不良になるよねえ・・・」と思うことがしばしばあります。その体調不良は、この生活習慣が原因で引き起こされています。
東洋医学の「養生」は難しいことではありません。「養生」には特別な機械やサプリメント、手順を覚えなければならない複雑なマッサージや、体操なども必要ありません。
 季節や体質に合った適切な保護を生活習慣に加えることで体のパワーを増してあげる方法、それが健康なときに行う「養生」なのです。
 毎日をリズミカルに過ごし、体内時計を一定に保つことによって、さまざまな体内の環境を一定に保つことができるのです。この積み重ねによって体力がだんだん増していって、余力が増えます。
 養生によってわかるようになってくる「ほんのちょっとの不調」を、東洋医学では「未病」といいます。「未だ病ならず」という状態。これがわかることが何より大切なことです。
 「未病」の対義語が「已病」です。これは、「已に病となる」という意味。
 今は多くの人が長生きするようになりました。「未病」に鈍感な状態で年を重ねてしまうと、大きい病気をしてしまって、老後の生活で不自由をするかもしれません。楽しいことを目いっぱい楽しむためには、養生を知って実践することです。お金もかからなくて、効果が高いです。

食事の基本
 養生の考え方では「季節に合わせて食べる」「体質に合わせて食べる」「食べ過ぎない」、この三つが大切です。
 季節外れのものを食べないことって、体にとって大切なことなんです。
食べ物の性質を知るのと同じくらい大切なのが調理法の影響です。「生→湯がく→茹でる→蒸す→煮る(煮込む)→炒める→揚げる」の順に、温め効果が高くなります。
 体質を判断して、それに合わせた生活(食生活)を送ることが大切だと考えています。おおまかにいえば、体が「冷」か「熱」、「乾」か「湿」のどちらに傾きやすいかの組み合わせで考えます。体質の分類は、冷乾・冷湿・熱乾・熱湿の四分類に、特殊な状態として、血液がうまくめぐっていないことを示す「瘀血」の状態を加えて五分類としています。

食べ過ぎ
 東洋医学では、何ごとも中庸を最上とします。過剰なものはマイナスと同じだと考えるのです。ちょうどいい量を越えたらまったく意味のないことになってしまいます。それと、隠れた食べ過ぎというのもダメです。おやつも食べたいから三度の食事を減らしてカロリーの帳尻を合わせたり、アルコールが飲みたいけれど太りたくないからと食事自体を完全に抜いたりする。水分の取り過ぎもありますね。水分を取り過ぎると体内で滞って「痰飲」という状態になります。体が重だるくなったり、気分が憂うつになったり、消化がおかしくなったりするのです。

元気になる旬ごはん
 どんなに体によい食事でも、おいしくなければ長続きしません。季節に沿った食べ方の知恵を知って、健やかな体と心を手に入れてください。

夏の暦
5月 立夏:5月6日ごろ 春分と夏至の中間。過ごしやすい気候ですが、日ざしはすっかり夏らしく強くなります。
   小満:5月21日ごろ 気温が上がり、あらゆる生命が地上に満ちる時期。草花も動物たちもいきいきと輝きます。
5月の食養生
急激に気温が高くなり、空気も乾いてきます。野菜や果物から水分を補給し、強い紫外線に負けないよう、ビタミンCが多い食材をたっぷりと。
6月 芒種:6月6日ごろ 本来は穀物の種まきのころ。日本では稲の植え付けや麦の刈り入れ期にあたります。
   夏至:6月22日ごろ 一年中で最も昼が長いのがこのころ。ジメジメした梅雨の時期でもあります。
6月の食養生
湿気の多い梅雨は汗をかきにくく、気圧の変化で体がむくみやすくなります。胃腸を壊しやすい時期なので、枝豆やそら豆のように、胃腸を冷やしすぎずに水分代謝をよくする食材がおすすめです。
7月 小暑:7月7日ごろ 雨の日も続きますが、晴れ間の暑さはいよいよ本格的になります。梅雨の晩期には集中豪雨もあります。
   大暑:7月23日ごろ 文字どおり、一年で最も暑さが厳しい時期。「夏の土用」にもあたります。
7月の食養生
色の濃い夏野菜とともに、豚肉や麺類、豆類など疲労回復効果のあるビタミンB1の豊富な食材をとり、暑さに負けないパワーを蓄えましょう。土用には黄色い食材を使ったおかずも大切です。

夏にはこんな食べ方を!
 中国では、汗は血からつくられると考えられ、汗をよくかく夏には、心臓や血液循環器系に負担がかかるといわれています。五臓の「心(しん)」に対応する色は「赤」。目に鮮やかな赤い食材、色の濃い野菜から、夏バテを防ぐパワーをもらいましょう。冷房による「夏の冷え」を感じたら、熱を冷ます食材を控え、しょうがやねぎで温めましょう。
 赤い食材 トマト、にんじん、赤ピーマン、クコの実、まぐろ、かつお、牛肉、豚肉(赤身)など
 血流をよくする、血液に栄養を与えるなど、血液の状態をよくして心臓の機能を高めます。
 熱を冷ます食材 きゅうり、とうがん、ゴーヤー、トマト、なす、緑豆など
 水分を補給し、体の内側から熱を冷まします。・利尿作用を高め、老廃物を排出します。
 むくみを解消する食材 たけのこ、枝豆、そら豆、とうもろこし、茶葉など
体を冷やさずに利尿作用を高め、むくみを解消するのに役立ちます。

引用文献
・若林理砂:「養生こよみ」.飛鳥新社.2014
・NHKきょうの料理シリーズ:「薬膳の知恵をいかすパン・ウェイさんの元気になる旬ごはん」.NHK出版.2014

おわりに
 昨今、これまでの季節の概念が大きく覆されるような自然災害や気象パターンが多く、体も次々来る気候の変化に対応しなければなりません。先人の方々の知恵をお借りして、毎日の食事から生活を整えてこれからの時期を乗り越えていきましょう。

二葉鍼灸療院

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