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梅は近くから、桜は遠くから

集めている梅と桜の写真がたまってきた。まとめながら春仕舞いする。
梅は近くからつぶさに見て、桜は遠くから眺めるのが好きだけど、
いろいろな写真を見ていていると、また違う楽しみ方をしたいと思った。

梅と桜の出会い方

ふだん街中で見かける時、梅は距離が近い。
一軒家の多い住宅街を歩いていて、角を曲がると塀の向こうに梅の白や赤が目に入る。または角を曲がった時に、甘い香りがして梅の方向に振り向かされる。梅は個人宅の庭木として咲いている、プライベートな花という印象。

一方、桜が咲いているのは街路樹や公園、学校等のパブリックな空間で、みんなの花という印象。見通しのいい場所を歩いている時に、遠くに立っている桜を見つけるという形だ。

間近で出会う機会が多い梅は、自然と至近距離で楽しむように。梅は幹が岩みたいにごつごつしていて、枝が上を向いている。全体的に鋭いというか、直線的な樹だ。

こちら空を鋭く突く梅。下から見上げるアングルで、枝ぶりの力強さがさらに際立つ。

そんな枝に、花が一輪ずつ付いている。まだ寒い中で咲く姿は、きりっとしていて、かっこいい。香りを放っていることもあり、目が覚める気分になる。

気高さを感じる紅梅。焦点を合わせたひと枝の、孤高な雰囲気が素敵だ。

一枚一枚が大きくふっくらとした桜の花びらと比べると、梅の花びらは花に対して小さく丸い。
梅の控えめな花びらと、長いおしべ。この形のバランスが好みで、一輪一輪じっくり見たくなる。

ぽわっぽわっと朗らかに咲く白梅がかわいい。完全に開いても丸っこい花と、鋭い枝の組合せが好きだ。

桜の場合、いくつもの花が房になって、枝の一点からたわわに咲いている。だから遠くから見てもボリューム感があって華やかだ。
木肌が梅より滑らかで、枝もどちらかというと曲線的な桜の樹は、たおやかに感じる。
背が高く花が多い桜は、遠くからでも目を引くから、その佇まいや、周囲の物や人の関係性を含め、大きな風景として楽しみやすい。

地域の人々と桜への眼差しが優しい。団地とか軽トラとか、人が映っていなくても営みを感じる写真が多く、暮らしの中の桜という印象で安らぐ。

端正な一方で、のびやかさも感じる。画面のフラットさが気持ちいい。整然とした路面が全体を引き締めて、桜の繊細さが際立つ。

街が動きだす前のひそやかな雰囲気を体験できる。日が昇るにつれて、凛とした空気がゆるんでいく時の臨場感が強い。

知らない梅と桜

集めていると、梅や桜にこんな側面があったのか、こういう見方があるのかと、驚きや発見が強かったものもある。

梅は近くで見たい派だったが、ここまで近づいたことはなかった。だいぶ世界が変わる。言われないと梅だと分からない。ゲシュタルト崩壊という状態だろうか。生物としての花が迫ってくる。

おそらく桜。何となく生々しく、妖艶。周りの光を吸って、花そのものが発光してるように見える。なかなか肉眼では覚えない感覚。梶井基次郎の「桜の樹の下には」を読みたくなった。

光が浸透した花びらや影が好きだ。淡い金色に染まった、甘みを抑えた色合い。至近距離で見る桜の房や花があまり得意じゃなかったけど、他の方の目と技術により純粋に綺麗と感じる。今度近くで桜を見ようと思えた。

花の色ではなく、桜のシルエットと暮れ残る空を愛でるという楽しみ方が新鮮。空の方が桜に近い色をしているのも素敵だ。縦に長い写真は、掛け軸のようにみやび。

終わりに

自分で花見をするのとは、また違った充実感を味わえる写真の花見。梅や桜の季節は終わったけど、来年は自分の目でもいろんな楽しみ方ができる気がした。

梅と桜の風景を採集したマガジンを公開しました。もしよければご覧ください。

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