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「食」を楽しむ家であれ

私は、住宅設計をする上で「食」のシーンを最も大切にしている。
今回はそんな「食にまつわる家の話」。

家族が揃う貴重なシーン
何気なく家で過ごしていると気付かないが、家族が揃って同じ行為を行うのって、食事以外にほとんどない。
そこで生まれる些細な会話や気持ちの探り合い(子の思春期・仕事のストレス・手料理の味付などなど)が、家族にとってとても大切な時間ではないか。そんな何気ない食事の背景となる家や庭はどうあるべきか、そこが私にとってとても大切なのだ。

料理から生きる術を学ぶ
私の家は男3人兄弟だが、母親から料理の手伝いをよく頼まれた。なので3人とも料理が人並みに出来るという自負がある。
「料理と洗い物は同時進行」
「玉子焼きは等分していくと均等に切れる」
「片付けの最後に必ずシンクを拭き切る」
料理自体はモノづくりの延長で楽しむことができたが、それにまつわる片付けやチョッとしたコツなども楽しく覚えられたのは、母親の教育あってこそだと感じている。そんな家族間のコミュニケーションや教育を楽しく得ることができるのは、料理ならではだと思う。
美味しい食事を家で作ることが出来れば、健康的で経済的だし、外食に行く時間も減らせる。何より、美味しいご飯を皆で家で食べられるって幸せだ。
料理するという事は、生きる術を学ぶという事でもあるのだ。

「食」にまつわる時間ほど、暮らしを凝縮したシーンは無い
住宅には、オープンとクローズが共存している。例えばLDKや玄関など人の出入りが多いところは一般的にオープンで、庭や駐車場など外にもつながっていく賑わいのある部屋である。対してクローズは、お風呂やトイレ、家事室など、家族だけで利用したい閉じられた部屋であるべきだ。
そんな中で、キッチンだけはオープン(会話・集まる・楽しむ・味わう)とクローズ(片付け・臭い・汚れ)が共存している。
しかしキッチンのヒアリングをすると、どちらかにウェイトを置いて要望されるケースが多い。もちろん要望をしっかりと伺った上でだが、本来は「オープンでもありクローズでもあるキッチン」が家族にとって一番望ましい姿だと思っている。

自邸のキッチンについて
自邸のキッチンにはテーマがある。「おおらかなキッチン」だ。
「自邸について」で記載したが、私たち夫婦の性格に合わせて可変できるキッチンを目指した。雑誌に載っているようなカッコいいキッチンにしてしまうと、汚れやモノが少しでも溢れた時にどうしても気になってしまう。先述したように「食」は家族にとってとても大事な時間。食の時間が負担にならず楽しめるように、「生活感が溢れていても美しいと思えるキッチンを目指そう」という思いで設計した。
また、わが家のキッチンは常に更新されている。2018年に完成してから現在に至るまで、実に5回以上キッチンの姿が変わっている。以下の写真は2022年10月現在のわが家のキッチンである。

キッチン全景:複数人で利用できるように、コの字型にして作業台を広くした。
シンク上のラック:全て収納するとスッキリするが作業効率が下がるので、見せる収納に。
※見せる収納のコツ→木・ステンレス・ガラスといった自然素材で統一すること。
電子レンジはあまり使わない(見た目もダサい)のでコンロ下に。
不便だがそれ故にあまり使わないようになった。
畑で採れたトウガラシを小窓で乾燥。
こういう些細な幸せが暮らしを彩る。

家族の幸せや豊かな暮らしを楽しむために、食を楽しむ家であってほしいと心から願う。

自邸の、youtube動画を下記URLからご視聴いただけます。
暮らしについて、家づくりについて、案内しています。
https://www.youtube.com/watch?v=a1Wgnl_w7Jw

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