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『10年間飲みかけの午後の紅茶に別れを告げたい』を全人類に推す

友人であり、ライターの岡田悠さんから『10年間飲みかけの午後の紅茶に別れを告げたい』を献本頂きました。ありがとうございます。

読後感は、岡田さんの"ものの見方"と"狂気"に終始嫉妬でした。超絶面白いです。

以下、詳細です。

岡田さんは、会社員の傍らライター活動をされ2019年より執筆活動を開始。気になった事を記録し続ける癖があり、2020年12月には『0メートルの旅』(ダイヤモンド社)を出版しています。

処女作の『0メートルの旅』はお世辞抜きで素晴らしい本で、物理的な世界の最果てである南極にいても、家の中(0メートル)にいても、旅で味わうような新しい出会いやものの見方ができるのだという事を、岡田さんのたいそうマニアックな記録癖と、緻密に計算され、かつ全然読めない方向に収まる結論で非常に面白く書かれております。

『0メートルの旅』を書かれた際にも献本を頂き、初めての献本という喜びはさておき、その内容に僕は感銘を受けて読書感想文を書きました。

そんな岡田さんの2冊目はさらに”進化”し、ただただ皆に買って&読んでほしいので読書感想文を今回も勝手に書きました。

以下、あらすじと魅力です。

『10年間飲みかけの午後の紅茶に別れを告げたい』では、ペットボトル、取扱説明書、入浴剤、などなど、我々が日常で触れたことのある、部屋にあるものが、彼の卓越した”ものの見方”により、主人公になってしまいます。

いやいや。普段生きてて、ペットボトルや取扱説明書を主人公に仕立て上げようと考えたことすらなかったっす。少なくとも僕にはできません。70を超える国を旅して、最終的に『0メートルの旅』に落ち着いた岡田さんだからこそたどり着いた所業なのでしょうか。と思いつつ、午後の紅茶は10年間一緒にいるので、岡田さんには元から物を主体化する才能が具わっていたと考えるにほかないです。

また、この本では彼の家にある6つの各部屋+部屋全体の計7つの物語が描かれています。それぞれの主人公が彼の類まれな”狂気”により驚くほど面白い物語に仕立てられてしまいます。

いやいやいや。普段生きてて、飲み物を細菌検査の研究所に郵送しないし、544冊の取扱説明書を読破しないし、ましてや機関車トーマス490話を見ても定量的な分析を絶対しないです。しかし彼は当然のように興味を持ったらやってのけてしまいます。これは狂気以外の言葉では表せないです。

"ものの見方""狂気"の両方が具わった著者だからこそ、部屋をめぐって僕らの常識にあるような「俗世」から離れた世界にたどり着き、そこで普通の人と全然異なる視点で異なる物語を体験されているわけです。この本では著者にしか見えない世界を僕たちが追体験させてもらって、かつ、すべてまさかの結末となっています。

7つの独立したように見える物語も、要所要所で散りばめられた「旅行」、[案内]、「私を信じて、何でも話してください」などのキーワードを通じて有機的に接合する形で昇華される感覚が構成として大変素晴らしく、唸りました。

内容についてはこれ以上語りませんが、岡田さんの記録癖は前作以上に進化しており(ちょっと異常)、かつ、2冊目になり著者としても比喩、文体、伏線、文献の参照のレベルも格段に上がっています。凄いです。

『0メートルの旅』の流れを脈々と受け継いでいるので、前作を読まれ世界観に引き込まれた方は間違いなく面白いです。友人の本である事を抜きにして最高です。

Amazonでも買えますが、毎度のことながら紙にこだわっておりますので、是非とも実物の本をお手に取ってご覧ください。

前作を読まれていない方はこちらもあわせてどうぞ。


現場からは以上となります。

願わくば全人類、せめて「渇いた日常を送ってませんか?」と言われてグッとくる方には、ぜひ読んでもらえますように。

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